早期退職募集の流れが止まりません。2024年2月時点で23年通年を1割上回り3,600人になりました。2024年3月6日の日経新聞には「24年の早期退職、既に23年超え 構造改革で雇用流動化」の記事が掲載されました。
上場企業の早期退職の募集人数が2024年2月末時点で、23年通年を1割上回り3600人に達したことが分かった。インフレで持続的な賃上げが求められる中、企業は事業収益に合わせて雇用人員を適正化している。資生堂は19年ぶりに大規模な早期退職に動く。対象年齢を定めず若い世代を含めた募集も多く、日本企業で構造改革に伴う雇用流動化が本格化してきた。
出所:日本経済新聞ホームページ
本記事では、会社員を取り巻く状況を俯瞰し、これからのキャリアについて考察します。
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目次
会社員を取り巻く状況
希望・早期退職者募集はとまらない
東京商工リサーチの調査によると、2024年1-2月に「早期・希望退職者」を募集した上場企業は14社(前年同期9社)です。対象人数は3,613人(前年同期595人)と前年同期の6倍に急増し、2023年(3,161人)の年間実績を452人上回りました。
ここ20年のリストラには、2012年のリーマンショック、2012年の電気業界を中心としたリストラ、2020年のコロナ禍と三つの山がありました。2023年に一旦底を打った希望・早期退職者募集が、2024年に再び増加に転じました。最近はセカンドキャリア支援制度と名称を変え実施されています。
出所:2024年1-2月上場企業「早期・希望退職者」実施状況 /東京商工リサーチ
セカンドキャリア支援制度とは
セカンドキャリア支援制度とは、従業員が退職後の新たな職業に進む際に、企業が提供するサポートの仕組みです。具体的には以下のような支援です。
- 学びや開業のための経済的支援:講座の受講費や資格取得費用、事務所の開設費などを支援
- キャリア設計教育研修などによる情報支援:セカンドキャリアの構築に必要な知識やプロセスなどの情報を提供
- 退職準備休暇や短時間勤務による時間的支援:転職や開業に向けた準備期間を提供
- 人材エージェント会社との連携などによる転職支援:転職希望者には従業員の経験や能力に合った再就職先を提案
セカンドキャリア支援制度はキャリアを再設計するための一つの手段です。しかし実質的にはリストラの一形態とも言えます。
40代の賃金は5年間で10%減少
次の表は大卒者の賃金推移です。40、50代の賃金はここ数年、減少傾向にあります。40代は5年間で約10%減っています。2024年3月時点、多くの企業が大幅な賃上げを発表していますが、10%には届きません。
出所:キャリア弱者の競争戦略/間中健介を基に作成
部長に昇進できる人は減少
以下のグラフは1990年から10年ごとにみた管理職の昇進年齢です。全年齢において部長比率が減少し、部長昇進も遅くなっています。
出所:キャリア弱者の競争戦略/間中健介を基に作成
会社員の気持ちは?
第14回 働く人の意識に関する調査/公益財団法人 日本生産性本部によると、「今後の自身の雇用に不安を感じるか」の質問に対し、2024年1月は「かなり不安を感じる」「どちらかと言えば不安を感じる」の合計は、46.7%とやや過半数を下回る数値です。コロナ禍を経て、ここ数年落ち着いていますが、半数弱の方が雇用不安を感じる状況が常態化しています。
出所:第14回 働く人の意識に関する調査/公益財団法人 日本生産性本部
これからのキャリアどう考える?
管理職の90%がプレイングマネジャーと言われる中、中堅会社員は自身の成果を上げながら部下のマネジメントと多忙な毎日を送っています。ただ出世は以前より難しくなっており、賃金も5年前に届かない状況です。ここからは人生100年時代のキャリアの考え方を筆者なりに考察します。
時間はある
人生100年と言われるようになりました。日本人の平均寿命は毎日5時間延びています。確実に100歳まで生きる時代が目の前に迫っています。40年働き60歳で会社を引退しても、あと40年あります。90歳まで働くとしても30年あります。60歳で新しいことを初めてもいっぱしの専門家になれます。
人間は年を経るごとに、流動性知能は減少しますが、結晶性知能は向上します。一定のデジタル知識は必要ですが、対人支援、接客や教育などの分野は、年齢に関係なく能力を向上させ活躍することが可能です。
- 結晶性知能: 経験を通して獲得された一般的知識や問題解決能力、言語能力
- 流動性知能: 文字や図形を使った関係の操作や推理(情報処理)を素早く行う力
やろうと思えば何でもできる
今はオンライン会議、SNS、チャットなど便利なツールだらけです。ココナラなどでは、誰もがいつでも無料でビジネスを開始することができます。副業が可能な会社も増えました。ボランティア組織もたくさんあります。やろうと思えば何でもできる時代です。
厚生労働省より自営型テレワーカーのためのハンドブックが公表されています。自営型テレワークとは次のように定義されます。
自営型テレワークとは、 注文者から委託を受け、情報通信機器を活用して主として自宅又は自宅に準じた自ら選択した場所において、成果物の作成又は役務の提供を行う就労をいいます。
出所:自営型テレワーカーのためのハンドブック/厚生労働省
自営型の良い点は、何と言っても楽しいことです。もちろん仕事なので楽ではありませんが、苦になりません。やればやるだけ自分の価値を高め収入が増えるので、会社員では味わえない充実感があります。テレワークは基本となりますので、初期費用がかからず、どこでも自由に働くことができます。
まずは自分と向き合おう
ここまで読まれ「何か始めたいけど、どうすればいいんだ?」と思われた方も多いのではないでしょうか。ありきたりと感じるかもしれませんが、最初にやるべきは自分と向き合うことです。
まずは自分に向き合うことが最も大切
①自分と向き合うとは
自分と向き合うとは、自分の心の声を感じとることです。その方法が内省です。内省とは自分の心や思考、感情、行動などを観察し、理解することです。内省により自分の強みや弱み、価値観や目標、動機や感情などを特定にすることができます。
とは言え慣れないと、なかなか実践は難しいです。内省は、集中力、想像力、記憶力、やる気など脳のエネルギーを大量に使います。まず睡眠、食事、運動などで体調を整えることが大切です。気持ちの安定も必要ですので、「この瞬間は何となく落ち着くな」という場とタイミングを見つけます。ここまできて内省が可能となります。
- 体調を整える
- 気持ちが落ち着く場所・時間を見つける
- 内省する(思考を書く→事実を書く→思考を書くの繰り返し)
内省する場合は、紙と鉛筆を用意しましょう。紙に書く方がパソコンよりも思考し易いです。最初は頭に浮かんだ思考をそのまま書き出します。思考を書く→事実を書く→思考を書くの繰り返します。次第に自分の考えていることが鮮明になってきます。
内省を詳しく知りたい!
