労働政策研究・研修機構が、2021年11月に発表した「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(労働者調査)」から、仕事環境の変化を見ていきます。2020年と2016年の現状に対する評価を比較します。本調査は、18~65歳までの働く男女10,000人を対象としています。
目次
50歳代は、5年前に比べ、収入の満足度が低下
人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(労働者調査)/独立行政法人 労働政策研究・研修機構
2020年と2016年の年齢別の収入満足度です。「満足している」および「ある程度満足している」を合計し、年齢別の変化を見ます。
18-29歳、30歳代および60歳以上の年代は、2016年より2020年の満足度が高くなっています。50歳代は、満足度が低下しています。2016年は、60歳代以上を除き、年齢が上がるにつれ、収入の満足度は上昇しています。2020年は、30歳代に上がり、40歳代、50歳代は下がっています。
年功序列の給与体系が崩れ、活躍している年代に多くの給与を支払う企業が増えてきているのでしょうか。
40代を除き、全ての年代で、働きがいの満足度が低下
人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(労働者調査)/独立行政法人 労働政策研究・研修機構
2020年と2016年の年齢別の働きがい満足度です。「満足している」および「ある程度満足している」を合計し、年齢別の変化を見ます。
40歳代を除き、全ての年代で満足度の比率が低下しています。40歳代に満足度が最低になり、その後上昇する傾向は、大きく変わりません。全年代において、満足度が低下しています。18-29歳および30歳代の若手の満足度が、低下しています。
会社員として働きがいを実感するのが、難しくなってきているのでしょうか。18-29歳および30歳代の若手の満足度の低下は、コロナ禍の影響も出ているのでしょうか。
18-29歳、大きな働きやすさ低下率
人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(労働者調査)/独立行政法人 労働政策研究・研修機構
2020年と2016年の年齢別の働きやすさ満足度です。「満足している」および「ある程度満足している」を合計し、年齢別の変化を見ます。
60歳以上を除き、満足度は変わらないか、下がっています。特に、18-29歳の低下率が大きくなっています。こちらも、40歳代に満足度が最低になり、その後上昇する傾向は、大きく変わりません。
働きにくいと感じている、18-29歳の若手が増えています。これもコロナ禍の影響なのでしょうか。
仕事内容の満足度は、全ての年代で低下
人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(労働者調査)/独立行政法人 労働政策研究・研修機構
2020年と2016年の年齢別の仕事内容の満足度です。「満足している」および「ある程度満足している」を合計し、年齢別の変化を見ます。
満足度は、全ての年代で低下しています。2016年は、40歳代に満足度が最低になり、その後上昇する傾向にあります。2020年は、40歳代も低いのですが、18-29歳も低くなっています。2016年からの満足度の下がり方も、18-29歳および30歳代の若手が大きくなっています。
仕事内容に満足していない若手が、増えているようです。
仕事上の地位や権限も、満足度は、全ての年代で低下
人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(労働者調査)/独立行政法人 労働政策研究・研修機構
2020年と2016年の年齢別の仕事の地位や権限満足度です。「満足している」および「ある程度満足している」を合計し、年齢別の変化を見ます。
満足度は、全ての年代で低下しています。40歳代に満足度が最低になり、その後上昇する傾向は、大きく変わりません。ただし、18-29歳の満足度が低下しています。
仕事の地位や権限に満足していない若手が多く存在しています。若手なので高い地位や権限というより、裁量が狭いということを意味しているのかもしれません。
雇用の安定性は、全ての年代で満足度が上昇
人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(労働者調査)/独立行政法人 労働政策研究・研修機構
2020年と2016年の年齢別の雇用の安定性の満足度です。「満足している」および「ある程度満足している」を合計し、年齢別の変化を見ます。
全ての年代で満足度が上昇しています。特に、18-29歳が上がっています。
国の政策などにより、正社員になる方が増えたのでしょうか。
仕事に役立つ能力や知識を身に付ける機会、18-29歳、30歳代で上昇
人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(労働者調査)/独立行政法人 労働政策研究・研修機構
2020年と2016年の年齢別の仕事に役立つ能力や知識を身に付ける機会の満足度です。「満足している」および「ある程度満足している」を合計し、年齢別の変化を見ます。
大きな変化はありませんが、18-29歳および30歳代で上昇しています。
若手を中心に、仕事に役立つ能力や知識を身に付ける機会は、増えているようです。
キャリアの見通しは、18-29歳および30歳代が上昇
人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(労働者調査)/独立行政法人 労働政策研究・研修機構
2020年と2016年の年齢別の仕事にキャリアの見通しの満足度です。「満足している」および「ある程度満足している」を合計し、年齢別の変化を見ます。
18-29歳および30歳代が上昇しています。
自律的にキャリアを考えている若手が増えているのでしょうか。
まとめ
2020年と2016年の現状に対する評価を比較しながら、仕事環境の変化を見てきました。情報量に限界があり、背景までは究明できませんが、現状を知る上では有益と考えます。主な内容は、以下のとおりです。
- 収入満足度は、30歳代に大きく上がり、40歳代、50歳代は下がっています。(年功序列の給与体系が崩れ、活躍している年代に多くの給与を支払う企業が増えてきているのでしょうか。)
- 全年代において、働きがいの満足度が低下しています。特に、18-29歳および30歳代の若手の満足度が、低下しています。(会社員として働きがいを実感するのが、難しくなってきているのでしょうか。)
- 60歳以上を除き、働きやすさの満足度は変わらないか、下がっています。特に、18-29歳の低下率が大きくなっています。(コロナ禍の影響なのでしょうか。)
- 仕事の内容の満足度は、全ての年代で低下しています。特に、18-29歳および30歳代の若手の低下が大きくなっています。(仕事内容に満足していない若手が、増えているようです。)
- 仕事の地位と権限の満足度は、全ての年代で低下しています。特に、18-29歳の満足度が低下しています。(若手なので高い地位や権限というより、裁量が狭いということを意味しているのかもしれません。)
- 雇用の安定性の満足度は、全ての年代で満足度が上昇しています。特に、18-29歳が、大きく上昇しています。(国の政策などにより、正社員になる方が増えたのでしょうか。)
- 仕事に役立つ能力や知識を身に付ける機会の満足度に大きな変化はありませんが、18-29歳および30歳代で上昇しています。(若手を中心に、仕事に役立つ能力や知識を身に付ける機会は、増えているようです。)
- キャリアの見通しの満足度は、18-29歳および30歳代が上昇しています。(自律的にキャリアを考えている若手が増えているのでしょうか。)
働きがい、働きやすさ、仕事の内容、仕事の地位と権限において、若手の満足度が下がっています。活き活きと働けていない若手が増えていることを、示しています。主な原因を究明し、手を打つ必要がありそうです。
(関連ブログ:働く人の意識)