若者の離職

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新入社員の育成は、昔も今も人事部門が最も力を入れている活動の一つです。環境が大きく変化している現在、世代感の価値観の違いが大きくなっています。これに伴い、新入社員の育成も難しくなっており、多くの人事部門が頭を悩ませています。

2020年3月に、労働政策研究・研修機構が、「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ 第2回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査(ヒアリング調査)」を実施しています。今回は、この結果から、若者と職場のギャップを考えます。

若者の離職理由

性別、離職までの勤続期間別に集計した、初めての正社員勤務先の離職理由は、次の通りです。

出所:若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ 第2回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査(ヒアリング調査)/独立行政法人労働政策研究・研修機構

男性は、離職までの期間が長くなるにつれ、理由が変わっていますが、女性は、結婚・出産に集約されています。ここでは、複数の理由に分かれている男性を見ていきます。

早くに離職されている方の理由は、次とおりです。

  • 肉体的・精神的に健康を損ねた
  • 人間関係がよくなかった
  • 自分がやりたい仕事とは異なる内容だった
  • 仕事が上手くできず自信を失った

離職まで期間が長くなるにつれ増えている理由は、次のとおりです。

  • 労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった
  • 賃金の条件がよくなかった
  • キャリアアップ
  • 会社に将来性がない
  • 希望する条件により合った仕事が他に見つかった

1年以内など短期間で離職されている方の理由は、なにがしか心身の健康に影響を及ぼすことに関係しています。離職までの期間が長くなるにつれ、他社との比較や将来を考えた末での理由が増えてきます。

短期間に離職した方に多くみられる、心身の健康に影響を及ぼすことに関係したことは、タイムリーに手を打つことで防げた可能性があります。信頼できる相談者が悩みを聴くだけでも、離職者を減らせる効果があります。

次に、調査で明らかとなった問題点を見ていきたいと思います。

問題点1 採用時に正確な職業情報を伝えたつもりが実態と異なる/若者に誤認される

・採用選考時に若者に過大な期待を抱かせる曖昧な言動があった。
・採用担当部門が伝達する公式情報と現場での非公式・ローカルな運営との間にズレがある。
・情報を解釈する際の前提条件(常識)が若者と企業とで異なる。
・若者の知識・経験不足に起因する根拠のない自信・思い込み。
・若者が自分で雇用契約の内容を確認しないまま入職してしまう。

出所:若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ 第2回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査(ヒアリング調査)/独立行政法人労働政策研究・研修機構

期待と現実のギャップが大きすぎると、幻滅し離職に至る可能性が高くなります。よく見られるのが、人事部門の考えや接し方には満足していたが、現場に配属された途端、昔ながらの体育会系のノリで、ついていけなくなるケースです。また、キャリアや仕事観が希薄な場合、少し辛い体験に遭遇すると、心が折れてしまうことがあります。

問題点2 法令違反・倫理的に不適切な行為が放置されている

・経営資源(資金・人材等)不足の職場や達成困難な目標が設定されている職場では、短期
的な業績を上げるために、法令倫理に反する行為が慣習化しやすい。
・上記のような職場では労働者自身が職場の「空気を読んで」行為に荷担してしまう。
・業務の上では有能な人が不適切な行為をした場合、その人に離職されると困るため、被害
者である若者が「和を乱す」存在として扱われる。
・若者自身が通報・相談しない(自責の念、羞恥心、報復が怖い、辞める方が早い)。

出所:若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ 第2回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査(ヒアリング調査)/独立行政法人労働政策研究・研修機構

昨今、パワハラはコンプライアンス違反であり、やってはダメという意識が拡がってきたとはいえ、まだまだ日本企業の現場には根強く残っています。暴言とまでいかなくても、「昔は〇〇〇だった」「俺は〇〇〇だけど」「・・・(無視)」といった事例は、よく聞きます。多様性が叫ばれ、日本人の働き手も、世代や経歴により価値観が多様になってきています。成果を上げ、忙しくしている人ほど、気持ちに余裕が無くなり、無意識に相手の心を傷つける行為をしがちです。

問題点3 若者の採用・育成に関る問題はマネジメントに起因する

・若者の採用・育成方針や教育プログラムの作成・運営において人事部門と現場とが情報を
共有・協働していない。配属後の教育は現場任せで、配属先ごとの当たり外れが大きい。
・コミュニケーション不足により、教育的意図が若者に誤認される。
・業務過多や人手不足で人材配置に余裕がないため、①自分のことで精一杯で若者を助ける
余裕がない、②欠員補充のため若者の研修を打ち切り未熟なまま配属して即戦力を求める。
・業務配分が属人的で、既存社員が若者の担当する業務の詳細が分からず教えられない。
・個人単位の成果主義がしかれた職場では、既存社員が新人を敵視・「お荷物」扱いし、「顧
客リストを与えない」「雑用を押しつける」「成果を奪う」等の行為が発生しがち。また、
短期的に成果を上げられない者へのハラスメント行為が放置されやすい。
・業務配分や配属先が年功制や社内政治で決まる職場では、社歴の長い社員が面白味のある
仕事を独占するため、若者は補助的な役割に終始する期間が長くなり不満が溜まりやすい。

出所:若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ 第2回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査(ヒアリング調査)/独立行政法人労働政策研究・研修機構

マネジメントに関する問題です。業績がよく、本当に成熟した組織でなければ、少なからずどこにもあり得るケースです。人口が減少する中、社会全体で若者を育てる意識を醸成する必要がありそうです。

まとめ

若者の離職理由を見てきました。若者に対するヒアリング調査でもあるため、比較的、企業や職場のマネジメントにからむ問題が多く取り上げられていました。若者は、学生時代のフラットな世界から、日本企業の上位下達の世界へと、大きな環境変化を体験します。企業も変わってきていますが、まだまだこのギャップは大きいと思われます。企業側は、変化のスピードをもっと速める必要がありそうです。

一方で、新入社員のキャリアや仕事観の希薄さも課題です。大学3年から就活を始めざる得ない環境においては、仕事や将来について時間をかけ考える余裕がありません。日本でもインターンシップが普及してきましたが、明確な目的意識を持って就職できるように、入社してから育てる一括採用から即戦力を求める通年採用を、もっと取り入れていく必要があるかもしれません。

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