国が推進「リスキリング」「職務給の確立」「労働移動」の三位一体

法人のお客様ー人的資本経営

第14回「新しい資本主義実現会議」が開催されました。リ・スキリング・ 労働移動・構造的な賃上げの方向性について議論されています。会議の論点から、国の検討事項を見ていきます。

「リ・スキリング」×「職務給の確立」×「労働移動」の改革

  • 労働市場改革を進め、持続的に賃金が上がる構造を作り上げることが不可避ではないか。そのため、リ・スキリングによる能力向上支援、日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進める、という三位一体の改革を、働く人の立場に立って進めることが必要ではないか。
  • 日本企業は、平均的には獲得したスキルに応じた賃金差が小さく、スキルの高い人材が報われにくい制度となっている。日本企業と海外企業の間に同じ職務であるにも関わらず、著しい賃金差が存在することに鑑みれば、これらの賃金格差解消が必要ではないか。
  • 労働者の生活安定性(セキュリティ)を維持しつつ、リ・スキリングを進めるため、海外と同様、我が国についても在職期間中のリ・スキリングの強化が必要ではないか。
出所:第14回「新しい資本主義実現会議」資料2論点(太字は筆者)

「リ・スキリング」、「職務給の確立」および「労働移動」の一体改革です。スキルを磨き、転職し、貢献に対し適性な給与を受け取る、こういった人材を増やしていく方向です。

個人は、スキルを磨く前に自律的キャリアを考え、企業は、職務に応じ適性に賃金を支払う経営に変わる必要があります。人材の流動性が高まると、企業は自社の魅力を高めるために人材投資に力を入れます。人材投資には、従業員の教育プログラムも含まれます。コンサルティング業界では、以前から研修体制や多様なプロジェクトを紹介し、入社すれば成長できことをアピールしてきましたが、同じ動きが業界問わず拡がってきそうです。

リスキリングにより、人材の流動化を促進する

  • 「新卒一括採用」「会社主導の異動」「従業員は企業から仕事を与えられるもの」「リ・スキリングが生きるかどうかは人事異動次第」といった伝統的な日本の制度を見直し、個々の職務に応じて必要となるスキルを設定し、現在のスキルとのスキルギャップの克服に向けて、従業員が上司と相談しつつ、自ら職務やリ・スキリングの内容を選択していく制度に移行する必要があるのではないか。これにより、併せて、社外から経験者採用を行う門戸を開き、内部労働市場の創設と外部労働市場とのシームレスな接続が可能になるのではないか。
出所:第14回「新しい資本主義実現会議」資料2論点(太字は筆者)

上記が理想ですが、現状とのギャップが大きいため、移行がとても大事になります。例えば、次のような点も検討する必要があります。

  • 即戦力となる新卒学生を、大学と産業界でどう育てていくか
  • 自律的に働いていく上で、必ずしも自己主張が得意でない国民性とどう折り合いをつけるか
  • 従業員の前に、経営者のプロ意識および能力を育成する必要はないのか

キャリアコンサルティング機能を強化する

日本には国家資格としてキャリアコンサルタントがあるが、求人・求職・キャリアアップに関する労働市場の情報を共有しているわけではないので、ハローワークや民間人材会社が有する求人・転職に関する基礎的情報を共有し、コンサルティングがしやすい環境を整備すべきではないか。また、構造的賃上げを進めるためには、官のハローワークにおいても、コンサルティング機能の強化が必要ではないか。

出所:第14回「新しい資本主義実現会議」資料2論点(太字は筆者)

求人・求職・キャリアップに関する労働市場の情報を、キャリアコンサルタントに共有することが求められています。以下は、基礎資料からの抜粋です。

出所:第14回「新しい資本主義実現会議」資料1基礎資料

ハローワークなど、就職や転職する方を対象にしたコンサルティング機能を強化し、賃金やキャリアアップの転職を増やします。活き活きと長く働くためには、自分に向き合いキャリアを考える時間も必要です。短期思考で、転職の繰り返しにならないよう注意が必要ですね。(参考:キャリアコンサルティングの効用

まとめ

国の人材育成の論点を見てきました。国は、「リ・スキリング」×「職務給の確立」×「労働移動」の達成を目指しています。働き手が、スキルを磨き、成長産業に転職し、貢献に対し適性な給与を受け取る、この流れを推進しています。人の考えや価値観を変えることになるため、制度だけではなく、一人一人に寄り添った対応が必要です。6.4万人のキャリアコンサルタントを、もっと有効に活用できないのか。私も解はありませんが、人材育成に関わる者として、できることを実践しながら、国の動向も注視していきます。

ピープルエナジー代表 伊集院正

22年間、⾦融IT・リスクのコンサルティングに従事。ITリスクチームの拡大や金融セクター設立に貢献。この間、優秀な多くのコンサルタント育成に関与。2020年、国家資格キャリアコンサルタントを取得。2021年に⼈材コンサルティングを開始し、企業の従業員や働き手に対し、心理学の理論を活用したコーチングを提供中。
   
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