メタ思考という言葉をよく聞くようになりました。日本経済の再生にむけた人材育成の提言書『価値創造人材の育成に向けた教育トランスフォーメーション/経済同友会』には、次のような記載があります。
自ら課題を見つけ、正解のない問題や課題へ果敢に挑戦し、 じっくりと時間をかけて答えを見出す教育と、それを評価する基準、奨励する教育が不可欠である。
出所:『価値創造人材の育成に向けた教育トランスフォーメーション/経済同友会』
課題を解決する前に、課題を見つける力を教育する必要があると述べています。この課題を見つける力がメタ思考です。本記事では、メタ思考とは、仕事でメタ思考ができていない事例、メタ思考を実践する方法を説明します。
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目次
メタ思考とは
最初に質問です。
- 上の絵の広場の真ん中にたたずんでいるのは、自分だと思ってください。
- 目を閉じて頭の中で、広場の中心にいる自分を上空から見ている場面を想像してください。
- どんな気持ちになりましたか?「何やってるんだ?」「どうしたんだ?」「自分が主人公のようだ」…
メタ思考を体験いただきました。自分の行動を鳥の目で見ると、見えていなかった何かに気づくことがあります。
メタ思考とは、自分自身の思考プロセスを客観的に観察し、分析する能力です。問題をより高い視点から俯瞰し、物事の本質を深く理解することができます。メタとは「高い次元の」「超越した」という意味で、外側から物を見ることです。メタ認知という言葉もありますが、メタ思考はメタ認知の上位の概念です。メタ思考では以下のことが実現できます。
- 目の前の事象に捉われず、適切な課題や行動を選択する
- 自己の認知をモニタリングし修正する
メタ認知能力をもっと知りたい!
仕事でメタ思考ができていない事例
メタ思考ができていない仕事上の事例を紹介します。全て筆者の30年間の会社員生活の中で、経験したり、見たりしたケースです。
ケース | 説明 |
---|---|
ミスした部下を責め立てる上司 | 部下がミスした時に本人を責め立てる上司です。ミスを起こした当事者は責任を感じ落ち込んでいます。責めると益々辛くなり、挽回する気力が失せてしまいます。 |
昔の自慢をする上司 | 部下にがんばってもらいたいと考え、「俺の若い頃は平日は夜中まで働き、土日もどちらか出勤していた」など自慢話をする上司です。部下にとっては説得力がなく、自分の自慢をしたいだけかと思われます。 |
お客さんに注意を受けた目の前で部下を叱る上司 | 会議でお客さんから注意を受けた時に、その場で部下を叱る上司です。部下としては、辛い状況をかばってもらいたい場面です。お客さんと上司の両者から攻撃されているように感じ、上司に対する信頼をなくします。 |
部門長が個別案件の進捗ばかり気にする | 部門長にもかかわらず、個別案件の進捗ばかり気にしている管理職です。部門全体の目標や人材育成を考えることが本来の仕事にもかかわらず、目の前の案件にしか目がいっていません。部門の業績は伸び悩み、人材も育ちません。 |
知り合いに声をかけられ転職したが後悔する | 知り合いから転職しないかと声をかけられ、特にやりたいことではないが待遇が良いからと転職した方です。自分がやりたいことや先のことを考えていないため、次第に仕事に行き詰り始めます。 |
あと数年で役職定年や定年が分かっているのに何も行動していない | 数年後に役職定年または定年が迫っているのに特段何もしていない方です。その時になって「こんなはずではなかった」と苦悩します。 |
誰しも経験あることではないでしょうか。特に気持ちに余裕がない時は、視野が狭くなり他の考えに思いが及ばず、こうした状況に陥りがちです。
メタ思考を実践する方法
メタ思考は誰しも実践できます。メタ思考するには、自分を客観視する機会を持つことです。筆者がこれまで実践してきた方法をご紹介します。
自分が落ち着く席を見つける
