人への投資に対する国の検討事項

記事

政府が、第7回「新しい資本主義実現会議」を開催しました。論点案を基に、人への投資に対し、国が検討していることを見ていきたいと思います。

効果の高い投資

産業内で教育訓練を受けた従業員の割合が増えると、労働者一人当たりの労働生産性や一人当たり平均賃金が上昇する効果がある。人への投資の強化は、新しい資本主義及び成長戦略の鍵ではないか。

教育訓練を受けたメンバーがいるチームでは、他のメンバーの生産性も上げるということです。高スキル労働者が付加価値を創造することによって、低スキル労働者へのプラスの効果があることが分かっています。

人への投資により、全員でなくとも一部の方のスキルや能力が向上することで、全体へのプラス効果があります。人への投資強化は、高い効果が期待できます。

変わる職種への対応

時代や社会環境の変化に応じて、急速に職種は入れ替わっている。個々の企業内だけでなく、国全体の規模で官民が連携して働き手のスキルアップや人材育成策の拡充を図っていくべきではないか。

出所:基礎資料令和4年5月/内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局

時代の移り変わりや環境の変化に伴い、職種は入れ替わっています。昨今の、デジタル化の急激な進展は、このスピードを上げている可能性があります。

社会が求めている仕事が変わることで、働き手に求められるスキルも変わります。新しく求められるスキルを個人の意識に頼るだけでは、国全体が時代に取り残されてしまいます。国の施策として、先を見据えた能力開発は必須なものと考えます。

量・質共に不足するIT人材

IT人材が「量」「質」ともに不足しているとの声が多い。スキルアップに当たっては、特にIT人材の強化にウェイトを置くべきではないか。

70%以上の企業が、IT人材の量、質共に不足感を感じています。

IT分野選考の大学の年間卒業数は、日本は3.4万人(世界9位)となっており、トップ3は①インド55.0万人②米国14.8万人③ロシア9.3万人です。インドは55万人日本の16倍です。人口比は、インドは13億で、日本1.25億の約10倍です。米国も、日本の約2.5倍の人口ですが、IT分野の学生は日本の4倍以上います。

IT含め、若者に理系の魅力をもっと伝えていく必要があるかもしれません。

キャリアコンサルティングの場

人への投資について、総理から一般の方にアイディアを募ったところ、財政的な支援策以外に、一般の方が転職やキャリアアップをする時に相談する場所がないという意見が多くあった。転職やキャリアアップについて、一般の方がキャリアコンサルティングを受けることができる場所を政策的に整備していくべきではないか。

キャリアコンサルティングは、場所に加え、費用負担をどうするかも検討課題です。品質を維持するためにはコンサルタントに対する報酬を上げる必要があると感じています。コンサルタント側も、スキルを磨きプロフェッショナルとしての意識を強く持つことが大事です。

副業の効用

従業員1千人以上の大企業では、特に兼業・副業の解禁が遅れている。他方で、副業を通じた起業は失敗する確率が低くなる、副業をすると失業の確率が低くなる、副業を受け入れた企業からは人材不足を解消できた、といった肯定的な声が大きい。成長分野・産業への円滑な労働移動を進めるため、さらに兼業・副業を推し進めるべきではないか。

出所:基礎資料令和4年5月/内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局

副業を経験し起業した場合、失敗の可能性が下がると言われています。リスクが低い副業で、ビジネスを創り、顧客を開拓し、小さいながらも経営を経験することが、起業に良い影響を及ぼしているようです。

まとめ

人への投資に関する、国の主な検討事項を見てきました。人材投資の効果、先を見据えた能力開発、不足するIT人材、キャリアコンサルティングの普及、副業の推進、いずれも重要な論点です。

人への投資が、他の投資と異なる点は、投資対効果が見えにくい点です。人は、感情を持つ生き物であり、仕事以外の様々な環境に左右されるため、個別の施策や短期間では、効果を測ることができません。昨今、人的資本の開示が拡がっていていますが、まさに全社かつ中長期的な視点から、人材投資の効果を見ていく必要があると考えます。この点も、並行して検討していくことが望まれます。

関連記事

カテゴリー

アーカイブ