- 若手がすぐ辞める
- 若手の考えが分からない
- 若手がなかなか成長しない
本記事は、こんな悩みや疑問を解決します。
新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)/厚生労働省によると、3年以内の離職率は、最も低い1000人以上の事業所かつ大卒者でも26.1%となっています。3年で約3割の新卒社員が離職する状況が続いています。
出所:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)/厚生労働省
本記事では、若手社員の育成が重要な理由、最近の若手社員の特徴、最近の上司の実態、若手社員の育成に不足していること、これからの若手社員の育成方法を解説します。すぐに若手社員の育成に不足していることを知りたい方はこちらです。
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目次
最近の若手社員の特徴
若手社員の育成が重要な理由
若手社員の育成が重要な理由は、早期の戦力化と定着化です。
- 労働人口の減少やビジネスの環境変化が早いため、若手社員を長期間かけ丁寧に育成することが難しくなっています。若手社員の仕事への意欲が高まるかかわりや育成を実行し、若手社員の早期戦力化を実現することが必要です。
- 若手社員に早期に離職された場合、コストの回収、将来の安定した人材ポートフォリオに支障をきたします。若手社員が企業活動に貢献していると感じ、評価され、モチベーションを高く維持し、組織に定着する環境を目指すことが必要です。
若手社員の代表Z世代の特徴
以前筆者がブログ『Z世代は扱いにくい?特徴、接し方や指導方法をわかりやすく解説』で紹介した日本のZ世代の特徴は、次のとおりです。Z世代とは、1990年代後半から2010年代前半までに生まれた方々ですので、2024年1月現在、会社では最も若い世代です。
項目 | 説明 |
---|---|
デジタルネイティブ | インターネットやスマートフォンなどのデジタル技術に慣れ親しんでおり、情報収集やコミュニケーションに活用しています 。デジタル技術を使った新しい働き方や学び方にも興味があります 。 |
多様性や社会問題に関心 | 多様性や社会問題に対して関心が高く、自分の意見や感情を表現したり、行動したりします 。自分らしさや個性を大切にするとともに、他者との共感や協力を重視します 。 |
目的や意義を求める | 自分の仕事や学習に対して目的や意義を求める傾向があります 。自分の能力や価値を高めるために、学習やスキルアップの機会を求め、社会的な貢献度や価値観を重視します 。 |
安定は自分で築くもの思考 | 日本のZ世代は、社会的に不安定な時代を生きてきたことから、安定した収入を得られる職種や職業を好む傾向があります 。一方でどこでも通用できる人間になりたい、起業家を目指したいといった方々もいます。安定は自分で築くものという意識が強いです。 |
プライベート重視 | 日本のZ世代は、仕事とプライベートのバランスを重視します 。仕事にすべてをささげるような働き方は好まず、自分の時間や趣味を大切にします 。 |
タイパ重視 | 日本のZ世代は、短い時間で効率的に成果を出すことが望ましいと考えます 。時間厳守や納期遵守などの時間管理能力が高く、無駄な会議や残業を嫌います 。 (タイパ:タイムパフォーマンス) |
Z世代は安定は自分で築くものといった意識があり、仕事に対し非常に真剣に向き合っているという傾向があります。
若手社員が上司に期待すること
「新入社員意識調査2023」/株式会社リクルートマネジメントソリューションズによると、若手社員が上司に期待することのトップ5は次のとおりです。
- 相手の意見や考え方に耳を傾けること
- 一人ひとりに対して丁寧に指導すること
- 好き嫌いで判断しないこと
- よいこと・よい仕事をほめること
- 職場の人間関係に気を配ること
出所:「新入社員意識調査2023」/株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
若手社員は上司に対し、自分の成長を促すかかわりを求めています。自分を認め、自分に合った指導を欲しているようです。
