連合が、「 入社前後のトラブルに関する調査 2022」を 発表しました。 大学卒業後に新卒で正社員として就職した全国の入社 2年目~ 5年目の男女 1,000名 を対象としたものです。結果を基に、若手が会社をどのように見ているか考えていきたいと思います。
目次
会社を選んだ理由トップは、「無期雇用である」
新卒者が、会社を選んだ理由です。
出所:入社前後のトラブルに関する調査 2022(連合)
男性の理由は、多い順に①「無期雇用である」②「やりがいのある仕事」③「業務内容に興味があった」④「社会貢献ができる」⑤「福利厚生が充実している」です。
女性の理由は、同じく多い順に①「無期雇用である」②「業務内容に興味があった」③「やりがいのある仕事」④「福利厚生が充実している」⑤「転勤がない」と続きます。
共通の部分は多いですが、男性のみ上位に入っている理由は「社会貢献ができる」、女性のみ上位に入っているものは「転勤がない」です。両方とも、近年、話題になってきているテーマですが、男性はやりたい事、女性は働き易さを意識しているようにも見えます。
会社の問題トップは、「時間外労働が恒常的である」「仕事に見合わない低賃金である」
新卒で入社した会社に対し、問題と感じている点です。
出所:入社前後のトラブルに関する調査 2022(連合)
トップは、ほぼ同数で「時間外労働が恒常的である」と「仕事に見合わない低賃金である」です。3番目に多い理由は、「精神的に不調になり辞める人が多い」です。
トップ10を見みると、労働時間と賃金が6割を占め、3割が、退職または精神的不調につながるものです。
若手が初めて社会人となった会社において、問題と感じていることは、大きく次の3点です。
- 残業が多く、有給も取得できない
- 労働に対する賃金が低い
- 退職者が多い、特に精神的不調を理由とした退職が多い
生活に直結する現実的なことを問題として感じているようです。
相談相手トップは、家族・友人
仕事の悩みの相談相手に関する質問です。
出所:入社前後のトラブルに関する調査 2022(連合)
相談相手は、家族・友人が圧倒的に多く、約7~8割となっています。勤務先の上司・同僚が、男女の差はありますが、約3割~4割です。その他は、いずれも1割以内となっています。勤務先の相談窓口に相談する割合は非常に低く、女性の場合、SNSより低い数字となっています。
先日、筆者のセルフコーチングの新聞投稿を見たと、ある若者から連絡をいただきました。数年前、精神的にまいった時に相談する場や人がいなくて辛かった、とお話されていました。セルフコーチングのようなことを、ご自身も考えていたとのことです。社会環境の変化に伴い、会社内の人間関係が希薄化する中、会社の枠を超えて、若者が安心して相談できる場が必要かもしれません。
丁寧なかかわりが、離職を防ぐ
指導・アドバイスの有無、労働条件の明示方法の違いごとに見た、入社5年目以内の方の勤続状況です。
出所:入社前後のトラブルに関する調査 2022(連合)
条件ごとの変化を見ると、半年以内の離職率の差は小さいですが、3年以内の離職率については少し差があります。指示・アドバイスがあった場合は、14.6%の離職率ですが、指示・アドバイスがない場合は、24.3%の離職率となっています。
丁寧なかかわりが、離職を防いでいます。基本的なことに思えるかもしれませんが、まずは書面を用いて丁寧に説明し、仕事のやり方についてアドバイスしてあげることが必要のようです。
退職理由トップは、「仕事が自分に合わない」
2016年と2022年の、入社5年目以内の方の退職理由の比較です。
出所:入社前後のトラブルに関する調査 2022(連合)
「人間関係がよくなかった」が約10%減っています。割合は小さいですが、「1つの会社に長く勤務する気がなかったため」が、1.6倍となっています。また、「仕事が自分に合わない」「賃金の条件がよくなかった」「会社の将来性がない」など、他社や他の仕事と比較した視点の理由が増えています。
まとめ
新卒の若者は、やりがい、社会貢献、働き易さなどを考え、会社を選んでいます。一方、入社後、次のような問題を感じています。
- 残業が多く、有給も取得できない
- 労働に対する賃金が低い
- 退職者が多い、特に精神的不調を理由とした退職が多い
こうした問題を会社の上司・同僚に相談するのは、約3~4割です。会社の相談窓口への相談は、1割以下となっており、女性についてはSNSを下回る0.4割という数字です。
入社5年目以内の方の、約3割の方が既に退職しており、会社から丁寧な指導がなかったと感じている方の退職率は、あった方より約10%も高い離職率となっています。
少子化で若者が減っているにもかかわらず、若者に丁寧に指導できていない現状が見えてきます。30年前は、「やれ」の一言で済んでいたものが、今は手本をみせ、やり方を説明し、試してもらい助言する、といったかかわり方が必要です。ある意味、人材育成を真面目に実行しないと、人が定着しない時代になったのかもしれません。
最後に、山本五十六の有名な言葉を記載します。
「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」(山本五十六)