ジョブ・カードとは?自己理解の深掘りに使える

個人のお客様ーキャリア

  • ジョブ・カードとは何?
  • ジョブ・カードで何ができるの?
  • もっと自己を理解したい

本記事は、こんな悩みや疑問を解決します。

令和5年度「能力開発基本調査」/厚生労働省によると、ジョブ・カードを「内容を含めて知っており活用している」は1.2%、「内容を含めて知っているが活用していない」が16.7%です。一方、「名称(言葉)は聞いたことがあるが内容は知らない」が38.6%、「名称(言葉)を聞いたことがなく、内容も知らない」が43.3%とジョブ・カードの内容を知らない事業所が80%を超えています

出所:令和5年度「能力開発基本調査」/厚生労働省

企業においてジョブ・カードの認知度は低く、個人も推して知るべしです。こんなジョブ・カードですが、実は自己理解に有益なツールです。誰でも無料で使えますので、使わない手はありません。本記事では、ジョブ・カードとは、ジョブ・カードを作成するメリット、ジョブ・カードで自己理解を深める方法について解説します。

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ジョブカードとは?

ジョブカード

ジョブ・カードは、生涯を通じたキャリア・プランニングおよび職業能力証明の機能を担うツールです。キャリアコンサルティングなど相談支援の場面でも用いられます。学生、在職者、求職者など幅広い方の求職活動やキャリア形成に活用できます。

ジョブ・カードとは

①生涯を通じたキャリア・プランニング
キャリアコンサルティング等の支援の前提となる個人の履歴や、支援を通じた職業経験の棚卸し、職業生活設計等の情報を蓄積し、訓練の受講、キャリア選択等の生涯のキャリア形成の場面において活用する「生涯を通じたキャリア・プランニング」のツール

②職業能力証明
免許・資格、教育(学習)・訓練歴、職務経験、教育・訓練成果の評価、職場での仕事振りの評価に関する職業能力証明の情報を蓄積し、場面・用途等に応じて情報を抽出・編集し、求職活動の際の応募書類、キャリアコンサルティングの際の資料等として活用する、職業能力を見える化した「職業能力証明」のツールジョブカードは、個人のキャリア形成を支援するために厚生労働省が提供するツールで、職業能力開発や転職活動、自己分析をサポートします。

