ストレスマネジメントとは、ストレスに対処する方法や技術です。
仕事や人間関係など、さまざまな要因によってストレスを感じることがあります。ストレスが大きくなると、心身に悪影響を及ぼします。厚生労働省令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、1ヶ月以上休業・退職した労働者がいた事業所は13.3%です。多くの方がストレスに悩まされています。
ストレスは、ストレスの仕組みを知り、日頃からコントロールすることが大切です。本記事では、ストレスの生まれる原因、ストレスマネジメントの具体的な方法を紹介します。
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目次
ストレスマネジメントとは
ストレス
ストレスとは外部からの圧力や要求に対する身体的、心理的な反応です。ストレスは、適度な量であれば、パフォーマンスやモチベーションを高める効果がありますが、過剰になると、身体や心に悪影響を及ぼします。
ストレスは環境、人間関係、経済状況などの外的刺激(ストレッサー)を人が解釈し、発生します。(下記の図参照)例えば、「朝から雨が降っている」場合、「雨の日は憂鬱だ」と解釈することで、「雨の日、会社行くの嫌だな」というストレスが発生します。
極端な話、「雨の日は楽しい」と解釈すれば、ストレスは発生しません。人の解釈があってはじめてストレスとなります。
ストレスマネジメント
ストレスマネジメントとはストレスに対処する方法や技術です。ストレスの影響を軽減したり、ストレスをポジティブに活用することができます。
厚生労働省のeヘルスネットでは、ストレスマネジメントを次のように定義しています。
ストレスとの上手な付き合い方を考え、適切な対処法をしていくこと。
ストレスは、日常的にどんな方でも受けるものです。しかし、中にはストレスによって様々な症状がでたり、疲れてしまったりするときがあります。そのように、身体や心に悪影響を起こすストレスに対し、どのように対処しどのように付き合っていくかを考えることを、ストレスマネジメントと呼びます。
ストレスマネジメントでは、ストレスがかかったときの対処法(コーピング)やストレスに対する認知の変容を中心に指導をしていきます。
出所:eヘルスネット/厚生労働省
ストレスマネジメントの方法
ストレスマネジメントの方法には、主にセルフモニタリングとコーピングがあります。
セルフモニタリング
セルフモニタリングは感情、思考、身体的な反応およびストレス要因を定期的に観察し、記録する方法です。ストレスの発生源や自分の反応を理解し、対応方法を考えることができます。
- ストレスを感じた時のストレッサーを記録します。
- 感情、思考、身体症状を思い返し、ストレスを感じた時の状況を記載します。
- ある程度記録したところで、ストレスの度合いや頻度からストレスになるパターンを探します。
- ストレスを減らすために有効な対策を検討します。
コーピング
コーピングとは、ストレスに対する意図的な対処行動です。
厚生労働省のeヘルスネットでは、コーピングを次のように定義しています。
コーピングは、ストレスの基にうまく対処しようとすること。問題焦点コーピングと情動焦点コーピングに分けられる。
ストレスの基(ストレッサー)にうまく対処しようとすることを、ストレスコーピングといいます。
ストレッサーによって過剰なストレスが慢性的にかかると心身へのさまざまな悪影響が考えられるため、健康を維持するにはうまくストレスコーピングすることが必要になります。
ストレスコーピングの方法は、大きく以下の2つに分けられます。
問題焦点コーピング:
ストレッサーそのものに働きかけて、それ自体を変化させて解決を図ろうとすること
(例:対人関係がストレッサーである場合、相手の人に直接働きかけて問題を解決する)情動焦点コーピング:
ストレッサーそのものに働きかけるのではなく、それに対する考え方や感じ方を変えようとすること
(例:対人関係がストレッサーである場合、それに対する自分の考え方や感じ方を変える)ストレッサーそのものが対処によって変化可能な場合は問題焦点コーピングが適当で、ストレッサーが対処によっても変化可能でない場合は情動焦点コーピングが適当であると考えられます。
出所:eヘルスネット/厚生労働省
五月病が気になる
ストレスマネジメントの実践
ストレスは人の解釈により生まれまるため、解釈つまり思考を変えることで、ストレスを低減できます。ここでは、セルフモニタリングとコーピングを統合した方法を紹介します。私も活用し、助けられています。
- ストレスに気づく
- 気分を変える
- 思考を変える
ストレスに気づく
人は体調に変化が現れないと、ストレスに気づきにくいものです。ストレスがあると、まず思考に変化が現れます。
思考が変化する
- 集中できない
- なかなか決められない
- 忘れっぽくなる
- 否定的に考えやすくなる
ただこの状況で、ストレスのせいだなと気づくのは難しく、「こんなことではダメだな」「シャキッとしなくちゃ」と、自分を鼓舞する気持ちになります。この状況が続くと感情に変化が現れます。
感情が変化する
- なんか不安な気持ちになる
- 自分が無力な気がする
- 気持ち沈み悲しい気分になる
- イライラして機嫌が悪くなる
ここまでくると、人は気分転換をしたり、休暇をとったりします。ただ、仕事が忙しく、休めない場合は、次第に身体に変化がでてきます。
身体が変化がでる
- 肩こりや腰痛になる
- 頭痛やめまいがする
- 吹き出物やささくれができる
- 疲労感やだるさを感じる
- 風邪をひく
この状態をほっておくと、過食や食欲不振、不眠症や過度の眠気、過度のアルコールやタバコの摂取につながります。さらに症状が進むと、うつ病、胃潰瘍、自律神経失調症、ガンなどの病気に進行することもあります。私も、ストレスから不整脈や潰瘍を患ったことがあります。
初期の段階でストレスに気づくのが理想ですが、人は、なかなか思考の変化には、気づきにくいものです。お勧めは、感情が変化した時に気づくことです。簡単なバロメーターは、機嫌の良し悪しです。機嫌が悪いと感じたら、ストレスが溜まっています。
機嫌が悪くなっていませんか?