伊集院
筆者が新入社員だった30年前は、上司は絶対で、頭を下げて教えていただく存在でした。何でもかんでも聞くと「自分で調べろ!」とどやされました。こちらの話を聴く姿勢はなく、褒められたことはなく、夜や休日の付き合い方でえこひいきされる世界でした。隔世の感がありますね。
最近の上司の実態
上司の95%がプレイングマネジャー
次に若手社員を指導する上司の実態を見ていきたいと思います。 上場企業の課長に関する実態調査(第7回)/学校法人産業能率大学総合研究所によると、約95%の課長がプレイングマネジャーです。プレイヤーの割合が41~50%の課長が約20%います。
出所:上場企業の課長に関する実態調査(第7回)/学校法人産業能率大学総合研究所
上司が強化したいのは部下育成の力
同じく上場企業の課長に関する実態調査(第7回)/学校法人産業能率大学総合研究所によると、上司が今後強化したい能力・知識のトップは「部下を育成する力」です。「部下を率いていく力」「部下を適正に評価する力」を合わせると、部下に関することが64%を占めています。
出所:上場企業の課長に関する実態調査(第7回)/学校法人産業能率大学総合研究所
上司は部下に丁寧に接している
さらに上場企業の課長に関する実態調査(第7回)/学校法人産業能率大学総合研究所によると、50%を超える上司が次のように傾聴、ひいきしない、否定しないなどの施策を実施しています。
- 日ごろから職場メンバーの話を聞くときは、相手の話をさえぎらず傾聴している
- 特定のメンバーをえこひいきしたりせず、公平に接している
- メンバーの多様な価値観を否定せず、受け入れている
出所:上場企業の課長に関する実態調査(第7回)/学校法人産業能率大学総合研究所
若手社員の育成に不足していること
ここからは若手社員の育成において、不足していることを考えていきます。
上司は若手の期待を実践している
統計資料を基に若手社員と上司の関係を整理すると、次のようになります。
若手社員が上司に期待すること | 上司が部下に実施していること |
---|---|
・相手の意見や考え方に耳を傾ける ・一人ひとりに対して丁寧に指導する ・好き嫌いで判断しない ・よいこと、よい仕事をほめる ・職場の人間関係に気を配る | ・日頃から部下の話を傾聴している ・多様な価値観を否定せず受け入れている ・部下はえこひいきせず公平に接している ・感謝やねぎらいの言葉をかけている ・日頃からメンバーを観察 |
こうして見ると、若手社員が上司に期待していることを、多くの上司が実践していることが分かります。
若手社員がワクワクする機会を提供する
部下が期待していることを上司は実践していますが、上司が今後強化したい能力は「部下を育成する力」です。3年間で約3割の若手社員が離職する状況も以前と変化はありません。では部下育成に不足していることは何でしょうか?
人は他者からの指示や強制ではなく、自らやりたいと思ったことに対し侵食忘れて取り組み、最高のパフォーマンスを発揮することができます。そう考えると、部下にワクワクできる機会を提供できているかが重要です。さらに結果が実感できると、より充実感を得ることができます。
伊集院
筆者の若い頃を振り返ると、その時の自分にとって少し高い難易度の案件をまかされ、自由にやらせてもらえた期間が、最も充実していたと感じます。
若手社員一人ひとりに向き合う
今の若手社員は、仕事が合わなければ転職を検討するのが普通になりました。「自分たちの時はこうだった」「仕事は見て学ぶものだ」では通用しません。若手社員一人ひとりにワクワクできる機会を提供できるかが問われています。そのためには次の取り組みが必要です。
- 一人ひとりの価値観を理解する
- 一人ひとりの強みを理解する
- 強みを活かし価値観が満たされる場を提供する(ワクワクできる場)
「そんなの各自が自分で考えることだろ」という声が聞こえてきそうです。筆者も中高年なので、その気持ちは良く分かります。もちろん勝手に育ち会社に貢献する人はいつの時代も一定数います。しかし今の時代、大半の若手社員はこれまでのかかわり方では、戦力として定着しません。
これからの新入社員の育て方も知る
これからの若手社員の育成方法
上司だけの育成は限界にきている
