労働政策研究・研修機構(JILPT)が、「企業のキャリア形成支援施策導入における現状と課題」を公開しました。本報告より、キャリア相談に関する主な調査結果を見ていきます。
実質的にキャリア相談が浸透している企業は、全体の約2.4%です。キャリアコンサルタントなどキャリア相談を提供する側も、もっと効果を経営者が分かる形で発信する必要がありそうです。
目次
キャリア相談の仕組みのある企業は、5社に1社
キャリア相談の仕組みがある企業は、正社員向けが20.3%、正社員以外向けが11.0%です。キャリア相談の仕組みのある企業は、5社に1社と、まだまだ少ない状況です。
出所:労働政策研究報告書No.223 企業のキャリア形成支援施策導入における現状と課題/労働政策研究・研修機構
キャリア相談を受ける組織は、63.8%が自社内の人事部門
キャリア相談を受ける組織は、自社内の人事部門が63.8%でトップです。これは、キャリア支援専門の部署ではありません。
出所:労働政策研究報告書No.223 企業のキャリア形成支援施策導入における現状と課題/労働政策研究・研修機構
実施タイミングは、従業員から求めがあった時
キャリア相談のタイミングは、「従業員から求めがあった時に実施する」が、70%でトップです。
出所:労働政策研究報告書No.223 企業のキャリア形成支援施策導入における現状と課題/労働政策研究・研修機構
効果は、意欲の高まり、自己啓発の促進
キャリア相談の最大の効果は、「労働者の仕事への意欲が高まった」「自己啓発する労働者が増えた」です。キャリアコンサルティング経験者は、明らかに自律的なキャリア、さらには人生を歩んでいる方が多いという結果も出ています。(関連ブログ:キャリアコンサルティングの効用)
出所:労働政策研究報告書No.223 企業のキャリア形成支援施策導入における現状と課題/労働政策研究・研修機構
問題点は、時間の確保、人材育成、少ない相談
キャリア相談の問題点は、「労働者がキャリアに関する相談をする時間を確保することが難しい」「キャリアコンサルタント等相談を受ける人材を内部で育成することが難しい」「労働者からのキャリアに関する相談件数が少ない」が、最も多くなっています。
出所:労働政策研究報告書No.223 企業のキャリア形成支援施策導入における現状と課題/労働政策研究・研修機構
考察
調査結果から言えることは、以下のとおりです。
- 正社員向けキャリア相談の仕組みがある企業は、約20%
- その内の約60%が、キャリア支援専門でない人事部(約40%がキャリア支援専門の体制と言える)
以上から、企業の約8%が、キャリア支援の専門員を有しており、キャリア相談の体制が存在していると言えます。
- 相談は、企業の約70%が従業員から求めが合った時に実施(約30%は定期的または何らかのイベントに合わせ実施)
キャリア相談は、多くの従業員が未経験であり、自ら求めて相談することには高い壁があります。したがって、キャリア相談の体制が存在している企業8%の30%、約2.4%のみが、実質的にキャリア相談が企業に浸透していると言えます。
キャリア相談の最大の効果は、次の2点です。
- 労働者の仕事への意欲が高まった
- 自己啓発する労働者が増えた
労働者の意欲が高まり、自己啓発が進んでいます。この結果、仕事のパフォーマンスの向上が期待できます。
キャリア相談の問題点は、次の3点です。
- 労働者がキャリアに関する相談をする時間を確保することが難しい
- キャリアコンサルタント等相談を受ける人材を内部で育成することが難しい
- 労働者からのキャリアに関する相談件数が少ない
問題点は、相談時間の確保、相談者の育成に加え、そもそも相談件数が少ないことです。相談時間は長くて60分です。時間が確保できないのが本当の問題なのか、疑問が残ります。相談件数の少なさは、労働者が相談し易い体制ではないためとも推測できます。相談者の育成は、簡単ではありませんが、採用や委託により対応可能です。こうして見てくると、キャリア相談が拡がらない理由は、別にあるように思えてきます。
キャリア相談の効果として、仕事の意欲が高まり、自己啓発する人が増えています。この結果、労働者のパフォーマンス向上や生産性向上、さらには企業業績への貢献が期待できます。しかし、効果を経営者が分かる形では示せていません。
キャリア相談の企業における浸透状況を見てきました。実質的にキャリア相談が浸透している企業は、約2.4%です。キャリアコンサルタントなどキャリア相談を提供する側も、もっと効果を分かりやすく発信する必要がありそうです。
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