非認知能力とは?重要性と高める方法を解説

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  • 非認知能力とは何?
  • 非認知能力を高める方法は?
  • 大人でも高められるの?

本記事は、こんな悩みや疑問を解決します。

文部科学省は、「中央教育審議会 初等中等教育分科会 幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会 ―第2回会議までの主な意見等の整理」において、認知能力に加え、非認知能力の育成の必要性に触れています。

(認知能力・非認知能力)

○ 認知能力とは知的な力で、知識・技能、思考力等を含む。非認知能力は、意欲・意志、自覚し見渡す力、人と協力する力等を含む。乳幼児期・学童期・思春期を通して育つ。認知と非認知は相互に関連し、支え合って育っていく。1つの活動の中に認知面と非認知面が必ず含まれ共に育つ。資質・能力の基礎を保育のプロセスとして捉え、意欲を持って取り組み(学びに向かう)、様々なことを見いだし(気づき)、試行錯誤しながら工夫すること(思考力の芽生え)が生まれ発展していく。

○ 非認知能力とは、主に意欲・意志・情動・社会性に関わる3つの要素(①自分の目標を目指して粘り強く取り組む、②そのためにやり方を調整し工夫する、③友達と同じ目標に向けて協力し合う。)からなる。 特に幼児期(満4歳から5歳)に顕著な発達が見られ、学童期・思春期の発達を経て、大人に近づく。気質差、個人差が大きい。自己をコントロールすることが基礎にあるが、認知と非認知の両面を必要とする。教育を通して育成可能性がある。

*太字は筆者
出所:中央教育審議会 初等中等教育分科会 幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会 ―第2回会議までの主な意見等の整理

このように教育においては、論理的思考など認知力だけでなく学びに向かう力など非認知能力の重要性が指摘されています。もちろん幼少期の教育が重要ですが、非認知能力は大人になってからも身につけることが可能です。

本記事では、非認知能力とは、大人が非認知能力を高める理由と方法について解説します。

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非認知能力とは

非認知能力の定義

非認知能力とは、学力テストや知能指数(IQ)で測定できる認知能力とは異なり、目標達成や人間関係、自己管理に関連するスキルや特性です。目に見えない形で人間の行動や判断に影響を与える、社会的・感情的スキルで、成長し続けるための土台となります。具体的には以下のような能力です。

文科省の定義非認知
能力例
説明
①自分の目標を目指して粘り強く取り組む自己制御力衝動や感情をコントロールし、目標達成に向けて行動を続ける力。ストレス下でも冷静に対処できる。
忍耐力困難な状況や長期的な目標に向けて努力を続ける力。プロジェクト完遂のために継続的に努力できる。
②そのためにやり方を調整し工夫する問題解決力複雑な状況や課題に対して効果的な解決策を見つけ出す力。トラブルにも適切に対処できる。
③友達と同じ目標に向けて協力し合う共感力他者の感情や立場を理解し、それに基づいて行動する力。相手の意見に寄り添いコミュニケーションできる。
チームワーク他者と協力しながら共通の目標を達成する力。リーダーシップと協調性を発揮できる。

非認知能力の重要性

ノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・J・ヘックマンらの研究チームが、幼児期の特別な教育が及ぼす影響について発表しました。社会的リターンをもたらしている要素は、IQテストで評価されてきた能力(認知能力)ではなく、IQテストで評価されてきた能力以外の能力(非認知能力)であるとしました。

ジェームズ・J・ヘックマンの研究概略が、こちらの論文で分りやすく触れられていますので、ご紹介しておきます。

子どもの貧困と学術研究の隠れた枠組み/佐々木宏子
コーチ
伊集院

筆者は数年前まで、非認知能力という言葉を知りませんでした。ただ、自ら考え動く、目標に向かって努力し続ける、うまくいかなくても諦めない、結局人はこうした力で決まると感じていました。とはいえ、「主体的に動け」「もっと努力しろ」「諦めるな」と言われても、なかなかできるようになりません。この辺りが難しいところです。

非認知能力と社会人基礎力

非認知能力は、経済産業省が提唱する「社会人基礎力」と深く関連しています。社会人基礎力は、以下の3つの能力群に分類され、職場や社会で主体的に働き、チームとして成果を上げるための能力です。

  1. 前に踏み出す力: 主体性やチャレンジ精神、実行力です。前述の自己制御力や忍耐力が該当し、次の能力から構成されます。
    • 主体性
    • 働きかけ力
    • 実行力
  2. 考え抜く力: 論理的思考力や創造力です。前述の問題解決力が該当し、次の能力から構成されます。
    • 課題発見力
    • 計画力
    • 創造力
  3. チームで働く力: コミュニケーション能力や状況把握力、規律性です。前述の共感力やチームワークが該当し、次の能力から構成されます。
    • 発信力
    • 傾聴力
    • 柔軟性
    • 状況把握力
    • 規律性
    • ストレスコントロール力

