- 職場で孤独感にさいなまれる
- 同僚と一緒にいても孤独を感じる
- 孤独感を何とかしたい
本記事は、こんな悩みや疑問を解決します。
『人々のつながりに関する基礎調査(令和5年) 調査結果の概要/令和6年3月 内閣官房孤独・孤立対策担当室』において、仕事別の孤独感がまとめられています。正社員で孤独感を感じている人は、「常にある」と「時々ある」を足すと52.8%です。
出所:「人々のつながりに関する基礎調査(令和5年) 調査結果の概要/令和6年3月 内閣官房孤独・孤立対策担当室」
本記事では、職場の孤独の現状、職場で孤独を感じる原因、孤独から抜け出す方法について解説します。

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目次
職場の孤独の現状

職場で孤独を感じる人が増えています。1日の約1/3の時間を費やす職場での孤独感は、人生の幸福感に大きな影響を与えます。ギャラップ社の『State of the Global Workplace 2024』によると、世界中の従業員の20%が日常的に孤独を感じています。
出所:GALLUPホームページ
『人が集まる意味を問いなおす2023年3月調査報告書/リクルートワークス研究所』では、リモートワークで働く人と対面で働く人の孤独感を調査しています。「自分が仕事を休んでも誰も困らないと感じることがあった」と「自分には人とのつきあいがないと感じる」の結果は次のようになっています。
- 週の半分以上をリモートワークで働く人
- 自分が仕事を休んでも誰も困らないと感じることがあった・・・43.2%
- 自分には人とのつきあいがないと感じる・・・44.2%
- 週の半分以上を対面で働く人
- 自分が仕事を休んでも誰も困らないと感じることがあった・・・41.0%
- 自分には人とのつきあいがないと感じる・・・36.3%
対面で働く機会が多い場合、孤独感は多少減りますが、なくなるわけではないことが分ります。物理的につながっていても、心は寂しく孤独を感じているようです。
出所:人が集まる意味を問いなおす2023年3月調査報告書/リクルートワークス研究所
職場で孤独を感じる原因

筆者の考える、孤独感を引き起こす主な原因です。
都市集中やSNSの普及
『NHK「100分 de 名著」ブックス 三木清人生論ノート~孤独は知性である/岸見一郎』では、孤独について次のように述べています。孤独は大勢の人の中にあります。山中の隠遁生活ではなく、にぎやかな都市生活にこそあります。
孤独という言葉から、何を連想するでしょうか。人里離れた場所、山中の暗闇、あるいは取り残されて一人ぼっちになった時の感傷ー。しかし三木は、大勢の人の中にこそ孤独はあると語ります。
孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのではなく、大勢の人間の「間」にあるのである。孤独は「間」にあるものとして空間の如きものである。
*太字は筆者
出所:NHK「100分 de 名著」ブックス 三木清人生論ノート~孤独は知性である/岸見一郎
日本は東京一極集中が進んでいます。世界的にも都市化が進み、人が孤独感を感じやすくなっています。SNSの普及も、バーチャルな世界に人が集まる場を作り出し、孤独感を生みやすくなっています。

伊集院
筆者は40年前に上京してきました。初めて新宿に行った時のことを今でも覚えています。光り輝く街、大勢の人、騒がしい広告音、「目がまわる」を実感しました。同時に、ポツンと一人を感じたことを覚えています。
競争社会で狭まる視野
同書では、また孤独について次のように述べています。人は孤独でいられないため周りの評価を気にします。
「すべての人間の悪は孤独であることができないところから生ずる」。孤独でいられないから、周囲の目や評価を気にしたり、他の人よりも優位に立って衆目を集めようとしたりする。そんな気持ちから作られるフィクション(人生)は虚栄です。
*太字は筆者
出所:NHK「100分 de 名著」ブックス 三木清人生論ノート~孤独は知性である/岸見一郎
強欲資本主義、グローバリゼーション、競争社会、格差社会、自己責任社会、こうした言葉で表される時代が続いてきました。日本も、早期退職制度や転職があたり前となりました。働き手は常に評価される立場にあり、評価されなくなったら人生終わりのような感があります。厳しい競争社会が視野を狭め、承認欲求を強めています。
周りに流され自分を見いだせない
有名店だから美味しい、人気の観光地だからいいとこだ、評価が高いからいい物だ、こうした経験は誰しもあるのではないでしょうか。みんなと同じだと安心できるが、同じでないと不安を感じます。同書では、こうした感情を客観から生まれたものとしています。
孤独は感情ではなく知性に属するものでなければならぬ。
感情は主観的なもの、知性は客観的なものだと考えるのが普通でしょう。しかし、それは間違いだと三木はいいます。感情は「社会化された」ものです。純粋な自分の思い(主観)というよりも、皆がそう感じているようだからという客観から醸成されていることが多いのです。皆が美味しいといえば何となく美味しく感じたり、これが流行っているといわれれば、いいもののように思えてきたりするのは、感情が社会化されている証左です。これに対し、社会やその場の空気に左右されない知性こそ「主観的なもの、人格的なもの」であり、「真に主観的な感情は知性的である」と三木はいいます。
*太字は筆者
出所:NHK「100分 de 名著」ブックス 三木清人生論ノート~孤独は知性である/岸見一郎
周りと同じ状況にないと孤独感を感じる人は、孤独を感情からとらえている人です。周りに流され、自分を見いだせなくなっています。
孤独から抜け出す方法