まずはリラックスできる場を見つけることです。筆者の場合は、神田駅前のドトールの奥の席(具体的すぎましたw)、お客様の会社のラウンジの端っこの席、地元の図書館の窓側の席をよく活用していました。座ってみると、何となくリラックスできるなという席があるものです。そういう席をいくつかリストアップしておきます。
- リラックスできる場所をみつける
- 最もリラックスできる席を特定しておく
- お気に入りの席を複数リストアップしておく
朝の30分を確保する
朝一番の30分間を確保するようにします。毎日は難しいと思いますので、3日に1回、朝の30分を確保します。8時から仕事を開始する人は8:00-8:30、9時から仕事を開始する人は9:00-9:30という具合に、開始時間は何時でもよいので仕事に手をつける前の時間を確保します。30分もかからない場合もありますので、その時は終わり次第、仕事を始めます。
- 朝一番に30分確保する
- 3日に1回は確保する
- 仕事に手をつける前の時間とする
小さなノートを用意する
B6かA6サイズのノートを用意します。手帳でもよいです。大きすぎると何か書かなくてはと意識し過ぎますので、小さめのサイズがお勧めです。筆者の経験では、パソコンやスマホよりも紙を使う方が脳が刺激され、考えを深めることができます。人に見せたり、書き直したりするものではありませんので、ペンはボールペン、鉛筆のいずれも大丈夫です。
- B6またはA6サイズのノート(手帳)を用意する
- ペンはボールペン、鉛筆のいずれでもよい
- 人に見せるものではなく、書き直す必要もない
気になったことをきっかけに「そもそも」と考える
思考する時は、気になったことをきっかけに、「そもそも」と考えます。営業が行き詰っていれば、「そもそもこの商品が必要な顧客はいるのか」といった具合です。考える際は、できるだけノートを手にもち、背もたれにもたれ、前方上部に顔を向けると、リラックスして考え易くなります。
例えば50代になり役職定年や定年が間近に迫ってきた方が、雇用延長してさらに働き続けるのを悩んでいる場合です。
- 「そもそも自分の人生ってどうなんだろう」と考えます
- ノートを手に持ち、背もたれにもたれ、前方上部に顔を向けながらリラックスして考えます
- ポイントはきれいに整理するのではなく、頭に浮かんだことを素直に書くことです
- 書くと事実と考えが混在すると思いますので、左に事実、右に考えを書くと、自分でも頭を整理し易くなります
- まずは今後の生活資金の確認が必要なことに気づきはじめました
内省についてもっと知りたい
日頃からできること
メタ思考は集中して考えますので、脳のエネルギーを大量に使います。考えることに慣れていないと、雑念が湧いてきてなかなか集中できません。以下は、筆者がお勧めする日頃からできることです。
- 睡眠、食事、運動などで体調を整える(実はこれが一番大事)
- 読書する(状況を想像する小説がおすすめ)
- マインドフルネスを実践する(無心で地面からの圧力だけを感じて歩くのがおすすめ)
マインドフルネスについて知りたい
まとめ
本記事では、メタ思考とは、仕事でメタ思考ができていない事例、メタ思考を実践する方法を説明しました。メタ思考とは、自分自身の思考プロセスを客観的に観察し、分析する能力です。課題を解決するのではなく、課題を見つける力です。メタ思考により次のようなことが実現できます。
- 目の前の事象に捉われず、適切な課題や行動を選択する
- 自己の認知をモニタリングし修正する
メタ思考は誰しも実践できます。メタ思考するには、自分を客観視する機会を持つことです。本記事では具体的な方法をご紹介しました。
- 自分が落ち着く席を見つける
- 朝の30分を確保する
- 小さなノートを用意する
- 気になったことをきっかけに「そもそも」と考える
メタ思考は誰しもできます。メタ思考による効果は絶大です。ちょっとした工夫と時間で実現できます。よりよい人生を歩むために、ぜひメタ思考に取り組んでみてください。
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