STEM教育だけでは不足
デジタル技術の進展により、ここ最近は、STEM教育が受けることが強みにつながると言われてきました。STEMとは以下の略語です。
S・・・Science 科学
T・・・Technology 技術
E・・・Engineering 工学
M・・・Mathematics 数学
しかし、STEMスキルを持っていても、ビジネスの一線で生き残っていくのは、厳しいことが分かってきました。グーグルが、1万人のトップマネジャーの成果を調べたところ、多くはSTEMスキルを持っていました。その中でも、特に大きな成果を出していたマネジャーは、コーチングスキルも持ち、明確なビジョンや戦略を有していたということです。進歩の早いテクノロジーの世界において、マネジャーは、自身のスキル以上に、次世代の才能を伸ばす力を持つことが、大切であることを示しています。
Art/Arts(芸術/リベラルアーツ)が求められる
経済学者のアンドリュー・スコットとリンダ・グラットンは、次のように述べています。
これからの時代にとりわけ重要になるのは、実験をおこなって、リスクを伴う行動に踏み出したり、経験から学習して、ほかの人たちと協働したり、独創的な問題解決策を考案したりするなど、もっと複雑なスキルだ。好奇心をもち、仮説を立てて検証し、分析と内省を実践して、ものごとの理解を深めて前へ進む姿勢ー要するに、科学的探究の精神をもつ必要があるのだ。
出所:LIFE SHIFT2 100年時代の行動戦略/アンドリュー・スコット、リンダ・グラットン/訳 池村千秋
そこで、注目を集めるようになってきたのが、STEAM(スティーム)です。STEMにAが追加されています。
A・・・Art/Arts 芸術/リベラルアーツ
Aは、芸術、哲学、歴史、語学、政治など幅広く、人間として自由に生きるための教養を指しています。世界では、既に多くの企業や大学が、STEAMに注目し、アートやデザイン重視の傾向が強まっています。
中高年こそAの強化が必要
日本では、リスキリングと称し、若手から中高年まで、全ての働き手にデジタルスキルの学びが求められている感があります。人間は年を経るごとに、流動性知能は減少しますが、結晶性知能は向上すると言われます。流動性知能とは、文字や図形を使った関係の操作や推理(情報処理)を素早く行う力を指します。結晶性知能とは、経験を通して獲得された一般的知識や問題解決能力、言語能力を指します。
中高年こそ、Art/Arts(芸術/リベラルアーツ)の強化が必要かもしれません。部下の話を引き出す傾聴を学ぶ、育成を促すコーチングスキルを身につける、歴史や哲学からリーダーの在り方を学ぶ、といった具合です。若手が減っている今、若手の能力を伸ばし育てることが、中高年の大事な役割ではないでしょうか。