自己肯定感を高めるには?症状、高める方法を心理学の理論に基づき丁寧に解説

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自己肯定感とは、「自己に対して肯定的で、好ましく思うような態度や感情」(田中, 2008)です。

令和元年版 子供・若者白書」によると、日本の若者は、諸外国の若者と比べて、自分自身に満足していたり、自分に長所があると感じていたりする者の割合が最も低い結果となっています。最近は、社会に出た後も、自己肯定感の低さに悩む方が、増えてきたように感じます。

自己肯定感を高めるには、追い込まれたり、強いショックを受けたりして、自分の内面に向き合わざるを得ない機会が必要です。この機会を、自らつくるのは難しいものですが、必ずやってきます。この時に、真剣に自分と向き合い、鎧の下の自分に気づくことが大切です。

本記事では、自己肯定感を高める方法を解説します。

   

  

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自己肯定感とは

自己肯定感には、様々な定義があります。心理学用語にSelf-esteemという言葉があり、日本語で自尊心と訳されます。自分に対する好ましさ、自分を大切に思う気持ちです。自己肯定感は、この自尊心に近いものですが、本記事では次の定義を使用します。

自己肯定感とは、自己に対して肯定的で、好ましく思うような態度や感情(田中, 2008)

言い換えると、「自分は、いまの自分でいいんだ、もちろん足らない点はあるけど、努力して身につければいいんだ」と思え、感情的に自分を責めたりしない態度です。

自己肯定感が低い時の症状

自己肯定感が低い時は、自分はだめだと思う気持ちが強くでます。これが続くと、うつ症状に近い状況になります。私も、以前は自己肯定感が低く、辛い時期がありました。

とにかく自分を否定

否定的な言動が多く見られます。自分自身を批判したり非難する考えに偏り、自分自身の弱点や欠点にばかりに目がいきます。

私は、仕事が上手くいっていない若いころ、「自分は、田舎者だし、金ないし、不器用だし、何もいいところがない。」「自分は魅力のない人間だ。こんな自分を、誰も認めてくれない。」と、時間があると、自分を否定する考えが浮かんでくることがありました。

叱られると、反論できない

叱られたり、怒られると、自分が悪いんだと思いがちです。相手が間違ったことを言っていても、自分自信を責めることがあります。

私は、社会人なりたての頃、口調が強く、命令する上司の言いなりになることがありました。上司が理不尽なことを言っていても、自分より優れており、自分は劣っているという意識があり、無自覚に従っていたのかもしれません。

自分をさらけ出すのに抵抗を感じる

自分に自信がないため、自分のダメな点を開示するのに、抵抗を感じます。こんなことを言って、相手から軽蔑されないだろうか、嫌われないだろうかと思います。

私は、飲み会で、自分の私生活を話すのが嫌でした。特別の趣味もない自分をさらけ出すのに抵抗を感じていました。自分に自信がないので、素の自分を見せたくなかったのかもしれません。

人と自分を比べ、落ち込む

自分に自信がないため、他人と比較し優れていることを見つけ、満足感を得ようとします。逆に、比較し劣っていた場合は、落ち込みます。

私は、同僚より昇格が遅れると、落ち込みました。仕事では、常に人からの評価を気にしていました。自分で、自分を好ましく思っていないので、他人からの承認を追い求めていたのかもしれません。

人に頼れない

人に頼ることは、相手よりも自分が劣っていることを意味する、と思ってしまいます。自分に自信がないため、常に人と比較する気持ちが生まれます。

私は、仕事を人に依頼したり、頼ることが苦手でした。頼って相手に断られた時のことを想像し、恐れていたました。断られたら、それは自分への評価を表している、と無意識に捉えていたのかもしれません。

自分の意見を言わない

自分の意見を言って、間違っていたり、ピントがずれていたら、周りからの評価が下がると思います。また、どうせ自分の意見なんか大したことないと、考えてしまいます。

私は、自分の意見は言いたくありませんでした。反論されるのが怖かったのかもしれません。また、価値のない意見と思われるのが、嫌だったのかもしれません。

こうやって自分のことを振り返ると、よくがんばったと思う反面、どうしようもない歯がゆさを感じます。自己肯定感が低いと、仕事のパフォーマンスも低迷しますが、何よりも生きづらさを感じます

   

   

自己肯定感を高める方法

自己肯定感を高めるためには、自分の内面と向き合う必要があります。しかし、自己肯定感が低いと、自分の内面と向き合いたくないものです。ダメな自分を見たくないのです。自己肯定感を高めようと思い、自己の内面と向き合える人は、ほとんどいません。ではどうするか?