気分を変える
ストレスに気づいたら、気分を変えることが大切です。感情が下がったままだと、考えがネガティブに偏ったり、行動がおっくうになります。気分を変える方法に決まりはなく、自分に向いたやり方を見つけます。
気分を変える対応は情動焦点型のコーピングとも呼ばれ、次のような取り組みがあります。
- 近所の〇〇を散歩する
- 〇〇をジョギングする
- 〇〇の音楽を聴く
- 〇〇のマンガを読む
- 〇〇の小説を読む
- ギターを弾く
- 家庭菜園をする
- 〇〇図書館で雑誌を読む
- 友人〇〇と電話で話す
いろいろ試してみて、自分の落ち着く方法を、書いておきます。具体的な固有名詞の〇〇まで特定しておきます。お金をかけず、気軽に実施できるものが理想です。「疲れたから飲みに行こう」ではなく、意図的に準備し実施するのがポイントです。以下は使い方の例です。
仕事中に不安な気持ちになった時 → 昼休み音楽を聴きながら近所を散歩する 一日仕事が忙しくイライラすると感じた時 → 一つ手前の駅で降りて街を散歩して帰る 週末、仕事のことで気分が沈んだ時 → 近所の公園を散歩する
お勧めは散歩です。軽い運動になり、新鮮な空気を吸うことができます。15分歩くだけでも、気分が変わります。国土交通省の資料「歩行と気分転換、脳の活性化」では、ウォーキング後はネガティブ感情が全て改善し、活力が上がることが示されています。(下記の図参照)
出所:国土交通省資料より
このように、気分を変えるには歩くことが最適です。お金がかからず、いつでもどこでもできます。
散歩して気分を変えましょう!
歩きながらの内省がおすすめ!
思考を変える
小さなストレスは気分が変わり、感情が安定することで、解消されます。しかし、職場の人間関係、人事評価または家族の問題など大きなストレスは、そうはいきません。この場合は、思考を変える必要があります。
思考を変えるためには、現在の感情、思考を見える化します。その上で、思考を反証し、合理的な思考を探ります。最後に行動につなげることで、同じような状況の繰り返しを防ぐことができます。これらは全て、紙に書いて実施します。下記は、項目と記載例です。
項目 | 説明 | 記載例 |
---|---|---|
事実 | 気分が落ち込んだり、辛くなった出来事を、具体的に記載します。 5W1Hを意識して記載します。 | 昨日午後、上司とのオンライン会議において、ある会議用の資料をレビューしてもらった。たくさん指摘をされ、最後に「こんな資料ではダメだ」、「目的をわかっているのか」と言われた。 |
感情 | その時の感情を0~100%の数字で示します。 主観で評価します。 | 焦り: 80% 悲しい: 70% 怒り: 50% (感情ごとに0~100%で評価) |
思考 | 出来事に遭遇した時に、頭の中を駆け巡った思考を記載します。 気分ごとに考えると、書き出しやすくなります。 | 自分は仕事ができない。 何度も同じ注意を受けている。 これで今年の評価も良くない。 上司も、もっと丁寧に教えてくれればいいのに。 自分のこと嫌っているのか。 この人の下で働いていてもいいことない。 いっそ転職しようか。 (まずは思い浮かんだことを書き出し、感情ごとに整理) 焦り: このままこの会社にいてもダメだ、何とかしないと 悲しい:がんばってるのに、自分は仕事ができない 怒り: 教え方も悪いはずなのに、自分ばかり責める |
反証 | 反対の思考を記載します。 反対の思考の根拠になりそうなことを、自由に書き出します。たくさん挙げることが大事です。少しでも関係ありそうであれば、躊躇せず記載しましょう。 | 反対の思考: 上司から注意を受けることはあるが、自分は仕事ができないわけではない。 根拠: これまでの人事評価は際立って良くはないが、悪くもない。 過去、上司に褒められたこともある。 パワーポイントの資料は苦手だが、エクセルは得意だ。 細かい数値を分析するのが好きだ。 分析が求められる案件では、重宝されている。 基本的な統計が分かり、同僚に教えることがある。 データ分析のニーズは増えており、活躍の機会は増えてきそう。 現在、資格取得も目指しており、自分はがんばり屋だ。 |
感情 | ここまで振り返り、今の感情を評価します。 | 焦り: 50% 悲しい: 50% 怒り: 30% |
今の気持ちと小さな行動 | 今の気持ちと、実行できそうな小さな行動を記載します。 | いろいろ注意を受けたが、自分の良い点もある。目的に沿った資料を作成するために、はじめに骨子を紙に書いて目的に沿っているか確認しよう。 |
反証して思考を変えましょう!
