日本の働き手の変化

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JILPT(労働政策研究・研修機構)がJapan Labor Issuesを公表しました。この中から、Changes in the Meaning of Work in Japan: A Cross-National Comparison between Developed Countriesを見ていきます。日本における働き手の仕事の価値と態度を、世界各国と比較しています。用語の定義は、以下のとおりです。

Absolute Work Centrality score: 生活における仕事の重要性レベルを表した数値

Leisure Centrality score: 生活における余暇の重要性レベルを表した数値

Relative Work Centrality score: Absolute Work Centrality scoreからLeisure Centrality scoreを引いた数値(高いほど生活における仕事の重要性が高いことを示す)

Financial/instrumental work orientation: 仕事はお金を稼ぐものという意識

Non-financial work orientation: 仕事はいきがいという意識

Effort: 組織のため一生懸命に働く意識

Willingness to stay: 組織に留まりたいという意識

仕事の重要性

米国、日本、韓国の情報をグラフにしました。Average values and changes of “relative work centrality”は、”Absolute Work Centrality score” から”Leisure Centrality score”を引いた数値です。高いほど、生活における仕事の重要性が高いことを示しています。

3ヵ国とも、年々、下がっています。1993年、韓国>日本>米国だったのが、2020年は韓国>米国>日本になっています。米国は2014年、大きく下がりましたが、2020年に上昇しています。日本は、2020年に大きく下がっています。韓国は、1989年から一貫して右肩下がりです。

日本の生活において仕事が重要と考える人の比率が、直近では米国や韓国より低くなっています。

労働へのコミットメント

米国、イギリス、スイス、日本、フランスの情報をグラフにしました。”Financial/instrumental work orientation”の数値が高いほど、仕事はお金を稼ぐためという意識が強いことを示しています。

こちらは、”Non-financial work orientation”の数値が高いほど、仕事は生きがいという意識が強いことを示しています。

日本は、”Financial/instrumental work orientation”が緩やかに上昇し、2015年には、アメリカ、イギリス、スイス、フランスの中でトップとなっています。世界の中でも、仕事はお金を稼ぐものという意識が高いと言えます。日本の”Non-financial work orientation”は、逆に、年々減少し、2015年には、フランスを除き最も低くなっています。

日本は、仕事はお金を稼ぐだけではなく生きがいであると考える人の比率が、世界の中でも低いと言えます。

組織へのコミットメント

米国、イギリス、スイス、日本、フランスの情報をグラフにしました。”Effort”の数値が高いほど、組織のため一生懸命に働く意識が強いことを示しています。

こちらは、”Willingness to stay”の数値が高いほど、組織への忠誠が強いことを示しています。

組織のため一生懸命に働く意識は、フランスを除き同レベルだったのが、日本は2005年ごろから下がり、フランスに近づいてきています。組織への忠誠は、日本がトップでしたが、こちらも2005年から下降し、スイスに抜かれ、他国と同レベルになってきました。一方、他国は、両スコアとも、上昇基調にあります。

日本の従業員が、組織への忠誠心が高く、組織のために一生懸命働く、というのは過去のものになり、今や欧米各国と同レベルです。

まとめ

世界各国と比較し、日本における働き手の仕事の価値と態度を見てきました。この結果、日本の働き手が、次の状況にあることが分かりました。

  • 人生において、仕事が重要と考える人が減っている。
  • 仕事は生きがい、と考える人が減っている。
  • 組織のため、組織が大事、という人が減っている。

高度成長期から続いてきた日本的な働き手は、過去のものとなりました。欧米各国と比較しても、仕事を生きがいと考える人や組織に献身する人の比率は、低くなってます。この変化は、2005年を境に顕著になってきています。

一方で、仕事に変わる重要なもの、組織に変わり帰属できるもの、組織に頼らず生きていく力が、必要になります。より考えて生きることが、求められている気がします。

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