レジリエンスを高める。具体的なトレーニング方法を解説

個人のお客様ーレジリエンス

レジリエンスという言葉をよく聞くようになりました。レジリエンスとは一言で言うと、回復力です。気候変動、災害、病気・事故、日常のゴタゴタまで、生きている限り苦境は無くなりません。苦境が起こった時、悲しみに明け暮れるだけでは、苦境から脱することはできません。レジリエンスを高めることで、しなやかに立ち直ることが可能となります。

IFRC Framework for Community Resilience/The International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies (IFRC)(国際赤十字連盟)では、レジリエンスを3つの層に分類しています。(下記の図参照)

上から次のように表せます。

  • 個人・コミュニティのレベル
  • 国・組織のレベル
  • 世界・全人類のレベル
出所:IFRC Framework for Community Resilience/The International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies (IFRC)

苦境の大きさや重要性により、各レベルに求められるレジリエンスは異なります。気候変動は世界レベルでのレジリエンスが必要になります。職場の人間関係は個人レベルのレジリエンスが求められます。レジリエンスは誰しもトレーニングすることで高めることができます。本記事では、個人のレジリエンスの高め方を解説します。トレーニング方法をすぐに知りたいという方はこちらをご覧ください。

   

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レジリエンスとは

レジリエンスとは、しなやかに立ち直る力です。困難や逆境に遭遇しても、折れない心、めげない力です。一言でいうと、次の言葉で表せます。

   

回復力

レジリエンスが低い人の特徴

レジリエンスが低い人は、以下の特徴があります。

特徴説明
柔軟性の欠如逆境に遭遇した際、柔軟で対応力のある姿勢が求められますが、レジリエンスが低い人は柔軟性が不足し、変化に対応できません
ネガティブ思考逆境を乗り越えるためにはポジティブな思考が重要ですが、レジリエンスの低い人はネガティブな思考に陥りやすく、逆境を乗り越えるエネルギーが湧いてきません
困難に対する抵抗感レジリエンスの低い人は困難や挫折に直面した時、現実を受け入れられず、新しい道に踏み出すことがなかなかできません

      

レジリエンスを高めるメリット

高いレジリエンスを持つことは、個人や組織にさまざまなメリットをもたらします。

メリット説明
ストレスへの適応力レジリエンスが高い人は、ストレスに対して効果的に対処でき、身体的・精神的な健康を維持しやすくなります。
創造性と柔軟性の向上レジリエンスが高まると、新しいアイデアや解決策を見つけ出す能力が向上し、柔軟で創造的な思考が生まれます。
持続可能な成長逆境を乗り越える経験が多いと、得難い学びも増え、個人や組織は持続的な成長を遂げやすくなります。

        

レジリエンスを構成する6つの要素

The Resilience Factor: 7 Keys to Finding Your Inner Strength and Overcoming Life’s Hurdles/Karen Reivich, Andrew Shatte Ph.D.」 において、レジリエンスを構成する6つの要素が定義されています。生きていると様々な苦境に遭遇します。災害、事故、病気など大きな苦境もあれば、仕事上の日常的に起こる苦境もあります。苦境に対しては、以下の態度をとることが大切です。

  1. 冷静になる
  2. 柔軟に思考する
  3. 人に頼る
  4. やればできると思う
  5. なんとかなると思う

その上で、苦境に対し6. 働きかけます。これが苦境から、しなやかに立ち直る力、レジリエンスを構成する6つの要素です。筆者なりに解釈し、整理したのが以下の図です。

出所:The Resilience Factor: 7 Keys to Finding Your Inner Strength and Overcoming Life’s Hurdles/Karen Reivich, Andrew Shatte Ph.D.を基に作成

  

レジリエンスのベースとなるのは感情知能EQです。このブログではEQを高めるトレーニング方法について解説しています。

レジリエンスを高めるトレーニング

それではレジリエンスを高めるトレーニング方法をご紹介します。土台となるのはABCDE理論です。

ABCDE理論

ABCDE理論はアルバート・エリスが提唱した理論です。

  • A: Activating events 実際の出来事
  • B: Belief 信念、思考
  • C: Consequence 結果、感情や行動の悩み
  • D: Disputing 論破
  • E: Effective new philosophy 効果的な哲学

Aの出来事に対し、Bの信念/思考がCの結果を決める、という理論です。さらに、Dの論破(論理的な質問)を通じて、効果的で合理的な考えに気づいていきます。そしてC’の新しい結果が生まれます。全体イメージを表したのが次の図です。

出所:臨床心理学概論/倉光修を基に作成

ABCDE理論を活用した対話の例

ここではABCDE理論を活用した対話の例を説明します。電車が遅れイライラする架空の会社員なやみ君と、コーチ伊集院のやり取りです。文中の(A)~(E)はABCDE理論の該当箇所です。

なやみ君

今朝、人身事故で電車が遅れ、30分遅刻しました。座ろうと思って早くから並んでいたのに、車内は混んでいて、1時間ずっーと立ちっぱなしでした。(A)出だしが悪く、今日はついてません。(B)ほんと人身事故って迷惑ですね。あーイライラする。(C)

  

コーチ
伊集院

なやみ君、それは大変でしたね。30分遅刻したんですね。実際に仕事にどんな影響がでましたか?