必ず、自分と向き合わざるを得ない瞬間がある

自己の内面と向き合うのは、追い込まれたり、強いショックを受けたりして、向き合わざるを得ない状況になった時です。

自分たちを脅かすものと出会い、そこを生きのびようとする心の働きから、自分は何者であるかを語る基盤となる物語は生まれる

出所:人格心理学/2015年3月20日/大山泰宏/一般社団法人放送大学教育振興会

人によりショックの程度は異なりますが、例えば、次のようなことに遭遇した時です。

  • 仕事がつらく、退職するかどうか悩んでいる時
  • 合併などで、クビなった時
  • 利害関係のない人に、本質をついたことを言われた時
  • 信頼している人や家族が病気になったり、不幸があった時
  • 身体をこわして入院した時
  • 災害にあい、普通の生活が出来なくなった時

私の場合は、利害関係のない人から、本質をついたことを言われのをきっかけに、自分に向き合うようになりました。時間はかかりましたが、少しづつ、心の持ちようが変わっていきました。

次第に、自分に関心が向いてくる

人は、ショックなことを体験すると、次のような状況におちいります。

  • 理不尽なことに対する怒りと落ち込みが混ざった、複雑な気持ちになる
  • 次第に、怒りが収まり、関心が自分の気持ちに向かう
  • 事実を受けとめ、自分は何がしたいのか、何者なのか、生きる意味は何なのか、いろいろ考える

もちろん大きな災害にあったり、事故に巻き込まれた場合などは、事実を受けとめるのに多くの時間を要しますが、この一連の過程が、自己肯定感を高める機会となります。

本人は、自己肯定感を高めることを意図しているわけではなく、ショックから立ち直りたい一心で、自分の心を耕し直しているのです。心の受け入れ態勢ができていますので、内省を繰り返しているうちに、次第にありのままの自分を肯定的に受け入れるようになっていきます。

さらに、次のような取り組みが、新たな気づきを促してくれます。

自分の気持ちを書く

書くという行為は、誰でもできますが、自分の気持ちを見える化する効果があります。書く時は、事実と考えを分けるのがポイントです。例えば、次のような具合です。

<事実>
入社5年経ったが、多くの同僚が先に昇格して、自分だけ昇格していない。自分の評価は、いつも中間。評価面談では、もっと数字を伸ばさないとと言われるが、自分より数字が低い人が昇格している。

<考え>
同僚が先に昇格すると、落ち込む。自分は上司に気に入られていないのか。何をがんばればいいのか。お客さんとの関係は良く、仕事自体は苦でない。(向いていると思う)お客さんのことを考え、がんばるしかできない。上司に取り入るのは性に合わない。できないことは無理。自分のできること、目の前の仕事をがんばるしかない。

書くと、「そっか、自分はそう思っていたんだ」と感じることがあります。そうすると、次第に気持ちが落ち着いてきます。書くという行為は、自分の本当の気持ちを特定する機能があります。本当の気持ちが見つかると、人は安心します。

信頼できる人に相談する

人に相談することも、自分の気持ちの見える化に役立ちます。辛い気持ちを本音で語りますので、相手は信頼できる人に限られます。信頼できるとは、自分が話すことを否定せず、全て受け入れてくれる人です。もちろん、他の人に漏らすことはありません。

相談する場合は、利害関係のない、人材支援の専門家がお勧めです。何かをアドバイスしてくれるのではなく、こちらの話をしっかり傾聴してくれます。人は、高度な傾聴を体験すると、どんどん内省が深まり、自分の歪んだ考えや思考に気づいていきます