思考を変えるにはセルフコーチングが有効です。弊社ではセルフコーチングを習得できる、セルフコーチングプログラムを提供しています。
メンタルを鍛える
さらにメンタルを鍛えたい方は、メンタルトレーニングがお勧めです。ストレスマネジメントはストレスが過剰になりすぎる前に、ストレスとうまくつきあう方法です。メンタルトレーニングは目標に対して最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、メンタルを強化する方法です。
誰でも、どこでも簡単にできるメンタルの鍛え方は、次の3つの方法です。
- 呼吸法: 深くゆっくり呼吸し、心身をリラックスさせる
- 内言法: 自分の心の中でポジティブな言葉を繰り返す
- イメージング法:心の中でポジティブな画像を描く
詳しくは、下記のブログを参照ください。
企業の対応
企業は、組織的なストレスマネジメントとして、以下の3点を実施する必要があります。
- ストレスの認識と評価:従業員のストレス要因を理解し、その影響を評価します。
- ストレス管理プログラム:従業員にストレスの仕組みや対処方法のトレーニングを提供します。
- メンタルヘルスへのサポート:従業員のメンタルヘルスの問題を支援します。
一方で、日頃の上司のかかわり方も重要になります。以下は、ストレスを抱えた部下へのかかわり方にで気をつける点です。
上司が気をつける点
上司は、ストレスを抱えている部下に対し、「ちゃんと理解しているよ」という態度で接することが大事です。その上で、本人が悩みや辛さを話し始めた場合、メンタルヘルスのサポートを紹介するようにします。
気をつける点 | 説明 |
---|---|
感情的に反応せず、責めるより理解する | ストレスを抱えている部下は、傷つきやすい状態にあります。こちらの言い分を伝えるより、話を聴き理解するように努めます。時には、部下が感情的になることもありますが、そこは我慢し、感情的に反応せず、傾聴を続けリラックスしてもらいます。 |
つまらない言い訳は気にしない | ストレスを抱えている部下は、言い訳が多くなります。失敗を恐れるあまりの言い訳ですので、言い訳に過敏に反応せず、長い目で見守ります。 |
相手を変えようとするより、自分の対応を変える | ストレスを抱えている部下は、視野が狭くなり、できない理由を探したり、否定的な反応をしがちです。説得しようとすると、逆に反感を買うことになりますので、こちらの接し方を変えるようにします。 |
感情に配慮した注意のしかたを心がける | ストレスを抱えている部下がミスをした場合、ミスの大きさ以上にネガティブな気持ちになりがちです。怒るのではなく、どうしたらいいか、どうすべきかを伝えます。 |
情緒的コミュニケーションを意識する | ストレスを抱えている部下は、余裕がなくピリピリしています。指示を出す場合には、一言「いつもありがとう」など、感謝の言葉をかけてあげると気持ちが楽になります。 |
議論はメールやSNSではなく対面で行う | ストレスを抱えている部下は、メールやSNSの文面から、勝手にネガティブな推測をしがちです。大事なことは、対面で伝えるようにしましょう。 |
まとめ
仕事や人間関係など、さまざまな要因によってストレスを感じることがあります。ストレスが大きくなると、心身に悪影響を及ぼします。そこで、ストレスに対処する方法や技術、ストレスマネジメントが大事になります。
ストレスは人の解釈により生まれまるため、思考を変えることで、ストレスを低減できます。以下は、誰でもすぐに実践できる方法です。
- ストレスに気づく
- 気分を変える
- 思考を変える
ストレスを溜めないことで、機嫌の良い毎日をおくることができます。ぜひ試してみてください!
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