転職を考え始めたが不安もある。ゴチャゴチャ頭を整理し解消する

個人のお客様ーキャリア

転職の不安は、不安の中身に応じ、冷静に考えを整理する必要があります。

転職は人生の大きな決断の一つです。転職を考えるとき不安に感じるのは当然です。ただ不安が大きくては、冷静な判断、迅速な行動がとれません。不安を感じる理由には、主に次の3点があります。

  • そもそも転職したほうが良いのか?
  • 満足できる会社はあるのか?
  • 新しい会社でやっていけるか?

本記事では、転職に不安を感じる理由、転職の不安を解消する方法を解説します。

   

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転職の現状 

転職者の人数

労働力調査(詳細集計) 2023年(令和5年)4~6月期平均結果」総務省によると、2022年度の転職者数は、303万人です。転職者の比率は、ほぼ横ばいが続いていますが、25~34歳はコロナ禍にもかかわらず伸びています。(下記のグラフ参照)

日本の転職経験率は約60%、アメリカは約90%と言われています。アメリカは通年採用が一般的なため単純に比較できませんが、日本ではまだ転職に抵抗を感じる方が多く存在しています。

出所:年齢階級別転職者数及び転職者比率(エクセル:21KB)/総務省統計局を基に作成

転職を考えるきっかけ

人が転職を考えるきっかけは様々ですが、大きく次のように分けられます。

#項目説明
1人間関係上司に精神的に追い詰められる、会社の雰囲気に馴染めないなど、人間関係で悩んでいる
2仕事内容入社前に聞いていた話や自分が想像していた仕事と、実際の仕事内容が異なる
3プライベートの時間業務量が膨大で定時で終了せず週末出勤もあり、プライベートの時間がとれない
4給与・昇格想定していたより給与がすくない、なかなか昇格できない
5家庭の都合育児や介護など家庭の都合により、今までどおり仕事を続けられない
転職を考え始めるきっかけ

   

最も多いのは、1の人間関係です。パワハラは論外としても、何となく周りの人と合わない、居心地が悪いので転職を考え始めたという方もいます。

2の仕事内容は、仕事の難易度が高すぎたというより、仕事が物足りないために転職を考え始めることが多いようです。最近はホワイト企業にもかかわらず、成長できそうにないため転職するという若者が増えてきています。

3プライベートの時間がとれない状況は、働き方改革で減ってきています。一方で4の給与が少ない、昇格ができないという理由で転職を考え始める方は常に一定数います。

5の家庭の都合は、会社の制度が充実してきたとはいえ、日本ではなかなかテレワークの導入が進まないなど、まだ十分ではありません。

   

仕事に伸び悩んでいると感じている方は、こちらをご覧ください。

    

転職に不安を感じる理由 

転職を考え始めた時、多くの方は感情が先走り、頭の中が整理できていません。会社に対しての怒りや将来への焦りなど、様々な感情が入り乱れます。このモヤモヤは「自分はこう思うけど、本当にそれでいいのか?」という気持ちがあるために生じます。次のような疑問に応えられていないのです。

そもそも転職したほうが良いのか?

転職を考え始めるのは、多くの場合ネガティブな感情が出てきた時です。先の転職を考えるきっかけに対し、生じる感情を想定してみます。

  1. 人間関係:怯え、不安、悲しみ
  2. 仕事内容:怒り、不安、焦り
  3. プライベートの時間:怒り、不安
  4. 給与・昇格:怒り、悲しみ、焦り
  5. 家庭の都合:不安

こうした感情が強いほど、冷静に判断できなくなります。感情に身をまかせ行動するのは簡単ですが、自分が何に悲しみや怒りを感じているのかを知らないと、転職しても違う問題にぶつかります。

「そもそも転職したほうが良いのか?」の裏には、目の前の問題は解決できるかもしれないけれど、他の面で今より悪くならないかという不安があります。ネガティブな感情が強いと、客観的に考えることができません。

満足できる会社はあるのか?

次に不安を感じるのが、「満足できる会社はあるのか?」です。目の前の問題から抜け出せると魅力を感じる一方、実際に働いてみないと実態はわからないという不安です。これは、本当の自分がやりたい仕事や求める環境が分からないことからきています。

転職活動は履歴書や経歴書を作成し、数回の面接を行い、採用不採用に心を惑わされるなど、手間暇がかかることも、不安を強めます。

新しい会社でやっていけるか?

