「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について(第一次提言)」令和4年5月10日(教育未来創造会議)が公開されました。現在の課題と具体的な解決策が、分かりやすく述べられています。
人材育成を取り巻く課題
本報告書では、日本の人材育成を取り巻く課題として、以下があげられています。高等教育の発展に関しては、日本はOECD諸国の中でも高い大学進学率を達成していますが、23歳以上の社会人の大学生の比率は、欧米諸国の20~30%に対し2%と極端に低くなっています。
- 高等教育の発展と少子化の進行
- デジタル人材の不足
- グリーン人材の不足
- 高等学校段階の理系離れ
- 諸外国に比べて低い理工系への入学者
- 諸外国に比べ少ない修士・博士号の取得者
- 世帯収入が少ないほど低い大学進学希望者
- 諸外国に比べて低調な人材投資・自己啓発
- 進まないリカレント教育
基本理念
基本理念の最初の一文を以下に抜粋しました。社会と個人の未来は教育にあるとしています。教育という言葉は、上から目線と感じる方もいるかもしれませんが、学び育つ、”育”に着目した理念となっています。
日本の社会と個人の未来は教育にある。教育の在り方を創造することは、教育による未来の個人の幸せ、社会の未来の豊かさの創造につながる。
誰もが、幼少期からその意欲に応じて家庭の経済事情に関わらず学ぶことのできる環境を整備することが重要である。また、高齢になっても意欲があれば社会の支え手として生涯にわたり学び続けることも重要である。生きている限りいつまでも学べる環境を構築していくことが必要であり、働くことと学ぶことのシームレスな連携ができる生涯能力開発社会、生涯学習社会の実現に向けて取り組むなど、教育と社会との接続の多様化・柔軟化を推進する。
在りたい社会像
これからの在りたい姿です。
- 一人一人の多様な幸せと社会全体の豊かさ(ウェルビーイング)の実現
- ジェンダーギャップや貧困など社会的分断の改善
- 社会課題への対応、SDGsへの貢献
- 生産性の向上と産業経済の活性化
- 全世代学習社会の構築
未来を支える人材像
在りたい社会像を達成する上で、必要となる人材像です。理想的にも見えますが、目指すべき目標と捉える方が良いかもしれません。
主体性、創造性、共感力のある多様な人材であり、具体的には、夢を描き、技術を活用しながらそれを形にし、価値創造に繋げられる人材、身近なものから地球規模のものまで様々な社会課題を発見し、横断的な観点から解決していくことのできる人材、文化や美意識等に対する素養を身に付け、エシカルな行動ができる人材、急激な社会環境の変化を受容し、新たな価値を生み出していく精神(アントレプレナーシップ)を備えた人材などが挙げられる。
今後特に重視する人材育成の視点
特に重視する人材育成の視点です。
- 予測不可能な時代に必要な文理の壁を超えた普遍的知識・能力を備えた人材育成
- デジタル、人工知能、グリーン(脱炭素化など)、農業、観光など科学技術や地域振興の成長分野をけん引する高度専門人材の育成
- 現在女子学生の割合が特に少ない理工系などの分野の学問を専攻する女性の増加
- 高い付加価値を生み出す修士・博士人材の増加
- 全ての子供が努力する意思があれば学ぶことができる環境整備
- 一生涯、何度でも学び続ける意識、学びのモチベーションの涵養
- 年齢、性別、地域等にかかわらず誰もが学び活躍できる環境整備
- 幼児期・義務教育段階から企業内までを通じた人材育成・教育への投資の強化
具体的方策
具体策として、大きく3点があげられています。こうした大学側の取り組みに応えるためには、企業側が変わる必要があります。通期採用、ジョブ型雇用および人材投資を確実に導入していくことを期待します。
1.未来を支える人材を育む大学等の機能強化
- 進学者のニーズ等も踏まえた成長分野への大学等の再編促進と産学官連携強化
- 学部・大学院を通じた文理横断教育の推進と卒業後の人材受入れ強化
- 理工系や農学系の分野をはじめとした女性の活躍推進
- グローバル人材の育成・活躍推進
- デジタル技術を駆使したハイブリッド型教育への転換
- 大学法人のガバナンス強化
- 知識と知恵を得る初等中等教育の充実
2.新たな時代に対応する学びの支援の充実
3.学び直し(リカレント教育)を促進するための環境整備
- 学び直し成果の適切な評価
- 学ぶ意欲がある人への支援の充実や環境整備
- 女性の学び直しの支援
- 企業・教育機関・地方公共団体等の連携による体制整備
まとめ
今後の大学と社会の在り方を見てきました。記述されている全てについて、異論をはさむ余地はありません。現状の課題とギャップが大きいため、目標をどのように達成するかが、とても大事です。産業界との同期も取る必要があります。企業が変われば、自ずと大学も変わらざる得なくなります。
国から様々な形で、目指す姿が公表されていますが、一国民としては、発表したものは確実に達成してもらいたいと思います。人口が減ってる中で、国家を維持し発展させる、現実的な議論を期待します。