ここまで若手社員の育成に不足していることを検討してきました。半数の上司は若手社員が求めていることを実践しています。しかし若手育成が上手くいっていないのは、テクニックが先行し、若手社員一人ひとりの価値観や強みの理解に至っていないのではと考えられます。
人間の想いや価値観を理解するには、深い信頼関係をベースに、コミュニケーションを通じて相手の心の理解に努める必要があります。ただ今の職場は次のような環境にあります。
- 管理職はプレイングマネジャー
- 上司と部下の密なつながりは喪失
- 会社員の安定が崩壊
- 会社外での活動が拡がる
- 転職が普通になる
- 寿命が延び定年後も働く
- 仕事にAIが浸透
このような環境の下、上司の育成難易度は、劇的に上がっています。上司だけの育成には限界がきていると言えます。筆者は企業の従業員に1on1コーチングを提供していますが、自分の価値観を知り、できなかった行動ができるようになるには半年かかります。人が自分の内面と向き合い変わっていくには、一定の時間が必要です。
育成は社内外の中高年を活用する
筆者の考える育成は、社内外の経験豊富な中高年を活用するアイディアです。中高年になると、人は後継者や若手を育てる指向が強くなると言われます。中高年が若手社員と信頼関係を築き、価値観や強みを言語化し、ワクワクできそうな場や機会を会社や本人に提案します。もちろん部下育成の一義的な責任は直属の上司にありますが、経験豊富な中高年が側面から支援します。
具体的には社内にキャリアサポートチームや人材育成チームなどを設置し、中高年社員が社員の相談役、メンターになります。現業を持たない中立的な立場です。相手の話を丁寧に聴きる穏やかな人が向いています。キャリアコンサルタントの資格を取得したり、心理学を学ぶことで、優れたメンターになることが期待できます。
社内に人材がいない場合は社外人材を活用します。力のあるキャリアコンサルタントやコーチと契約し、若手人材の育成を側面から支援してもらいます。例えば次のような取り組みが考えられます。
- 仕事で悩んでいる社員に公募でコーチングを提供する(目標を設定し効果を確認)
- 上司が指名した社員にコーチをつける(目標を設定し効果を確認)
- 仕事で悩んだ時に誰でも自由にキャリアコンサルタントに相談できる
当社のセルフコーチングプログラムは、半年間の従業員向けコーチングです。行き詰りを感じていた多くの従業員が、セルフコーチングを身に着けることで、一皮むけたように成長していかれています。詳しくはこちらです。
定年前後の中高年のモチベーション低下が問題となっていますが、中高年は若手社員の心の支えとなり得ます。中高年、若手社員の双方にメリットがある、このような取り組みが拡がることを期待します。
まとめ
本記事では、若手社員の育成が重要な理由、最近の若手社員の特徴、最近の上司の実態、若手社員の育成に不足していること、これからの若手社員の育成方法を解説しました。
若手社員が上司に期待していることを、多くの上司が実践しています。しかし上司が今後強化したい能力は部下を育成する力であり、3年間で約3割の若手が離職する状況も以前と変化はありません。部下にワクワクできる機会を提供でき、結果が実感できることが大切です。そのためには若手社員に対し次の3点を実施する必要があります。
- 一人ひとりの価値観を理解する
- 一人ひとりの強みを理解する
- 強みを活かし価値観が満たされる場を提供する
一方で上司の育成難易度は劇的に上がり、上司だけの育成には限界がきています。そこで筆者は次の取り組みを提案します。
中高年が若手社員のメンターとなり、若手社員の価値観や強みを理解し、ワクワクできる場をコーディネートする
環境が激変する世界で生き残るには、固定観念にとらわれない柔軟な対応が大切です。10年前までは、今はパワハラで訴えられることやサービス残業が普通に会社で行われていました。当たり前、常識と思われていたことは、時代が変われば非常識になります。変化にあわせ、柔軟に考え試し、修正しまた試す、この繰り返しにより自社に最適な解を探し求めることが必要です。
本記事が、若手社員の育成に悩む会社や上司の方にとって、少しでもヒントになれば幸いです。
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