転職先では新しい上司や同僚、クライアントとの関係を築かなければなりません。人間関係がうまくいかないと、仕事にも影響が出ます。また、新しい会社の文化やルールに慣れるのも時間がかかります。

最初はスムーズに進むことばかりではありません。うまくいかないことが続くと、「前職ではこうだったのに、、、」と会社のせいにしがちです。気持ちを切り替え、新しい職場や仕事に積極的にかかわることができないと、転職してもうまくいきません。

  

   

転職の不安を解消する方法

感情を抑え客観的に判断する

感情が高ぶっている時は、強制的に思考を逆転させます。思考を逆転させることで、今の会社の良い点を客観的に考えることができます。この結果、感情が少しでも落ち着いた場合は「現在の会社にとどまる」、感情に全く変化がなかった場合は「転職活動はじめる」を選択します。

ネガティブ感情が強い時は、片面からしか物事を考えられなくなっています。両面から考えることで、今の会社の見えてなかった良い面に気づくことができます。ポイントは少しでも感情が落ち着いたら、「会社にとどまる」です。転職のタイミングではありません。以下を参考にぜひ試してみてください。

項目記載方法
現在の仕事で悩んでいること会社で疎外感を感じるなど、悩みを記載します
感情「悲しみ50/怒り80」など現在の感情を最高100点で評価します
思考「私は会社に必要とされていないため、今の会社を辞め転職したほうが良い」と記載します
根拠「私は重要な会議によばれない」など上記の根拠を記載します
反対の思考「私は会社に必要とされていないと感じる面もあるが、今の会社を辞めず続けたほうが良い」と先ほどの反対の思考を記載します
反対の思考の根拠「裁量があり待遇も良い」など少しでも上記の根拠となりそうなことを記載します
その後の感情この時点での感情を「悲しみ40/怒り60」など最高100点で評価します。
感情を抑え客観的に判断する方法

自分の特徴を知る

自分がやりたい仕事や求める環境を見つけるためには、自分の特徴を知る必要があります。「金融業界が向いている」「人事が向いている」ではなく、「自分は仕事を任せてもらい、自由に考え行動できる環境で活き活き頑張ることができる」といったものです。仕事は大変だけど、心地よい、苦にならないという感覚です。

転職の際は、この自分の特徴が活かせる場を前提に、自分の経験やスキルを求めている会社を選びます。自分の特徴を知るには、過去の経験の振り返りキャリアアンカーを評価するなど、自己分析が効果的です。また、人には現状維持バイアスがあることも知っておく必要があります。

過去の仕事経験を振り返る

過去の仕事で充実した経験を振り返ります。突然ですが次の質問について考えてみてください。

  • これまでの仕事において最も充実していたと感じるエピソードは?
  • どんなところに充実を感じましたか?
  • 同じような充実感を味わい仕事をするとしたら、どのような環境が必要ですか?

この質問に回答することで自分の特徴が見えてきます。周りの人物、景色、話していること、触っているもの、聞こえてくる音など、できるだけ具体的な場をイメージするのがポイントです。

では次の質問はいかがでしょうか。自分が避けなければいけない環境を、特定することができます。

  • これまでの仕事において最も辛かったエピソードは?
  • どんなところに辛さを感じましたか?

上記の質問への回答がなかなか思い浮かばないという方は、これまでの仕事経験に関し、以下の質問に答えながら、充実感を得た仕事の場面を思い出してみてください。

  1. あなたの仕事の内容は?
  2. 仕事の成果としてどのようなものがありますか?
  3. 上司との関係はどうでしたか?
  4. 会社での評価はどうでしたか?
  5. 仕事に対しどういうことを感じていましたか?
  6. 昇進のスピードはどうでしたか?
  7. 何か資格を取得しましたか?
  8. 仕事の忙しさはどうでしたか?
  9. 異動や転勤はありましたか?
  10. 職場の居心地はどうでしたか?
  11. 若かりし頃の理想や野心と現実を比べた時に思うことは?

自分のキャリアアンカーを知る

キャリアに関わる難しい選択を迫られたとき、どうしても譲れない大切なものをキャリアアンカーと呼びます。アメリカの心理学者エドガー H. シャインが提唱した、キャリア・アンカーの理論です。

キャリア・アンカーとは、意にそぐわないキャリアの選択を迫られた場合でも、諦めきれない動機や価値観です。8種類のキャリア・アンカーのカテゴリーが提唱されています。

カテゴリー説明
専門・職能別能力専門家であることに満足感を得る
経営管理能力経営管理そのものに関心をもつ
自律・独立自分のやり方を重視する
保障・安定安全、安心を最優先する
起業家的創造性新しいベンチャー事業を興す欲求をもつ
奉仕・社会貢献世の中に貢献したい欲求をもつ
純粋な挑戦手ごわい相手に勝つ欲求をもつ
生活様式生活を重視し仕事とバランスをとる
出所:キャリア・マネジメントー変わり続ける仕事とキャリアー/エドガー H. シャイン、ジョン・ヴァン=マーネンを基に作成

    

キャリアアンカーは複数の質問に回答することで特定できます。またまた突然ですが、下記の1~8の中から最も当てはまるものを選んでください。ざっくりですが、自分のキャリアアンカーを知ることができます。該当するキャリアアンカーは本記事の文末をご覧ください。

