日本企業の99.7%が中小企業です。働き手の70%は中小企業に勤めています。人材の多様性が重要と言われる中、「グローバル人材の採用と育成-日本企業のグローバル戦略に関する研究(3)」(労働政策研究・研修機構)を基に、中小企業のダイバーシティに関する取組みを見ていきます。
ダイバーシティ人材
最初に、中小企業におけるダイバーシティ人材採用の取り組みを見ていきます。
出所:「グローバル人材の採用と育成-日本企業のグローバル戦略に関する研究(3)」労働政策研究・研修機構
ダイバーシティ人材の採用に積極的に取り組んでいる中小企業は、約20%です。昨今、ダイバーシティの重要性が叫ばれている中、とても少ない数字です。多くの中小企業にとって、ダイバーシティ人材の採用は、まだハードルが高いということでしょうか。
次にこの20%の企業が、力を入れて採用している人材を見てみます。
出所:「グローバル人材の採用と育成-日本企業のグローバル戦略に関する研究(3)」労働政策研究・研修機構
女性、外国人の採用が、いずれも65%を超えています。
今度は、ダイバーシティ人材を採用することの必要性について見ることにします。
出所:「グローバル人材の採用と育成-日本企業のグローバル戦略に関する研究(3)」労働政策研究・研修機構
「今後は必要になる」を含めると、46%の企業がダイバーシティ人材採用の必要性を認識しています。ダイバーシティ人材の採用に積極的に取り組んでいる企業は20%でしたが、この2倍以上の企業が必要性を感じています。必要性を感じつつも、実現に至っていない企業が、同数存在していることになります。本調査では未実施の理由は明らかにされていませんが、ダイバーシティ人材に関しては、求人企業と求職者のマッチング機能に工夫の余地があるかもしれません。
外国人人材
ダイバーシティ人材の中から、外国人人材に絞って見ていきたいと思います。まず外国人人材を雇用する理由を見ていきます。
出所:「グローバル人材の採用と育成-日本企業のグローバル戦略に関する研究(3)」労働政策研究・研修機構
50%以上の企業が、「新たな視点からイノベーションを喚起」を雇用理由としています。イノベーションの重要性を理解している企業またはイノベーションを必要としている企業が、ダイバーシティ人材の採用に積極的とも言えます。中小企業だからこそ、イノベーションはとても重要です。
次に、外国人を正社員として雇用している企業において、その位置づけや評価を見ていきます。
出所:「グローバル人材の採用と育成-日本企業のグローバル戦略に関する研究(3)」労働政策研究・研修機構
「優秀な外国人従業員が働いている」は、75%以上の企業が「そう思う」と回答しています。「外国人の雇用は必要不可欠である」は、60%以上の企業が「そう思う」と回答しています。一方で、中核的な役割を担う外国人は、少ないようです。外国人従業員を重宝していますが、重要案件や経営に関与する外国人は、まだ少数派と言えそうです。
最後に、今後の外国人雇用についての考えを見ていきます。
出所:「グローバル人材の採用と育成-日本企業のグローバル戦略に関する研究(3)」労働政策研究・研修機構
「優秀な外国人の定着は企業にとって重要な要素だと思う」について、45%以上の企業が「そう思う」と回答しています。一方で、「外国人を多く管理職に採用していきたい」は、「そう思う」が約16%と低くなっています。先ほどの調査でもありましたが、外国人に重要な役割は与えることには、まだ抵抗があるようです。
まとめ
中小企業のダイバーシティに関する取組みを見てきました。まとめると、中小企業は次のような状況にあります。
- ダイバーシティ人材の採用は重要と考えているが、実際に取り組んでいる企業は20%
- 外国人を採用している企業の狙いは、イノベーションの喚起(関連ブログ:生産性が低迷。リスキリングも活用し、イノベーション人材を育てる)
- 優秀な外国人は必要不可欠と認識しているが、重要な役割を与えることには消極的
半数近くの中小企業が、ダイバーシティは必要と考えていません。80%の中小企業が、ダイバーシティに取り組んでいません。働き手の人口が減少し、国や産業界が、ダイバーシティ経営の必要性を主張している中、大多数の中小企業の温度感は異なるようです。
ダイバーシティ人材を積極的に採用している20%の企業においても、優秀な外国人に重要な役割を与えることに抵抗を感じているようです。女性や外国人が、実力で評価され、日本人男性と同様の役割を実力に照らして与えられるダイバーシティ経営とは、まだ距離がありそうです。
ビジネスの環境変化が激しく、国内の人口減少も続く現在、企業を永続的に発展させていくためには、性別や国籍に関係なく力量ある人材の登用が必要です。日本経済の中心である中小企業が、熱意があり能力の高い女性や外国人と出会い易い環境や成功事例を共有していく仕組みの整備が必要かもしれません。