*太字は筆者
出所:マイジョブ・カードのHP

ジョブカードは、マイジョブ・カードのHPにて詳細が解説されています。本記事では、自己理解に焦点を絞り説明します。

構成と内容

ジョブカードは、主に以下のシートで構成されます。本記事で主に紹介するのは、キャリア・プランシート(就業経験がある方用)とキャリア・プラン作成補助シートです。

  • キャリア・プランシート(就業経験がある方用)
    自身の価値観や将来取り組みたいことを記載し、目指す方向を明確にします。自己理解の観点から筆者が大事だと考えているのは、以下の3項目です。1は大事にしたい価値観、2は得意なこと、3は今好きなことを記載します。記載方法はオリジナルと異なりますが、自己理解を行うにあたり筆者がお勧めしたい方法です。
#項目記載方法
1価値観、興味、関心事項等大事にしたい価値観を記入します
2強み等弱みは対象とせず、自分の得意なこと(強み)を記入します
3将来取り組みたい仕事将来ではなく、今好きなことを記入します
出所:マイジョブ・カードHP
  • キャリア・プラン作成補助シート
    キャリア・プランシートに書く内容が分らない場合に使用します。過去を振り返り、いくつかの質問に答えることで、自身の価値観得意なこと好きなことに気づくことができます。自己理解の観点から筆者が大事だと考えているのは以下の項目です。記載方法はオリジナルと異なりますが、自己理解を行うにあたり筆者がお勧めしたい方法です。
#項目記載方法キャリアプランシート
1ライフラインチャート仕事を振り返りキャリアに関する満⾜度を曲線で描きます。どういう状態で何をしている時に自分は満足度が高いかが見えてきます。価値観、興味、関心事項等
2自分に影響を与え、印象に強く残っている経験・出来事自分に影響を与えている人物、経験、出来事を思いだし記載します。ここから自分の価値観が見えてきます。価値観、興味、関心事項等
3仕事を選ぶ上でのこだわり⾃分が仕事を選ぶ上でのこだわりを選択します。選択内容から、大事にしている価値観、物、ことが見えてきます。価値観、興味、関心事項等
4価値観、興味・関心事項等大事にしたい価値観をを記入します。ここまで考え書いてきた内容から、最も自分にしっくりくる価値観を探ります価値観、興味、関心事項等
5自分の「強み」と「弱み」強みとして自信のあるものを選択します。自己理解を行う際、筆者は弱みは除外してよいと考えています。賛否両論あるかもしれませんが、筆者は強みをどんどん伸ばすことが活き活き働くことにつながると考えます。強み等
6生かしたい自分の強み今後仕事をしていく上でどのような「強み」を⽣かしたいか記載します。こちらも強みに焦点を当てます強み等
7強み等自分の強みを記載します。得意なことと言い換えた方が分りやすいかもしれません。無意識にできてしまうこと、苦にならずできることです。強み等
8将来取り組みたい仕事や働き方等今好きなことを記載します。今興味があること、関心があることです。自己理解を行う際、筆者は将来ではなく今に焦点を当てた方が良いと考えます。○○のため、役に立つから、といった考えも脇に置き、自分の心に正直になります。将来取り組みたい仕事や働き方等
出所:マイジョブ・カードHP
  • 職務経歴シート
    職歴や仕事内容を具体的に記載することで、経験と実績を整理します。本記事では、これ以上詳しく説明しません。
  • 職業能力証明シート
    取得資格や学習歴を記録し、これまでの能力を可視化します。本記事では、これ以上詳しく説明しません。

  

ジョブ・カードを作成するメリット

ジョブ・カードを知っているが活用していない理由は「ジョブ・カードを活用した訓練を実施していない」が最多の43.5%ですが、「ジョブ・カードを活用するメリットが感じられない」も32.1%と続いています。

出所:令和5年度「能力開発基本調査」/厚生労働省

   

ジョブ・カードを活用するメリットには、以下のとおりです。筆者は、特に自己理解の深化が大きなメリットと感じています。次章では、自己理解を深める方法を説明します。

メリット説明
自己理解の深化自分が大切にしていることや得意なことを明確にできます。自分がどのような仕事や環境でパフォーマンスを発揮しやすいのかがわかります。より自分に合った働き方を見つけやすくなります。
自己振り返りと成長促進ジョブカードを定期的に見直すことで、自己の成長を実感し、次の目標を設定しやすくなります。転職やキャリアチェンジだけでなく、現職でのスキルアップや新たなチャレンジを考える際にも役立ちます。
職務経歴やスキルの整理ジョブカードの職務経歴シートや職業能力証明シートを活用することで、自身の職歴やスキルを体系的に整理できます。また、自分の経験やスキルを明確に把握できます。転職活動においても、具体的な実績をアピールするための土台となります。
履歴書・職務経歴書の効率的な作成ジョブカードを作成することで、履歴書や職務経歴書の作成負荷を軽減できます。転職活動において書類作成の効率化がはかれます。
キャリアプランの明確化キャリア・プランシートを作成することで、キャリアビジョンが具体的になります。将来の目標を明確にし、必要なスキルや経験を洗い出すことで、実現への道筋が可視化されます。
キャリアコンサルティングの活用ジョブカードをもとにキャリアコンサルティングを受けることで、専門家からのアドバイスをより効果的に活用できます。これにより、自分一人では気づけない課題や新たな可能性を見つけることができます。

