日本は、世界各国に比べ、ワークエンゲージメントが低いことが知られていますが、「はたらく幸せ」の実感も低くなっています。働き手に自律的キャリアを求めるだけでなく、会社も組織文化を変える転換期にきています。
人々の仕事におけるより良い状態(ウェルビーイング)を調査した「グローバル就業実態・成長意識調査-はたらくWell-beingの国際比較」/パーソル総合研究所を基に、日本の働き手の仕事に対する幸福感を見ていきます。
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目次
日本は、働く幸せの実感が低い
「はたらく幸せ」を実感できている人の世界平均、日本およびその差は以下のとおりです。本稿では、「幸せ」に注目して見ています。
20代: 世界71.0%、日本40.0%、差31.0
30代: 世界73.6%、日本47.5%、差26.1
40代: 世界74.1%、日本43.5%、差30.6
50代: 世界75.1%、日本55.0%、差20.1
60代: 世界79.7%、日本59.5%、差20.2
全世代において、世界より20%以上低くなっています。特に、20代と40代は、30%以上の差があります。世界では、10人中7人が仕事で幸せを感じていますが、日本の20代は10人中4人しか幸せを感じていません。特に、20~40代の働き盛りの低さは、生産年齢人口が減っている中、深刻に受け止める必要がありそうです。
出所:「グローバル就業実態・成長意識調査-はたらくWell-beingの国際比較」/パーソル総合研究所
会社員は、幸せ実感が低い
正社員や自営業など雇用形態別の「はたらく幸せ実感」です。本稿では、「幸せ」に注目して見ています。他国と比べ、会社員(正社員、公務員、非正規雇用)の幸せ実感が、その他(専門家、自営、自由業)に比べ低くなっています。東アジア諸国は、似たような傾向ですが、日本は特に差が大きくなっています。個人よりも、会社組織に問題がありそうです。
出所:「グローバル就業実態・成長意識調査-はたらくWell-beingの国際比較」/パーソル総合研究所
会社員は、仕事の裁量権がない
「自分の仕事や働き方は、多くの選択肢の中から、あなたが選べる状態ですか?」の質問に対し、日本は会社員(正社員、公務員、非正規雇用)が極端に低く、その他(専門家、自営、自由業)との差が大きくなっています。裁量権がないと、人は苦痛を感じ、モチベーションが下がると言われています。
出所:「グローバル就業実態・成長意識調査-はたらくWell-beingの国際比較」/パーソル総合研究所
IT技術者の幸せ実感が低い
日本の情報処理・通信技術者の「はたらく幸せ実感」は、35%です。世界の全ての職種の中で最低値です。欧米は日本の2倍以上です。日本は、ITやデジタル人材が不足していると言われ、国をあげて育成に力を入れています。しかし、現場では、幸せを実感できていません。IT技術者は、キャリア目標が曖昧という調査結果もあります。30年前、私がIT部門に所属していた時は、IT部門の役割はユーザーからのリクエストをこなすことで、忙しく社内の立場も弱い部門でした。現在もまだ、多くの会社で、この風土が残っているのでしょうか。
出所:「グローバル就業実態・成長意識調査-はたらくWell-beingの国際比較」/パーソル総合研究所
日本は、組織的で権威主義
日本は、他国と比べ、組織的で権威主義の国です。多様性、柔軟な発想、スピードが求められる時代に、馴染まない組織文化です。個人、特に若者の価値観は変わってきており、個人より、寛容/相互尊重よりになってきています。会社組織とのギャップが、幸せを感じにくくしているのかもしれません。
出所:「グローバル就業実態・成長意識調査-はたらくWell-beingの国際比較」/パーソル総合研究所
組織文化が、上司のマネジメントにも影響
「はたらく幸せ実感」が低い権威主義の強い職場では、上司のマネジメントが消極的になっています。人口減少が進む日本の企業は、グラフの右側に向いた組織文化を醸成していく必要があります。
出所:「グローバル就業実態・成長意識調査-はたらくWell-beingの国際比較」/パーソル総合研究所
日本は、お金を稼ぐ以外の価値観が低い
日本の労働の価値観は「良い生活をするのに十分な賃金を稼ぐために働くこと」に比べ、他の価値観が低くなっています。特に、「所属する組織に自分を捧げるために働くこと」は、世界と大きな差があります。会社への忠誠心は過去のものとなりました。昨今、ようやく人は資本と言われ始めていますが、これまでの会社の人への向き合い方が、従業員の意識に影響を及ぼしているのかもしれません。
出所:「グローバル就業実態・成長意識調査-はたらくWell-beingの国際比較」/パーソル総合研究所
日本の自己啓発は、最低レベル
日本は、自己啓発実施していない率、ダントツのトップ52.6%です。半数以上は実施していません。40代は62.5%と、自己啓発を行っている人は10人中4人もいません。自己啓発を実施しても、効果が得られない感じているのかもしれません。これまでの日本企業は、社内での立ち振る舞いや人となりが、評価に一定影響していました。ジョブ型雇用が増えるにつれ、少しづつ評価の在り方も変わってくると思われますが、相応の時間がかかると想定されます。
出所:「グローバル就業実態・成長意識調査-はたらくWell-beingの国際比較」/パーソル総合研究所
働く幸せが、自己啓発を促す
「はたらく幸せ」を実感している社員は、自己啓発の実施率が高くなっています。気持ちが前向きになり、仕事のモチベーションが高くなるようです。ただ、日本は「はたらく幸せ」を実感している社員でも、自己啓発の比率が他国に比べ低くなっています。自己啓発の低さは、幸せを感じられないことだけではないようです。
出所:「グローバル就業実態・成長意識調査-はたらくWell-beingの国際比較」/パーソル総合研究所
会社は、組織文化を変える転換期に
日本の働き手が、仕事にどう感じているのかを見てきました。
- 日本は働く幸せの実感が低い
- 会社員の幸せ実感が低い
- 会社員は仕事の裁量権がない
- IT技術者の幸せ実感が低い
- 日本は組織的で権威主義
- 組織文化が上司のマネジメントにも影響
- 日本はお金を稼ぐ以外の価値観が低い
- 日本の自己啓発は最低
- 働く幸せが自己啓発を促す
個人の問題というよりも、会社の組織文化に問題がありそうです。権威主義、責任回避、裁量権を与えない、こうした組織が、上司マネジメントを消極的にし、働き手一人一人の幸せ感を奪っています。自己啓発も影響を受け、低迷しています。「はたらく幸せ」実感が高い人も、自己啓発が低いことは、人材の流動性など、他の面の影響もありそうです。
SNSでも若手会社員の嘆きを目することが多くなりました。働き手には、会社依存ではない自律的キャリアが求められていますが、会社も組織文化を変える転換期にきているようです。
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