社会人基礎力は、非認知能力を仕事において実践できる形で表現したものです。詳しくは↓をご覧ください。

大人が非認知能力を高められる理由と方法

非認知能力は、子どもの頃に形成されるだけでなく、大人になってからも十分に鍛えることができるとされています。(日本生涯学習総合研究所

しかし、自分に不足している部分に気づき、周囲の人からの助言を受け入れ、他者の優れたところを吸収するなどして、考え方、姿勢、行動を変えていくことで、大人になってからでも伸ばせる能力はたくさんあるはずです。 アメリカの心理学者アンジェラ・L・ダックワースは、成功者に共通するGRIT(やり抜く力)の指標を提唱し、「非認知能力」は、大人になっても身に付けることができると言っています。

*太字は筆者
出所:日本生涯学習総合研究所

脳の可塑性や習慣の力を活用することで、非認知能力を向上させることが可能です。以下にその理由と具体的な方法を紹介します。

大人でも非認知能力が向上できる理由

  • 年をとっても知能は向上する

人間は年を経るごとに、流動性知能は減少しますが、結晶性知能は向上します。流動性知能とは、文字や図形を使った関係の操作や推理(情報処理)を素早く行う力です。結晶性知能とは、経験を通して獲得された一般的知識や問題解決能力、言語能力です。対人支援、接客や教育などの分野は、年齢に関係なく能力を向上させ活躍することが可能です。

  • 謙虚に自分自身に向き合える

良いことも悪いことも、様々な経験を経ることで、人の痛みが理解できるようになります。自然と、感謝する気持ち、人を思いやる気持ちが大きくなります。謙虚に自分自身を振り返ることが可能となり、自分の良い点とともに弱点も認識し、他者と競わず、他者の目を気にし過ぎず、自分のペースで前に進んでいくことができます。

非認知能力を高めるポイント

筆者の考える非認知能力を高めるポイントは、安心と小さな成功です。

安心

人は安心できることで、自分に素直になれ、本来もっている力を発揮できるようになります。

小さな成功

何かをやるには継続が必要で、それには小さな挑戦を繰り返しながら、小さいながらも成功体験を積み重ねることです。

     

非認知能力を改めて見てみます。文科省の定義と経産省の社会人基礎力です。

  • 自分の目標を目指して粘り強く取り組む: 前に踏み出す力
  • そのためにやり方を調整し工夫する: 考え抜く力
  • 友達と同じ目標に向けて協力し合う: チームで働く力

非認知能力は、特別な才能が必要なものではなく、何十年も努力し続けなくてはいけないものでもありません。日常のちょっとした意識です。ただ、本心に逆らい無理しても続きません。例えば、次のようなケースです。

  • ブログを20本書いたが、アクセス数が上がらず書くのを止めた
  • 営業目標を達成できないのは景気が悪いせいと考え、特別に何か手を打つことはなかった
  • プロジェクトチームに意見が合わないメンバーがいるので、やる気がなくなり関与時間が減った

一度だけ実行するのは簡単ですが、習慣化となると、一気にハードルが上がります。そこで、安心が必要になります。心が安らかでいると、過去や未来のことを思い悩まず今に集中でき、行動が楽しく感じられます。

何事も一発でうまくいくことはないので継続が必要です。小さなことに取り組み、成功体験を積むことで、継続できます。小さなことなので、失敗を恐れず、実験のつもりで挑戦できます。毎回うまくいくことはありませんが、やったことから情報を収集し、次につなげていくことが可能です。

非認知能力を高める方法

非認知能力を高めるには、まず安心して行動し、小さな成功を手に入れることです。

人は分らないから不安になります。安心するためには、分ることです。ただ、人には事実をネガティブに解釈しやすい特性があります。事実はできるだけ客観的に受けとめることが大切です。問題が明らかになり、対策が自ずと見えてきます。次のステップにより、安心と小さな行動が実現できます。