   

なやみ君

仕事に大きな影響はありませんが、30分あれば何らかの作業を進めることができたと思います。

  

コーチ
伊集院

仕事に大きな影響はなかったのですね。良かったですね。当事者も事故を起こしたかったわけではなく、いろいろな事情があるはずです。鉄道会社もホームドアを設置したり、事故防止に努力しています。それでも起こる時は起こってしまいますよね。(D)

  

なやみ君

まぁ、それはそうですが。電車が遅れるとイライラします。

  

コーチ
伊集院

なやみ君にはどうすることもできないことでイライラするのは、もったいないですね。人は機嫌が良い状態が、仕事が最もはかどります。(D)

  

なやみ君

自分でどうすることもできないことにイライラするのは、確かにもったいないです。世の中は自分のためだけに動いているわけではないので、電車は遅れることもありますよね。(E)これからは、気持ちを切り替え、イライラしないようにします。(C’)

ABCDE理論を独りでトレーニングする

ここからはABCDE理論を独りでトレーニングする方法をご紹介します。仕事で上司に注意を受け、落ち込むなやみ君です。

なやみ君

昨日午後、上司とのオンライン会議において、ある会議用の資料をレビューしてもらいました。たくさん指摘をされ、最後に「こんな資料ではダメだ」、「目的をわかっているのか」と言われました。辛いです。。。コーチに教えてもらったとおり、独りでABCDE理論を実践してみました。

  

項目説明なやみ君の記載
事実
A
気分が落ち込んだり、辛くなった出来事を、具体的に記載します。
5W1Hを意識して記載します。
昨日午後、上司とのオンライン会議において、ある会議用の資料をレビューしてもらった。たくさん指摘をされ、最後に「こんな資料ではダメだ」、「目的をわかっているのか」と言われた。
感情
C
その時の感情を0~100%の数字で示します。
主観で評価します。
焦り:  80%
悲しい: 70%
怒り:  50%
(感情ごとに0~100%で評価)
思考
B
出来事に遭遇した時に、頭の中に思い浮かんだ思考を記載します。
気分ごとに考えると、書き出しやすくなります。
(まずは思い浮かんだことを書き出します)
自分は仕事ができない。何度も同じ注意を受けている。
これで今年の評価も良くない。上司も、もっと丁寧に教えてくれればいいのに。自分のこと嫌っているのか。
この人の下で働いていてもいいことない。いっそ転職しようか。
(感情ごとに整理します)
焦り: このままこの会社にいてもダメだ、何とかしないと
悲しい:がんばってるのに、自分は仕事ができない
怒り: 教え方も悪いはずなのに、自分ばかり責める
反証
D
反対の思考を記載します。
反対の思考の根拠になりそうなことを、自由に書き出します。たくさん挙げることが大切です。少しでも関係ありそうであれば、躊躇せず記載しましょう。
(反対の思考)
上司から注意を受けることはあるが、自分は仕事ができないわけではない。
(根拠)
これまでの人事評価は際立って良くはないが、悪くもない。過去、上司に褒められたこともある。パワーポイントの資料は苦手だが、エクセルは得意だ。細かい数値を分析するのが好きだ。分析が求められる案件では、重宝されている。データ分析のニーズは増えており、活躍の機会は増えてきそう。現在、資格取得も目指しており、がんばっている。
感情
C’
ここまで振り返り、今の感情を評価します。焦り:  50%
悲しい: 50%
怒り:  30%
今の思考と小さな行動
E、C’
今の気持ちと、実行できそうな小さな行動を記載します。いろいろ注意を受けたが、自分の良い点もある。目的に沿った資料を作成するために、パワポ作業の前にノートに骨子を書いて目的に沿っているか確認しよう。

いかがでしょうか?独りで実践する時は、コーチによるD論破ができないので、このようなテンプレートを使い反証という形で、強制的に視点を変えるようにします。慣れが必要ですが、一度習得すると、苦境に陥った時、独りでも冷静になり柔軟に思考できるようになります。この結果、感情が安定し、小さな行動であれば、実際にやってみようという気持ちが生まれます。

この思考法は、当社のじぶんコーチングで習得することができます。詳しくはこちらをご覧ください。

まとめ

本記事では、個人のレジリエンスの高め方を解説しました。レジリエンスとは、しなやかに立ち直る力、回復力です。レジリエンスは6つの要素から構成されます。

  1. 冷静になる
  2. 柔軟に思考する
  3. 人に頼る
  4. やればできると思う
  5. なんとかなると思う
  6. 働きかける

苦境において、この6つができるようになるには、ABCDE理論を習得するのが効果的です。独りで実践する際には、D論破をテンプレートを使い反証することで代替できます。習得することで次第に思考が変わり、ちょっとしたことでは動じず、問題が起こっても冷静に立ち直れるようになります。

  • A: Activating events 実際の出来事
  • B: Belief 信念、思考
  • C: Consequence 結果、感情や行動の悩み
  • D: Disputing 論破
  • E: Effective new philosophy 効果的な哲学

生きている限り苦境から逃れることはできません。レジリエンスを高めることで、苦境から脱しやすくなるとともに、毎日穏やかな心で過ごすことができます。レジリエンスは誰しもトレーニングすることで高めることができます。練習だと思って、日常のゴタゴタなど小さな苦境を基に、ぜひABCDE理論を実践してみてください。

  

  

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ピープルエナジー代表 伊集院正

22年間、⾦融IT・リスクのコンサルティングに従事。ITリスクチームの拡大や金融セクター設立に貢献。この間、優秀な多くのコンサルタント育成に関与。2020年、国家資格キャリアコンサルタントを取得。2021年に⼈材コンサルティングを開始し、企業の従業員や働き手に対し、心理学の理論を活用したコーチングを提供中。
   
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