やりたい仕事が分からない場合は、目の前の仕事に全力を尽くし、内省する習慣を身につけることが有効です。
「やりたい仕事が分からない」という声を、20代~60代まで幅広い年齢層の方から聞くことがあります。多くの人が、就職や転職においてやりたい仕事を意識します。しかし、しばらく仕事をすると「何か違う」と感じはじめ、モヤモヤを抱えながら続けることになります。
本記事では、やりたい仕事が分からない場合の見つけ方を解説します。
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目次
やりたい仕事が分からない人は多い
内閣府の就労等に関する若者の意識調査によると、仕事を選択する際に重要視する観点として、「自分のやりたいことができること」が88.5%(とても重要42.3+まあ重要46.2)と、最も高くなっています。
出所:特集就労等に関する若者の意識/内閣府
一方で「やりたい仕事が分からない」という声を、20代~60代まで幅広い年齢層の方から聞くことがあります。最近私の周りからも次のような話を聞きました。
ある20代の会社員
新卒でIT会社に就職し、2年前にコンサルティング会社に転職。ITの知見が活かせると考え転職したものの、文章作成の仕事が多く、自分には向かないかなと思い始めている。もう少し働いたら転職しようかと考えている。
ある50代の会社員
新卒で金融機関に入ったが、仕事に馴染めず3年で転職。その後公益法人や企業の秘書業務を経験し、現在5社目の会社で調査業務に携わっている。社会人経験は約37年になるが、今でもやりたい仕事が分からない。
若者だけでなく、長く働いてきた中高年でも「やりたい仕事が分からない」という人が大勢います。キャリア教育をしっかり受け入社した若者、何となく印象で就職先を決め入社した中高年、どちらもやりたい仕事が分からない状況に陥っています。
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やりたい仕事が分からない原因
若者が「やりたい仕事が分からない」原因は、経験不足です。一方、経験豊富な中高年が「やりたい仕事が分からない」原因は、思考の固定化です。
若者は仕事に本気で取り組む経験の不足
若者は仕事に本気で取り組む経験が不足しているため、やりたい仕事が分からないのです。経験が少ないうちは、やりたい仕事は見えてきません。自己分析するにしても、元になるのはこれまでの自分自身の経験です。経験が少ない中での自己分析には、限界があります。
最近の新入社員は、3年以内で3割辞めると言われます。短いとはいえ一定期間経験の上、これは違うと判断し辞めているので、否定はできませんが、与えられた仕事に本気で取り組んで判断したのかは疑問が残ります。
筆者は33年前、新卒で入社した会社を一年で退職しました。第二新卒という言葉もない時代でしたので、無謀な行動でした。辞めた理由は何となく違うだったかと思います。どうしようもない若者ですね。今振り返ると「自分はじっくり考える仕事が性にあってそうだけど、この職場は違うな」ということをボンヤリ考えていた気がします。与えられた仕事に本気で取り組んで判断できていませんでした。。。(-_-;)
退職しようか迷い始めた
中高年は思考が固定化
一般的に中高年は固定観念が染みつき、自分の見えない世界について考えなくなります。不満足でも現状の世界で長い間暮すうちに、他の選択肢より現状の方が良いと思い込み、自分の見えていない世界を考えなくなります。
人は現状維持を好みます。これを現状維持バイアスと呼び、人がこれまでの状況を維持しようとする特性です。人は変化することのリスクを過大に、現状のままいるリスクを過小に評価する傾向があります。詳しくは以下のブログをご覧ください。
現状維持バイアスを排除するには、自分の見えない領域も思考する内省が必要です。しかし、内省は面倒で、認めたくない価値観に気づく怖さもあり、人は無意識に内省を避けてしまいます。内省は脳のエネルギーを相当使うことも理由の一つです。人間はできるだけ楽に効率的に生きようとする性質があります。脳の体積は身体全体の2%ですが、20%のエネルギーを消費すると言われます。
筆者は、2年前に会社を退職し、コーチングの会社を起ち上げました。50歳ぐらいから定年後の過ごし方をいろいろ考え始めました。特段の趣味もない自分は働き続けるのが良いと思い、何ができるだろうと時間ができるといつも考えていました。いろいろ考えた末、54歳になり子供も手がかからなくなったので、会社を辞め独立しました。
やりたい仕事の見つけ方
若手は目の前の仕事に全力をつくす
やりたい仕事、好きな仕事、向いてる仕事というのは、経験する前から分かるものではありません。何かの縁で就いた仕事に全力で打ち込むことで、仕事に愛着がわき、得意になり、やりたい仕事になっていくものです。適性は考えて見つかるものではなく、試行錯誤の経験を通じて分かるものです。