  1. 自分の感情を知る
    • 人は感情が安定している、つまり機嫌が良い状態の時に、最もパフォーマンスが上がります。思考を司る前頭前野と感情を司る扁桃体は、同時に起動することはできないため、扁桃体が反応していない時に、思考を司る前頭前野の働きが活発になります。そこで、まず自分の感情の状態を知ることから始めます。
  2. 自分の思考を知る
    • 感情とあわせて、自分の思考を知ります。ネガティブな感情の時、自分は何を考えていたのか、どんな妄想をしていたのかと、自分の思考を思考します。頭で考えているだけでは、なかなか自分の思考を理解することはできません。原始的な方法と思われるかもしれませんが、紙に書くことが最良の方法です。
  3. 異なる考えに気づく
    • 人は生存本能から、事実をネガティブに解釈しがちです。特に現代日本のような命の危険のない世界では、これをしなければならない、失敗してはいけないといった環境の圧力や人間関係の些細なもめ事に感情が反応するようになりました。友人にアドバイスする気持ちで考えたり、反証などを通じて、異なる考えに気づきます。
  4. 小さなことをやってみる
    • 実験のつもりで失敗してもよいと考え、小さな行動を繰り返します。意識するだけではだめです。とにかく、小さなことでよいので動くことです。動くと反応があります。反応が良くないときは、別の方法を試します。何度か試すうちに、必ずうまくいくことがあります。小さくてもこれが自信となり、継続を後押しします。

非認知能力を高めるシート

筆者の考えた、非認知能力を高めるシートをご紹介します。感情が下がった時に、このシートを書くことで、物事を客観的に見れ、小さいながら行動できるようになります。何度か繰り返すうちに、安心と小さな成功が実現できてきます。

(希望者にはPDF版をお送りします。こちらよりお願いします)

記載例です。

項目説明記載例
①ここ最近の悩みは?気分が落ち込んだり、辛くなった出来事を、具体的に記載します。5W1Hを意識して記載します。昨日午後、上司とのオンライン会議において、ある会議用の資料をレビューしてもらった。たくさん指摘をされ、最後に「こんな資料ではダメだ」、「目的をわかっているのか」と言われた。
②感情は?その時の感情を0~100%の数字で示します。主観で評価します。焦り:80%  悲しい:70%  怒り:50%
(感情ごとに0~100%で評価)
③その時の思考は?出来事に遭遇した時に、頭の中に思い浮かんだ思考を記載します。自分は仕事ができない。何度も同じ注意を受けている。
これで今年の評価も良くない。上司も、もっと丁寧に教えてくれればいいのに。自分のこと嫌っているのか。やっぱり自分は仕事ができない。
④異なる考えに気づく想像してみましょう。
・友人になったつもりで
・奇跡がおきたとしたら
・最悪の状況は
・「資料の品質を上げるためのコメントだよ、考えすぎ」
・指摘された時、人格否定されたように悩まなくなる
・最悪でも、何か危害があるわけではなく、自分が気になるだけ
⑤もっと気づく⁉反対の思考を記載します。反対の思考の根拠になりそうなことを、自由に書き出します。たくさん挙げることが大切です。少しでも関係ありそうであれば、躊躇せず記載しましょう。【反対の思考】
上司から注意を受けることはあるが、自分は仕事ができないわけではない。
【根拠】
これまでの人事評価は際立って良くはないが、悪くもない。過去、上司に褒められたこともある。パワーポイントの資料は苦手だが、エクセルは得意だ。細かい数値を分析するのが好きだ。分析が求められる案件では、重宝されている。
⑥実験してみる実行できそうな小さな行動を記載します。目的に沿った資料を作成するために、パワポ作業の前にノートに骨子を書いて目的に沿っているか確認しよう。

非認知能力を高める取り組みは、EQのトレーニングにもつながります。EQについては、↓ブログをご覧ください。

まとめ

本記事では、非認知能力とは、大人が非認知能力を高める理由と方法について解説しました。以下は、文科省の定義する非認知能力と経産省の社会人基礎力です。

  • 自分の目標を目指して粘り強く取り組む: 前に踏み出す力
  • そのためにやり方を調整し工夫する: 考え抜く力
  • 友達と同じ目標に向けて協力し合う: チームで働く力

非認知能力は、特別な才能が必要なものではなく、何十年も努力し続けなくてはいけないものでもありません。日常のちょっとした意識です。ただ、本心に逆らい無理しても続きません。非認知能力を高めるポイントは、安心と小さな成功です。

  1. 自分の感情を知る
  2. 自分の思考を知る
  3. 異なる考えに気づく
  4. 小さなことをやってみる

非認知能力は、仕事だけでなく、より良い人生を生きる上でも必要です。安心し、小さな成功を積み上げることで、誰しも能力を高めることができます。本記事で紹介したシートを参考に、ぜひ小さなことから取り組んでみてください。

    

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ピープルエナジー代表 伊集院正

22年間、⾦融IT・リスクのコンサルティングに従事。ITリスクチームの拡大や金融セクター設立に貢献。この間、優秀な多くのコンサルタント育成に関与。2020年、国家資格キャリアコンサルタントを取得。2021年に⼈材コンサルティングを開始し、企業の従業員や働き手に対し、心理学の理論を活用したコーチングを提供中。
   
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