人口減少、定年後の寿命の延伸、生産性の低下、賃金の伸び悩みと、働き手を取り巻く環境には、多くの課題があります。こうした課題に対処するために、国をあげてリスキリングが推進されています。
しかし、現在のリスキリングブームは、必ずしも個々の働き手に寄り添ったものではなく、会社都合が優先されている面があります。厚生労働省より、「労働政策審議会労働政策基本部会報告書~変化する時代の多様な働き方に向けて~」が公表されました。
本日は、この中から働き方の方向性について考えます。
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企業が成長していくために
「労働政策審議会労働政策基本部会報告書~変化する時代の多様な働き方に向けて~」では、企業が成長していくために、次の対応が必要と述べています。
- 社会全体で人材に投資を進めていく
- 企業横断的なスキル、新しいスキルに投資する
- 人材の社外流出を恐れ人材投資を躊躇することをしない
- 働き手も企業の人材投資を重視する(人材育成に積極的な企業への転職が加速する)
- 一人ひとりのキャリア志向を大切にし、個人に焦点を当てた人事評価・育成を行う
企業が成長していくためには、社会全体で人材育成に本気で取り組み、企業横断的に活用できるポータブルスキルに投資する必要があるとしています。一人ひとりのキャリアを基に、評価や育成を実施することが求められています。
育った人材の流出を心配するのではなく、優れた人材育成の仕組みをアピールすることで、優秀な人材を集めます。自律的キャリアを志向できている人が対象となりますが、会社人間から急に変われない人もいます。特に中高年層は、キャリア面談を通じ、自己を見つめ直す時間が必要です。
企業が変化に対応するために
「労働政策審議会労働政策基本部会報告書~変化する時代の多様な働き方に向けて~」では、企業が変化に対応するために、次の点が必要と述べています。
- 企業は、変化対応に必要なスキルを考える
- 新たなスキルが必要な場合、働き手にリスキリング促す
- 必要な能力、技術、学ぶことを働き手に提示する
- 働き手は、変化を前向きに捉え、リスキリングを実践する
- リスキリングを通じ、新たな価値が創造できるようにする
- 変化に柔軟に対応できない働き手には、マインドセットの見直しから働きかける
企業が変化に対応するために、必要なスキルを考え、働き手のリスキリングを進めていく必要があるとしています。企業には、なぜ、何を、どこに向って学ぶのかを説明し、必要に応じマインドセットの見直しを働きかけることが求められています。
リスキリングにおいて何を学ぶかは、個々人のキャリア観により異なります。一律の知識の学びを全員に適用することはできません。手間暇はかかりますが、企業には1on1のキャリア面談を通じたかかわりが求められます。
人事制度の課題や方向性
「労働政策審議会労働政策基本部会報告書~変化する時代の多様な働き方に向けて~」では、人事制度の課題や方向性として、次の点に言及しています。
- 求める人材は、主体的に考え、キャリアをつくっていく人
- 中途採用者を迎え入れるための、賃金体系が課題
- 多様性を尊重し、個々の創意工夫を誘発する新しい人材マネジメントの展開が必要
- 人事システムは減点主義になっており、 イノベーションを阻害している
- 新しいスキル取得による能力の向上や挑戦といった意欲も適正に評価・処遇する
- 新しい人事制度で得た専門人材の知見を、どのように経営に反映してくかが課題
- 転職者の研修やメンター制度、適正な人事評価を行うことが重要
- 内部労働市場と外部労働市場を行き来できる、シームレスな労働市場の整備が必要
働き手が主体的にキャリアを考え、常に新しいスキルを身に着け、内部と外部を行き来できる労働環境です。会社は、転職者が活躍できる環境を整え、専門人材の知見を経営に反映していく仕組みを作る必要があるとされています。
目指す姿ではありますが、段階を踏んで進めていく必要がありそうです。社会、会社、大学、個人と全てが少しづつ変わっていくことが求められます。欧米のジョブ型雇用を参考にしつつ、試行錯誤しながら日本に合った仕組みを考えていく必要があります。
企業に求められること
「労働政策審議会労働政策基本部会報告書~変化する時代の多様な働き方に向けて~」では、企業に求められる点として、以下をあげています。
- リスキリングを含め、能力開発に主体的に取り組んでいくための動機付け、環境整備
- 人材投資をコストではなく、非財務価値を高めるという意識
- 一人ひとりに向き合った、きめ細かな部下マネジメント
- 管理職向けのマネジメント研修、管理職の業務負担の軽減
- 働き手一人ひとりのキャリア形成や学びの支援
企業は、働き手一人ひとりのキャリア形成、リスキリングを支援する必要があるとしてます。管理職の業務負荷を減らし、部下に対しきめ細かなマネジメントを実施していくことが求められています。
人の育成に、時間とお金をかけ、企業価値の向上を図るというものです。人材投資と業績向上の好循環が築けるまでは、段階的に、粘り強く実施していくことが求められます。
まとめ
人材投資、リスキリング、生産性など、人材に関わる記事を毎日のように目にします。人材が注目されるのは、30年ぶりと言われます。ただ、今のリスキリングは、とりあえずコンテンツを揃えた、学んだ人は補助する、全員デジタルを学べといったように、必ずしも個々の働き手に寄り添ったものではなく、会社都合が優先されています。本報告書で述べられている意見を改めて記します。
- 社会全体で人材育成に本気で取り組み
- 一人ひとりのキャリアを基に、評価や育成を実施し
- 必要なスキルを考え、働き手のリスキリングを進め
- なぜ、何を、どこに向って学ぶのかを説明し、必要に応じマインドセットの見直し
- 内部と外部を行き来できる労働環境を整備し
- 専門人材の知見を経営に反映していく仕組みをつくり
- 働き手一人ひとりのキャリア形成、リスキリングを支援し
- 部下に対しきめ細かなマネジメントを実施し
- 社会全体で人材育成に本気で取り組む
段階的に、粘り強く。目指すは、「人材投資と業績向上の好循環」です!
(関連ブログ:国のリスキリング推進。問題と効果を上げるために取り組むべきことは)
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