やりたい仕事が分かるには、次の取り組みが必要です。1~5までを経験して初めて、6でやりたい仕事を考えることができます。1~5が多ければ多いほど、やりたい仕事の候補が増えます。
- 目の前の仕事に全力をつくす
- つまらない時は好きと思い込む
- 上手くいかない時は気持ちを切り替え再びトライ
- 何とかできるようになる
- 続けるうちに本当に好きになる
- 内省・キャリアコンサルティング・体験を通じてやりたい仕事を考える
最も大事なのは、1. 目の前の仕事に全力をつくすことです。何ごとも、頭で考えてるだけでなく、やってみないと分かりません。このサイクルができることを増やし、成長を実感でき、さらにサイクルが回るという好循環につながります。
3. 上手くいかない時は気持ちを切り替え再びトライするには、不安・焦り・怒りなどネガティブな感情を上手くコントロールして行動に移す必要があります。弊社のじぶんコーチングプログラムを受講することで、実践が可能となります。
教育心理学者のクルンボルツは、次のように述べています。
「未来は予測できないことだらけなので、将来この仕事に就くというような計画は絶対視すべきではない。偶然の出来事は、人のキャリアに大きな影響を及ぼし、かつ望ましいものである。偶然の重要性を認識し、利用し、積極的に生み出す必要がある。」
クルンボルツは、当初決めた計画に縛られず、人生で出会う偶然の出来事の大切さを伝えています。さらに、偶然の出来事をチャンスに変えるために、次の5つのスキルが必要と述べています。
項目 | 説明 |
---|---|
好奇心 | 新しい学びの機会を模索せよ! |
持続性 | 失敗に負けずに努力し続けよ! |
柔軟性 | 姿勢や状況を変えよ! |
楽観性 | 新しい機会は必ずやってきて、それを自分のものにすることができると考えよ! |
リスクテーキング | 結果がどうなるか見えない場合でも、行動を起こせ! |
社会に出ると、計画どおり進むことはまずありません。偶然の出来事にチャンスが潜んでいます。特に若手の方には、次のような意識で仕事に向き合うことをお勧めします。
- 頼まれた仕事はどんな仕事でも断らずやってみる
- 定型的な仕事は違うやり方を工夫してみる
- 他の部門の人ともたまには会話してみる
- 職場以外の人とも付き合う
- いつも出ないような会にも出席してみる
キャリアに悩まれている方は、以下のブログをご覧ください。
中高年は内省する習慣を身に着ける
多くの仕事を経験してきたにもかかわらず、やりたい仕事が分からない場合は、深く内省する習慣をつけることです。人は、内省により次のような成果を得ることができます。
- 過去を振り返ることで、忘れていた自分を再発見する
- 自己を分析することで、自分の価値観を知る
- 現状と変化した姿を分析することで、未来の選択肢が拡がる
とは言え内省に慣れていないと、なかなか実践は難しいものがあります。内省は、集中力、想像力、記憶力、やる気など脳のエネルギーを大量に使います。まず睡眠、食事、運動などで体調を整えることが大切です。気持ちの安定も必要ですので、「この瞬間は何となく落ち着くな」という場とタイミングを見つけます。ここまできて内省が可能となります。
- 体調を整える
- 気持ちが落ち着く場所・時間を見つける
- 内省する(思考を書く→事実を書く→思考を書くの繰り返し)
内省する場合は、紙と鉛筆を用意します。私の経験から、紙に書く方がパソコンよりも思考し易いと感じます。最初は頭に浮かんだ思考をそのまま書き出します。「仕事めんどくさいなー」などです。その後、「毎日9:00に通勤」「仕事は少ない」「給与はXX万」など仕事を取り巻く事実を書いていきます。さらに新たな思考が出てきた場合、また書き出します。この繰り返しです。
内省を続けると「おっ自分はこんなことを考えていたのか」「これは考え過ぎだな」など、自分の思考に対し気づきがあります。次第に自分自身を客観的に見れるようになってきます。内省に慣れてきたら、観点集やチェックリストを使い、目的ごとに内省してみましょう。
過去を振り返ることで、忘れていた自分を再発見する
過去を振り返ることで、「そういえばそんなことやったな」「あの時はがんばったな」「あの人にお世話になったな」などと忘れていた記憶がよみがえり、自分を再発見できます。過去を振り返る場合は、次のような質問を自分に投げかけてみます。
- これまでの人生において重要だけどあまり人に話してこなかった出来事は?
- 成長する過程であこがれた人は誰?その人のどんなところに憧れた?
- 定期的に読んだり見たりする雑誌、テレビ番組やウェブサイトは?それはどのようなもの?どのようなところが好き?
- お気に入りの本または映画は何?その好きな内容は?