孤独から抜け出す方法を紹介します。そもそも孤独を感じないマインドになる方法と職場で交流を増やす方法です。
孤独を感じないマインドになる
前章にて、孤独は現代の社会環境が生み出している面があると書きました。ただ多くの人は環境を変えられないので、自分を変えるしかありません。『NHK「100分 de 名著」ブックス 三木清人生論ノート~孤独は知性である/岸見一郎』では、次のように述べています。
人が「自分は孤独だ」と語る時、それが周囲に認められたい、注目されたいという社会化された気持ちからくるものであれば、それは「寂しい」という孤独感です。しかし、私は一人であるという自覚に基づいた意識であれば、それはむしろ知性に属する。そこに顕れるのは寂しさではなく勇気、覚悟です。
*太字は筆者
出所:NHK「100分 de 名著」ブックス 三木清人生論ノート~孤独は知性である/岸見一郎
私は一人であると自覚することで、勇気と覚悟を持てるようになるとしています。『つながらない覚悟/岸見一郎』では、次のように述べています。
■孤立はしても孤独になることはない
これはおかしいのではないかという判断をした人は、職場で孤立するかもしれない。しかし、孤立することになっても、孤独にはならない。アドラーの言葉を使うと、支持する「仲間」がいるからである。この「仲間」というのはドイツ語ではMitmenschen´人と人が結びついているということである。そのような状態にあることをアドラーはMitmenschlichkeit´「人と人が結びついている状態」「共同体感覚」といっていることは前に見た。人は一人では生きていけない。他の人が自分の敵ではなくて、必要があれば自分を援助してくれる人だと思えることが、アドラーのいう「共同体感覚」である。
まわりは自分を不利な目に遭わせる自分とは対立する敵ばかりだと思ってしまうと、他者に貢献しようとは思えない。貢献感を持てればこそ自分に価値があると思え、対人関係の中に入っていこうと思える。幸福も生きる喜びも対人関係の中でしか感じることはできないのである。
*太字は筆者
出所:つながらない覚悟/岸見一郎
他の人は自分の敵ではなく仲間だと思うことで、「共同体感覚」を持てるとしています。この感覚持つことが、貢献しようと思う気持ちを生み、対人関係に入っていくことができます。さらに同書では、次のように述べています。
先にも見たが、孤立することになっても孤独にならないのは、人類との連帯は決して解かれることはないからである。自分は決して一人ではなく、他者とのつながりの中で生きていると思える人は勇気を持てる。この勇気は、今の話の流れでは他者にノーといえる勇気であるが、人とのつながりの中に生きている、しかも理性と良心を持った人とつながっていると思えるには勇気が必要である。
*太字は筆者
出所:つながらない覚悟/岸見一郎
自分は一人ではなく他者とのつながりの中で生きている、こう覚悟することで勇気が生まれ、ついには幸せになるということです。以下が、孤独にならないマインドになる方法です。
孤独にならないマインドになる方法
どんな時も、
「自分は一人でなく、理性と良心を持った、他者とのつながりの中で生きている」
と信じる
職場で交流を増やす方法
マインドを変えながら、小さな行動も始めます。職場で交流を増やす方法です。
方法 | 説明 |
---|---|
自己開示 | 自分の思いや感情を適切に他者に伝えることで、信頼関係を築きやすくなります。休憩時間に趣味や週末の出来事を共有することで、相手との距離が縮まる可能性があります。 |
小さな交流 | 日常的な挨拶やちょっとした雑談から始めます。小さなやりとりが、職場での安心感や親近感を生むきっかけになります。職場でのランチやオンラインの雑談会など、交流の場を積極的に活用することも有効です。 |
相手の立場 | 共感力を高めることで、他者との関係を円滑にすることができます。同僚が忙しそうであれば「手伝えることがある?」と声をかけるだけで、関係性が良好になります。 |
共通の話題 | 共通の趣味や話題を持つことで、職場以外の文脈でもつながりを感じることができます。同僚との間で興味を共有することで、自然と会話が生まれ、関係が深まる可能性があります。 |
まとめ
本記事では、職場の孤独の現状、職場で孤独を感じる原因、孤独から抜け出す方法について解説しました。世界中の従業員の20%が日常的に孤独を感じています。日本国内の調査では、対面を通じて物理的につながっていても孤独を感じる人は一定いることが分っています。
孤独は、都市集中やSNSの普及、競争社会で狭まる視野、周りに流され自分を見いだせない、といった社会環境から生み出されている面があります。一方で、孤独は自身の捉え方の面もあります。次のように思い続けることで、孤独感を感じないマインドが醸成されます。
- どんな時も、「自分は一人でなく、理性と良心を持った他者とのつながりの中で生きている」と信じる
職場は一日の大半を過ごす場所です。他者とのつながりを意識し、孤独を解消することで、より充実した職場生活を送れることを願います。
参考文献
- NHK「100分 de 名著」ブックス 三木清人生論ノート~孤独は知性である/岸見一郎/2021年4月25日/NHK出版
- つながらない覚悟/岸見一郎/2023年12月28日/株式会社PHP研究所

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