②自分が居心地の良い状態を知る
自分と向き合う習慣がついたら、自分が居心地の良い状態を知ることです。自分の価値観を知るとも言えます。価値観を知るにはキャリアアンカーがお勧めです。キャリアアンカーとは、キャリアに関わる難しい選択を迫られたとき、どうしても譲れない大切なものです。アメリカの心理学者エドガー H. シャインが提唱した理論です。
キャリア・アンカーは、次の8種類のカテゴリーから構成されます。
出所:キャリア・マネジメントー変わり続ける仕事とキャリアー/エドガー H. シャイン、ジョン・ヴァン=マーネンを基に作成
- 専門・職能別能力:専門家であることに満足感を得る
- 経営管理能力:経営管理そのものに関心をもつ
- 自律・独立:自分のやり方を重視する
- 保障・安定:安全、安心を最優先する
- 起業家的創造性:新しいベンチャー事業を興す欲求をもつ
- 奉仕・社会貢献:世の中に貢献したい欲求をもつ
- 純粋な挑戦:手ごわい相手に勝つ欲求をもつ
- 生活様式:生活を重視し仕事とバランスをとる
キャリアアンカーは、次のような質問に答えることで見つけられます。例えば下記の1~8の中から最も当てはまるものを選んでください。簡易な質問ですが、おおよその自分のキャリアアンカーを把握できます。
# | 質問 | カテゴリー |
---|---|---|
1 | 自由と自律より、保障と安定のほうが私にとっては大切だ | 保障・安定 |
2 | 私が自分のキャリアで成功を実感できるのは、社会全般の福祉のために真に貢献できたときだ | 奉仕・社会貢献 |
3 | 私にとっては、個人的関心や家族の問題のために能力を十分に発揮できない仕事に妥協して就くくらいなら、組織を去るほうがましだ | 生活様式 |
4 | 私は、困難な問題の解決に、いつまでも挑戦し続けることができるキャリアが夢だ | 純粋な挑戦 |
5 | 私は、自分で会社を興すための土台となりそうなアイディアを、いつも注意して探している | 起業家的創造性 |
6 | 私は、自分のやり方や自分のスケジュールで仕事ができる自由なキャリアが夢だ | 自律・独立 |
7 | 私は、周りの人がいつも自分に専門家としてのアドバイスを求めてくるくらい、現在手がけていることについて得意でありたいと思う | 専門・職能別能力 |
8 | 私は仕事で一番満足できるのは、1つの活動に向けて多くの人の努力を結集できたときだ | 経営管理能力 |
③縁を大切にしながら毎日10分メタ思考
自分はこうなりたいと思っても、現実の世界ではなかなか思うようにはいきません。そんな中、往々にして予期しないの出会いや機会があります。こうした縁は、思わぬチャンスにつながることがあります。好奇心を持ち、たくさんの縁をつくり、縁を喜んで受け入れ、次につなげていく意識が大切です。教育心理学者のクルンボルツは、次のように述べています。
未来は予測できないことだらけなので、将来この仕事に就くというような計画は絶対視すべきではない。偶然の出来事は、人のキャリアに大きな影響を及ぼし、かつ望ましいものである。偶然の重要性を認識し、利用し、積極的に生み出す必要がある。
目の前の仕事や生活を精一杯生きながらも、毎日10分間、次のようなメタ思考で考える時間をとることも大切です。視野が拡がり、先を見据えた動きをとることができます。気持ちも安定し、自分の行動やキャリアに自信が持てるようになります。
鳥になったつもりで、上空から社会という大きな広場に立っている自分を眺め、自分に対し問いかける
- 人生これでいいのか?
- 人生で求められていることはなにか?
- 人生、他にやるべきことはないか?
やりたいことの見つけ方をもっと知りたい!
まとめ
本記事では、会社員を取り巻く状況を俯瞰し、これからのキャリアについて考察しました。会社員を取り巻く状況は、厳しさを増しています。人生100年時代になり、定年後も定年前と同じぐらいの期間働くことが現実になってきました。自ずと会社員だけでは人生を全うできません。一方で引退後、多くの時間があり、誰もがビジネスをスタートできる環境になりました。
人生100年時代のキャリアに正解はありません。目の前の仕事に打ち込みながらも、自分を振り返る時間をつくり、これでいいのかと確認したり微調整したりしながら前に進んでいくことで、自分が納得できるキャリアを歩むことができるのではないでしょうか。
- 目の前の仕事に一生懸命に取り組む
- 内省する習慣をつける
- 自分の価値観を知る
- 縁を大切にする
- 毎日メタ思考の時間をとる
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