産業能率大学総合研究所が、「2022年度(第33回)新入社員の会社生活調査」 結果を発表しました。1990年度から継続している調査です。本年3月~4月にかけ、産業能率大学にて新入社員研修を受講した方が対象です。主な調査結果から、Z世代と呼ばれる今の若者世代の価値観を見ていきます。
目次
- 1 就職先を選ぶ際に重視した点は何ですか?
- 2 あなたは「働く」上で、どのようなことが自分にとって重要だと感じますか?
- 3 働き始めるにあたって、不安に思っていることは何ですか?
- 4 会社に副業容認制度があった場合、利用したいと思いますか?
- 5 働く上で企業に求めるものは何ですか?
- 6 将来のキャリアについてどのように考えていますか?
- 7 あなたが最終的に目標とする役職・地位は?
- 8 “人生100年時代”と言われている中で、あなたはいつまで被雇用者(会社勤めなど)として働きたいと思いますか?
- 9 年齢や在籍年数に応じて昇進や待遇が決まる年功序列的な人事制度と、業績に応じて決まる成果主義的に人事制度ではどちらを望みますか?
- 10 “終身雇用制度”を望みますか?
- 11 まとめ
就職先を選ぶ際に重視した点は何ですか?
出所:2022年度(第33回)新入社員の会社生活調査/学校法人産業能率大学総合研究所
就職先を選ぶ際に重視した点トップ3は、①「業種」②「福利厚生」③「職務内容」です。「職務内容」は、過去2年に比べると大きく減っています。その他、過去2年と比べ減っている項目は、「給与水準」、「労働環境が劣悪でないこと」、「通勤の利便性」、「残業の有無」、「業績」です。一方、過去2年と比べ増えている項目は、「所在地」、「企業規模」です。今年度の傾向は、中身よりも外見重視です。中身を吟味する余裕が無いということでしょうか。短期間の離職者が増えないか心配です。
あなたは「働く」上で、どのようなことが自分にとって重要だと感じ
ますか?
出所:2022年度(第33回)新入社員の会社生活調査/学校法人産業能率大学総合研究所
「長期間、安心して働けること」がトップです。「仕事を通じて自分自身が成長すること」は、過去トップに選ばれることが多かったのですが、今年度は約半分と大幅に減っています。「職場のメンバーから求められること」、「自分の意思で仕事に取り組めること」は年々減少しており、今年度も低くなっています。一方、過去から増えた項目は、「仕事内容に見合う報酬が得られること」、「昇進することやリーダーになること」です。会社や働くことに対し、求めることが減っているように見えます。キャリアを意識した会社選びからは、まだ距離がありそうです。
働き始めるにあたって、不安に思っていることは何ですか?
出所:2022年度(第33回)新入社員の会社生活調査/学校法人産業能率大学総合研究所
「上司・先輩とうまくやっていけるか」、「自分の能力で仕事をやっていけるか」が、だんとつのトップです。この二項目は、毎年トップですが、今年度はこれまでで最も高くなっています。一方で、「プライベートの時間を確保できるか」、「心身を壊すことはないか」は、過去に比べ低下しています。新入社員が不安な気持ちになるのは仕方ないことだと思いますが、今年度は特に自信の無さが出ているように感じます。コロナ禍の影響でしょうか。
会社に副業容認制度があった場合、利用したいと思いますか?
出所:2022年度(第33回)新入社員の会社生活調査/学校法人産業能率大学総合研究所
副業への関心は、毎年高まっています。「利用したい」、「どちらかといえば利用したい」を合わせると、今年度80%以上の新入社員が副業に関心を持っています。新しい仕事をこれから始めるタイミングで、これだけの人が副業に関心を持っているという状況は、個人の中での会社の位置づけが軽くなっていると感じます。
働く上で企業に求めるものは何ですか?
出所:2022年度(第33回)新入社員の会社生活調査/学校法人産業能率大学総合研究所
トップ3は、①「長期的な安定性」②「将来の成長性」③「社員への福利厚生の拡充」です。一方で、「社員のチャレンジングな活動への支援」は、これらの項目の約半分となっています。自身のキャリアを考え、会社を選んでいるようには見えません。短期の離職者は避けられないように感じます。
将来のキャリアについてどのように考えていますか?
出所:2022年度(第33回)新入社員の会社生活調査/学校法人産業能率大学総合研究所
「管理職として部下を動かし、部門の業績向上の指揮を執る」が、50%を超えています。一方で、「独立して自分の会社を起ち上げる」は、年々減少しており、今年度は、ここ20年間で最低の数値となっています。国が若者によるスタートアップを推進していますが、新入社員の意識とはギャップがあるようです。コロナ禍で、中小企業の厳しい現実を目の当たりにし、若者がチャレンジすることを避けているのでしょうか。若者が希望を持ってチャレンジしたくなる国にしたいものです。
あなたが最終的に目標とする役職・地位は?
出所:2022年度(第33回)新入社員の会社生活調査/学校法人産業能率大学総合研究所
「社長」は、過去30年で最低の数値です。一方で、「地位には関心がない」も大幅に減っています。出世はしたいが、そこそこで良い、ということでしょうか。ビジネスの楽しさや面白さが、充分に伝えきれていないと感じます。
“人生100年時代”と言われている中で、あなたはいつまで被雇用者
(会社勤めなど)として働きたいと思いますか?
出所:2022年度(第33回)新入社員の会社生活調査/学校法人産業能率大学総合研究所
「60歳(定年)」、「65歳(再雇用)」、「定年なし」を合わせると、約77%となります。定年後の人生までは、まだ考えられないのかもしれません。
年齢や在籍年数に応じて昇進や待遇が決まる年功序列的な人事制度と、業績に応じて決まる成果主義的に人事制度ではどちらを望みますか?
出所:2022年度(第33回)新入社員の会社生活調査/学校法人産業能率大学総合研究所
「成果主義」が50%を超えています。ただ、15年前からそれほど増えておらず、企業現場との意識差を感じます。
“終身雇用制度”を望みますか?
出所:2022年度(第33回)新入社員の会社生活調査/学校法人産業能率大学総合研究所
「望まない」が増加しています。時代の経済環境に、敏感に反応しているように感じます。
まとめ
新入社員の会社生活を見てきました。新入社員は、その時代の環境を敏感に察知し動いている一方、徐々に変化している企業と従業員の関係までは認識できていないようです。新入社員は、企業の安定性や成長性を重視していますが、企業がジョブ型雇用を志向し始め、従業員は自身の専門能力を高め、いかに価値提供できる存在になれるかが問われています。
現在の状況では、新入社員の多くが短期間で離職し、改めて働くことを真剣に考えざるを得なくなる可能性があります。インターンシップが普及してきましたが、もっと大学と産業界が連携し、学生と社会人の間のギャップを減らす努力をしていく必要がありそうです。