ジョブ・カードで自己理解を深める方法

ジョブ・カードの最大の特徴の一つは、自己理解を深められる点です。単に職務経歴を整理するだけでなく、自分の価値観や強み、目指すべき方向性を掘り下げるためのツールとして活用できます。

活き活き働く、幸せな人生を歩む、天職に就く、全て土台は自己理解です。自己理解のやっかいな点は、できていないことに気づきにくいことです。また、頭で考えても答えがでてくるものではなく、想像し感じることが大切です。

キャリア・プランシートの3項目

自己理解に活用するのは、キャリア・プランシートの以下3項目です。

  • 価値観、興味、関心事項等 :大事なこと
  • 強み等 :得意なこと
  • 将来取り組みたい仕事や働き方等 :好きなこと

次節より3項目について見ていきます。

価値観、興味、関心事項等(大事なこと)

価値観、興味、関心事項等は、大事にしたい価値観、興味・関心を持っていることなどを記入します。一言で表すと、自分が一番大事にしていることです。

改めて「大事にしていることは何ですか?」と聞かれ、すぐ答えられる人は少ないのではないでしょうか。誠実に生きること、家族との時間、挑戦すること、安定した生活、友人との交流、自由に働く、奉仕、ワクワクする体験など、価値観は人の数だけあります。キャリア・プラン作成補助シートを使い、どういう言葉や状況に自分は心が揺さぶられるかを探っていきます

コーチ
伊集院

筆者は3年半前に会社を退職し、独立しました。辞める3年前から、自分のこと、仕事のこと、家族のこと、将来のことを考えました。当時、自己理解を意識したつもりはありませんが、自分は自分の意思で自由に行動できないのが、最もストレスを感じることに気づきました。そこから、独立を決心しました。

    

  • 【A-1】 ライフラインチャート

ライフラインチャートは、仕事を振り返り、キャリアに関する満⾜度を曲線で描くものです。以下の例は、筆者が23歳で就職してから57歳現在までのライフラインチャートです。

チャートを書きながら、自分は仕事を任せてもらえる環境では、仕事が楽しくパフォーマンスも高かったなと感じました。一方、指示されるだけの仕事環境や、管理がきつい環境では、やる気を失いパフォーマンスも低かったと思います。

ライフラインチャートでは、どういう状態で何をしている時に自分は満足度が高いかに気づくことができます。

出所:マイジョブ・カードHPのシートを基に筆者作成

    

  • 【A-2】 社会人になって仕事を始めてから(前職も含めて)、自分に影響を与え、印象に強く残っている経験・出来事

ライフラインチャートを基に、いつ、どこで、誰と・誰に対して、何を、どのように、どんな印象(良し悪し)を受け、どんな影響(ターニングポイントなど)があったかを順位をつけ、3つ以上記載します。以下は筆者の例です。

最も印象に残っている出来事を考えるのには少し時間を要しましたが、結局、チームリーダーとして目標を達成できた経験を一番にしました。5年間、悩み、迷い、苦しみましたが、最後に達成できたことが、ポイントのような気がします。3件記載しましたが、いずれも任された環境で、複雑な課題に対し深く考え方向を出すことは、共通しています。

出所:マイジョブ・カードHPのシートを基に筆者作成

   

  • 【A-3】 仕事を選ぶ上でのこだわり(大事にしたい価値観)

自分が仕事を選ぶ上でのこだわり(大事にしたい価値観)を選択します。以下は筆者の例です。

あまり迷うことなく、自分のペースや独立、世の中の課題を深く考え、世の中に役に立ちたい、自分にはこうした気持ちがあることが分ってきました。

出所:マイジョブ・カードHPのシートを基に筆者作成

   

  • 【A-4】 価値観、興味・関心事項等(大事にしたい価値観、興味・関心を持っていることなどを記入)

【A-1】から【A-3】を見て、どのようなことを感じるか記載します。以下は筆者の例です。

出所:マイジョブ・カードHPのシートを基に筆者作成

   