- お気に入りの格言またはモットー、好きな言葉は?
- 人生最初の記憶は?
中高年リバイバルコーチングでは、オリジナルノートを基に過去を振り返ることで、自分を再発見することができます。
自己を分析することで、自分の価値観を知る
キャリアに関わる難しい選択を迫られたとき、どうしても譲れない大切なものをキャリアアンカーと呼びます。アメリカの心理学者エドガー H. シャインが提唱した、キャリア・アンカーの理論です。
キャリア・アンカーとは、意にそぐわないキャリアの選択を迫られた場合でも、諦めきれない動機や価値観です。8種類のキャリア・アンカーのカテゴリーが提唱されています。
項目 | 説明 |
---|---|
専門・職能別能力 | 専門家であることに満足感を得る |
経営管理能力 | 経営管理そのものに関心をもつ |
自律・独立 | 自分のやり方を重視する |
保障・安定 | 安全、安心を最優先する |
起業家的創造性 | 新しいベンチャー事業を興す欲求をもつ |
奉仕・社会貢献 | 世の中に貢献したい欲求をもつ |
純粋な挑戦 | 手ごわい相手に勝つ欲求をもつ |
生活様式 | 生活を重視し仕事とバランスをとる |
キャリアアンカーは、次のような質問に答えることで見つけていきます。
- どんな仕事をしているときに充実感が得られるか?
- 時間が経つのも忘れるくらいに没頭した仕事は何だったか?
- 仕事や職場に関して、とくに嫌だと感じるのは、どういうことか?
試しに、私のキャリアアンカーをチェックしてみました。40の質問に回答することで導きだしています。自律・独立がやたらと高い結果になりました。
現状と変化した姿を分析することで、未来の選択肢が拡がる
現状維持バイアスの仕組みを理解し、現状と変化した姿を分析します。現状維持バイアスとは、人がこれまでの状況を維持しようとする特性です。人は変化することのリスクを過大に、現状のままいるリスクを過小に評価する傾向があります。
現状維持バイアスは、転職のように大きな環境の変化を伴うときに現れます。転職した場合の利益が、転職しなかった場合の利益を上回った場合、転職が最適な選択肢になります。しかし、多くの人は、メリットやデメリットを客観的に比較せず、何となく転職しないほうがいいかなと思い、機会を逃すことになります。
現状と変化した姿を、次の手順で確認します。詳しくは、以下のブログをご覧ください。
- 現状維持した場合の未来を考える
- 変化した場合の未来を考える
- メリット・デメリットを分析する
現状維持バイアスをできるだけ排除するには、常に「人は現状維持を高く評価する。自分の判断が全てではない。間違っていることもある。もっといい方法や選択しがあるに違いない。」という気持ちを持つことです。次のような簡単なことから、いつもと違うことを試してみるのをお勧めします。
- 新しい店を開拓する
- 話したことがない人と話す
- いつもは着ない服を買う
- 初めての駅で降りる
- 初めてのイベントに参加する
- 初めての道を歩く
- 初めてのルートで通勤する
- 楽器など新しいことを始める
上司のかかわり方
上司は部下とのキャリア面談において、部下から「やりたい仕事がわからない」「今の仕事はやりたいことではない」と言われることがあります。この場合、目の前の仕事に全力で取り組み、様々な経験を経てはじめてやりたい仕事が見えてくるものだということを伝えます。
多くの方は、仕事がつまらない壁、うまくできない壁にぶち当たっています。出来事は意味づけにより結果が変わると言われます。仕事に対しつまらいと思うのではなく、「この仕事を続けることで〇〇〇が達成できる」と意味づけるのです。全ての仕事には大きな目標があります。目標を意識し、「この仕事が好きだ」と思い込むよう促します。
うまくできない壁は、数回うまくいかないだけで、「自分にはできない」と思い込んでいる可能性があります。部下に具体的にうまくいかなかった体験を話してもらいます。問いかけることで、2,3回うまくいかないだけで結論を出していることに気づいてもらいます。
まとめ
「やりたい仕事が分からない」という声を、20代~60代まで幅広い年齢層の方から聞くことがあります。多くの人が、就職や転職においてやりた仕事を意識します。しかし、多くの人は、やりたい仕事かなと思いながら新しい仕事に就きますが、「何か違う」と感じながら仕事をしています。
やりたい仕事がわからない場合は、次の対応が有効です。
- 若手の場合: 目の前の仕事に全力を尽くす
- 中高年の場合:内省する習慣を身に着ける
最初にやりたい仕事があるわけではなく、経験を積み自分に向き合うことで、ボンヤリと見えてくるものです。多くの方がやりたい仕事に巡り合えることを切に願います。
仕事が遅いと悩んでいる
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