内閣官房の新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議より、「新しい資本主義 フォローアップ」が発表されました。本文書では、新しい資本主義実行計画の構成に基づき、これまでの成長戦略や新しい資本主義実現会議緊急提言を踏まえた取組の進捗及び新たな取組が記載されています。
この中から、人材育成に関わる「Ⅰ.新しい資本主義に向けた計画的な重点投資 1.人への投資と分配 (2)スキルアップを通じた労働移動の円滑化」を見ていきたいと思います。
リカレントの推進
リカレントの推進に関する主な施策は、次のとおりです。
- 新たな価値を創造する人材の育成に関するプログラムの開発支援
- 学びなおしの効果に関する調査研究
- リスキル・学びなおしのための工夫事例の提示
- 「マナパス」(社会人の学びのポータルサイト)の機能を拡充
- 大学等や民間企業が提供するプログラムや学びの成果等の情報発信の充実
- 講座指定手続を簡素化
- 職業訓練のデジタル関連分野への重点化
- 教育訓練給付制度におけるオンラインや土日・夜間の講座の増強
- 教育訓練給付の対象講座の情報発信を強化
- オンラインや土日・夜間も含めジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングの環境整備
- ジョブ・カードをオンライン上で作成・登録できる作成支援サイトの構築
- デジタル等の人材ニーズに即した訓練コースの設定
- ITリテラシーを有する人材を育成するための職業訓練の実施
- 職業訓練でVR等ICT機器を積極的に活用
盛りだくさんの施策です。日本の働き手の自己啓発は、OECD加盟国と比べ低くなっています。こうした取り組みをきっかけに、自己啓発が高まることを期待します。
一方、学びは大切ですが、時間には限りがありますので、何を学ぶかは悩みどころです。上記の施策にもあげられていますが、キャリアコンサルティングを活用し、ヒントを得るのも一つです。多くのキャリアコンサルタントが、キャリコンサーチにおいて無料または低価格でキャリアコンサルティングを提供していますので、一度試してみてはいかがでしょうか。
就業機会の確保
就業機会の確保に関する主な施策は、次のとおりです。
- 中途採用等支援助成制度の周知
- 70歳までの就業機会を確保するための措置を講ずる努力義務について、施行状況を把握と周知
- シルバー人材センターのデジタル化や会員向けサービスのオンライン化の支援
- 高齢者が地域で雇用・就業機会が得られる活動を継続して行う仕組みの実証
- 企業型確定拠出年金から通算企業年金への年金資産の移換を可能とする措置
特に高齢者を対象とした施策です。既に、70~74歳の高齢者の三人に一人が働ています。定年後も、15~20年は働くことが当たり前の社会が目の前に迫っています。国は社会保険制度を維持するためにも、国民に長く働いてもらう必要があります。これからは、益々高齢者が就業し易い環境が整ってくると考えられます。この流れをうまく活用したいものです。
博士課程学生・若手研究者等への支援
博士課程学生への支援に関する主な施策は、次のとおりです。
- 優秀な博士課程学生の処遇向上と多様なキャリアパスの整備
- 研究者に対する安定的な支援を推進
- 若手研究者とスタートアップ等とのマッチングや共同研究を通じた技術シーズの事業化
- 博士課程学生による企業へのインターンシップやクロスアポイントメントの普及を支援
- 大学等と企業が共同して行う人材育成プログラムの提供を支援
これまでは、博士課程の優秀な学生を、うまく活用できていませんでした。社会の発展に伴い学びの量が増え、理系の世界では、大学4年+修士2年の6年が定番コースとなっています。世界で勝負するには、最先端の研究をビジネスに取り入れていく仕組みが求められます。こうした施策が、産業界にも刺激を与え、学び始めるビジネスマンの増加が期待されます。
デジタル人材育成
デジタル人材育成に関する主な施策は、次のとおりです。
- 破壊的イノベーションに挑戦する人材を発掘し、情報発信や国際展開を強化
- オンラインによる地域の学びの取組事例の普及活動
デジタル人材の育成は、一朝一夕にはいきませんが、様々取り組みを地道に進めていくことでしょうか。
主体的なキャリア形成を支える環境整備
主体的なキャリア形成に関する主な施策は、次のとおりです。
- ハローワークインターネットサービスとjob tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))との連携強化
- 解雇無効時の金銭救済制度への対応
多くの中高年男性は、終身雇用や年功序列の環境の中で過ごしてきており、主体的または自律的キャリアと言われても、戸惑いを隠せないかもしれません。転勤を受け入れ、サービス残業を行い、出世を気にしながら働いてきましたが、今日からあなたの仕事に責任は持てませんと言われている気もします。
このギャップを解消できるのは、キャリアコンサルタントではないでしょうか。キャリアコンサルタントが、キャリア研修を通じてキャリアとは何かを説き、キャリア面談を通じて個々人に寄り添い、判断をサポートします。このかかわりが、ギャップを埋めていきます。時には、現実に向き合うことを拒む方もいます。キャリアコンサルタントには、丁寧に時間をかけ、根気強くかかわっていく姿勢が求められます。
困っている方、支援をしたい方がおり、これを繋ぐ仕組みが求めらます。私は、この要はビジネス化と考えます。双方がビジネスとして、真剣勝負で向き合うことで、結果が出て、品質が向上し、市場が拡大するといった、好循環をつくることができるのではないでしょうか。