大事にしたい価値観は、自分にとって心地良いこと、こうしたいと思えることです。こんなこと言えないなとか、こうあるべきだろうなどと考えてはいけません。静かな場所でリラックスして、自分の心の声に集中しましょう。時間はかかるかもしれませんが、次第に心が反応する言葉や状態が分ってきます。

強み等(得意なこと)

  • 【B-1】 自分の「強み」と「弱み」

自分が非常に自信があるものに◎、ある程度自信があるものに○を記載します。筆者は、自己理解は強みに焦点を当てることが大事だと考えるため、ここでは弱みは割愛します。以下は筆者の例です。

普段意識していませんでしたが、誠実さと真面目さが自分の強みであることが分りました。

出所:マイジョブ・カードHPのシートを基に筆者作成

   

  • 【B-2】 生かしたい自分の強みと改善したい自分の弱み

【B-1】に記入した内容を踏まえ、生かしたい強みを選択します。こちらも強みのみに焦点を当てています。以下は筆者の例です。

出所:マイジョブ・カードHPのシートを基に筆者作成

   

  • 【B-3】 強み等(自分の強み、弱みを克服するために努力していることなどを記入)

【B-1】、【B-2】に記入した内容を踏まえ、自分の強みを記載します。以下は筆者の例です。

出所:マイジョブ・カードHPのシートを基に筆者作成

   

強みは、得意なこととして考えます。無意識な思考、感情や行動パターンです。苦にならずできること、人はできていないのに自分は簡単にできること、人から言われた自分が想像もしていない特徴などです。

将来取り組みたい仕事や働き方等(好きなこと)

  • 【D-1】 将来取り組みたい仕事や働き方等(今後やってみたい仕事(職種)や働き方、仕事で達成したいことなどを記入)

「将来取り組みたい仕事や働き方等」というタイトルですが、ここでは今好きなことを考えます。筆者は、自分の気持ちは今この瞬間しか分らず、時とともに変化するものと考えています。自己理解を深めるには、今好きなことを考えることをお勧めします。以下は筆者の例です。

出所:マイジョブ・カードHPのシートを基に筆者作成

   

好きなことは、考えるとワクワクする、夢中になれるというものです。○○のため、役に立つから、といった考えも脇に置き、自分の心に正直になりましょう。

ここまできて、大事なこと、得意なこと、好きなことが分りました。大事なことを前提に→得意なことで→好きなことを行う、これがいつも心が安定しながら最高のパフォーマンスを上げることができる状態です

  

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まとめ

本記事では、ジョブ・カードとは、ジョブ・カードを作成するメリット、ジョブ・カードで自己理解を深める方法について解説しました。

ジョブカードは、転職やキャリアアップのためだけでなく、自己理解を深めるツールとしても非常に有用です。活き活き働く、幸せな人生を歩む、天職に就く、全て土台は自己理解です。自己理解のやっかいな点は、できていないことに気づきにくいことです。頭で考えても答えがでてくるものではなく、想像し感じることが大切です。

キャリア・プランシートおよびキャリア・プラン作成補助シートを活用することで、大事なこと、得意なこと、好きなことを見つけることができます。さらに、大事なことを前提に→得意なことで→好きなことを行うことで、心の安定と最高のパフォーマンスを手に入れることができます。

誰でも無料で使えるジョブ・カードを、ぜひ活用してください!

参考文献

  • 世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方 人生のモヤモヤから解放される自己理解メソッド/八木仁平/2020年10月15日/株式会社KADOKAWA

  

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ピープルエナジー代表 伊集院正

22年間、⾦融IT・リスクのコンサルティングに従事。ITリスクチームの拡大や金融セクター設立に貢献。この間、優秀な多くのコンサルタント育成に関与。2020年、国家資格キャリアコンサルタントを取得。2021年に⼈材コンサルティングを開始し、企業の従業員や働き手に対し、心理学の理論を活用したコーチングを提供中。
   
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