信頼でいる人に相談する方法としてコーチングがあります。詳しくはこちらをご覧ください。

先人の考えを参考にする

同じような苦境にあった先人がどうやって乗り越えていったのかを、書籍から学びます。読んで自分がしっくりくる本を信じればよいのです。参考までに、私が、自分を考えるきっかけになった書籍を掲載します。

人生の王道/稲盛和夫

西郷隆盛の教えを基に、生き方、考え方を書いた本です。自己肯定感の高め方を書いた本ではありませんが、人生を深く考え、自分を見つめ直すきっかけとなります。
道は開ける/D・カーネギー

悩みを克服する方法が書かれた本です。1940年代に書かれた本で、人間はいつになっても本質は変わらないことが分かります。著者が言っているように、都度参照する案内書として活用できます。
7つの習慣/スティーブン・R.コヴィー

人格を磨く大切さ、実践方法が、7つの習慣として書かれています。アドラー心理学にも近い内容です。人生哲学の定番といわれ、多くの経営者からも支持を集めています。

私の好きな言葉も載せておきます。

思考に気をつけなさい それはいつか言葉になるから
言葉に気をつけなさい それはいつか行動になるから
行動に気をつけなさい それはいつか習慣になるから
習慣に気をつけなさい それはいつか性格になるから
性格に気をつけなさい それはいつか運命になるから
                  
                 マザー・テレサ

  

    

上司が、自己肯定感の低い部下に対し、できること

   

これを言うと身も蓋もないのですが、上司は部下の自己肯定感を高めることはできません。しかし、上司は、部下が一人の人間として育っていくことを、見守り、支えることは可能です。

特別視せず、普通に接する

部下が傷つくといけないからといって、必要な指導をしない、特別扱いするようなことは避けましょう。パフォーマンスが低い時は、早めに本人に伝え、自分に向き合ってもらう必要があります。若ければ若いほど転職も容易なので、長い目でみると本人にとってプラスです。本人は多少傷つくかもしれませんが、それだけ自分と向き合うきっかけが増えることになります。

内省を支援する

本人が自分に向き合い始めた時に、内省を支援してあげることは可能です。信頼できる相談者を紹介します。相談者は、利害関係のない他人である必要があります。知り合いなど少しでも利害関係があると、人間は本音を話しづらくなるものです。会社で、外部のコーチやキャリアコンサルタントと契約し自由に相談できるようにしておくのも一つです。

弊社の提供するじぶんコーチングも、外部コーチングの一つで、内省を支援することが可能です。詳細は、こちらを参照ください。

  

まとめ

自己肯定感を高める方法を紹介してきました。自己肯定感とは、「自己に対して肯定的で、好ましく思うような態度や感情」(田中, 2008)です。

自己肯定感を高めるには、追い込まれたり、強いショックを受けたりして、自分の内面に向き合わざるを得ない機会が必要です。内面に向き合い始めた時、書く、相談する、先人に学ぶを通じて、内省が促されます。次第に、自分の弱さに向き合えるようになり、弱くてもいいんだと思えるようになってきます。

自己を肯定感が高まることは、人が活き活きと働くことができるようになるため、本人ととってのみならず、社会にとっても有益です。本記事が、悩まれている方に、少しでも参考になれば幸いです。

引用文献

田中 道弘 (2008). Rosenbergの自尊心尺度をめぐる問題と自己肯定感尺度の作成と項目の検討 常磐大学大学院人間科学研究科博士学位請求論文

       

           

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ピープルエナジー代表 伊集院正

22年間、⾦融IT・リスクのコンサルティングに従事。ITリスクチームの拡大や金融セクター設立に貢献。この間、優秀な多くのコンサルタント育成に関与。2020年、国家資格キャリアコンサルタントを取得。2021年に⼈材コンサルティングを開始し、企業の従業員や働き手に対し、心理学の理論を活用したコーチングを提供中。
   
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