  1. 自由と自律より、保障と安定のほうが私にとっては大切だ
  2. 私が自分のキャリアで成功を実感できるのは、社会全般の福祉のために真に貢献できたときだ
  3. 私にとっては、個人的関心や家族の問題のために能力を十分に発揮できない仕事に妥協して就くくらいなら、組織を去るほうがましだ
  4. 私は、困難な問題の解決に、いつまでも挑戦し続けることができるキャリアが夢だ
  5. 私は、自分で会社を興すための土台となりそうなアイディアを、いつも注意して探している
  6. 私は、自分のやり方や自分のスケジュールで仕事ができる自由なキャリアが夢だ
  7. 私は、周りの人がいつも自分に専門家としてのアドバイスを求めてくるくらい、現在手がけていることについて得意でありたいと思う
  8. 私は仕事で一番満足できるのは、1つの活動に向けて多くの人の努力を結集できたときだ
出所:キャリア・マネジメントー変わり続ける仕事とキャリアー/エドガー H. シャイン、ジョン・ヴァン=マーネンを基に作成

   

      

現状維持バイアスを知る

現状維持バイアスとは、人がこれまでの状況を維持しようとする特性です。人は、変化することのリスクを過大に、現状のままいるリスクを過小に評価する傾向があります。

現状維持バイアスは、転職のように大きな環境の変化を伴うときに現れます。転職した場合の利益が、転職しなかった場合の利益を上回った場合、転職が最適な選択肢になります。しかし、多くの人は、メリットやデメリットを客観的に比較せず、何となく転職しないほうがいいかなと思い、機会を逃すことになります。

「バイアスとは何か(藤田政博)*1」によると、人は、不確実な状況では、得るより失うほうが、悲しみが大きくなります。以下の図は、不確実な状況で、得られる利得の効用を表したグラフです。上は効用が高くなり喜びが増えます。下は効用が低くなり悲しみが増えます。右が得、左が損です。中心の参照点は、現在です。

バイアスがなければ直線になりますが、やや曲がっています。利得の価値上昇よりも、損失の価値低下の角度が急です。10万円を得した時の喜びの大きさより、10万円を損した時の悲しみの大きさの方が、大きいことを表しています。不安定な自然の中で生きてきた人間の、生き残るための術と言えるかもしれません。

出所:バイアスとは何か/藤田政博/2021年6月10日/株式会社筑摩書房

じぶんコーチングを習得する

転職先で仕事がうまくいかない時は、じぶんコーチングを実施すると効果的です。専属コーチが1on1の面談を実施し、じぶんコーチングを身に着けていただくプログラムです。じぶんコーチングは、ノートを使い、一人で実施する課題克服の手法です。詳しくはこちらをご覧ください。

*セルフコーチングは「じぶんコーチング」に名称を変更しました。

まとめ 

アメリカではビジネスパーソンの約90%が、一生のうち一回は転職すると言われています。政府の後押しもあり、今後は日本でも転職は増えていくことが想定されます。

一方、転職は人生の大きな決断の一つです。転職を考えるときは、誰しも不安を感じます。不安を解消するには、何を不安を感じているのかを特定し、内容に応じて対処することが大切です。

  • そもそも転職したほうが良いのか? ⇒ 感情を抑え客観的に判断する
  • 満足できる会社はあるのか? ⇒ 自分の特徴を知る
  • 新しい会社でやっていけるか? ⇒ セルフコーチングを習得する

人生の大きな転機、冷静に判断し、深く考え、迅速に行動しましょう。

引用文献

*1 バイアスとは何か/藤田政博/2021年6月10日/株式会社筑摩書房   

8つの質問に該当するキャリアアンカー

#質問カテゴリー
1自由と自律より、保障と安定のほうが私にとっては大切だ保障・安定
2私が自分のキャリアで成功を実感できるのは、社会全般の福祉のために真に貢献できたときだ奉仕・社会貢献
3私にとっては、個人的関心や家族の問題のために能力を十分に発揮できない仕事に妥協して就くくらいなら、組織を去るほうがましだ生活様式
4私は、困難な問題の解決に、いつまでも挑戦し続けることができるキャリアが夢だ純粋な挑戦
5私は、自分で会社を興すための土台となりそうなアイディアを、いつも注意して探している起業家的創造性
6私は、自分のやり方や自分のスケジュールで仕事ができる自由なキャリアが夢だ自律・独立
7私は、周りの人がいつも自分に専門家としてのアドバイスを求めてくるくらい、現在手がけていることについて得意でありたいと思う専門・職能別能力
8私は仕事で一番満足できるのは、1つの活動に向けて多くの人の努力を結集できたときだ経営管理能力
出所:キャリア・マネジメントー変わり続ける仕事とキャリアー/エドガー H. シャイン、ジョン・ヴァン=マーネンを基に作成

   

    

「メタ認知力をつけ活き活き働く」ヒントを、ほぼ週次でお届けします。新着ブログやKindle本もご案内します。

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ピープルエナジー代表 伊集院正

22年間、⾦融IT・リスクのコンサルティングに従事。ITリスクチームの拡大や金融セクター設立に貢献。この間、優秀な多くのコンサルタント育成に関与。2020年、国家資格キャリアコンサルタントを取得。2021年に⼈材コンサルティングを開始し、企業の従業員や働き手に対し、心理学の理論を活用したコーチングを提供中。
   
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