1on1話すことがない?今のままでは意味ない?組織の成熟度に応じた改善方法を解説

法人のお客様ー人的資本経営

1on1の初期は、業務内容など話しやすいことを話題にします。上司部下の信頼関係が強くなってきたところで、部下のキャリアや本音トークを交えたものに、話題を変えていきます。

近年は、在宅勤務の拡がりにより、上司と部下が直接顔を合わせない日が増えました。仕事のコミュニケーションが、メール、チャット、オンライン会議を通じて実施されるようになり、対面の会話が減りました。

そこで、コミュニケーションを補完する仕組みが求められるようになり、1on1が拡がってきました。『1on1ミーティングに関する実態調査2022(リクルートマネジメントソリューションズ )』によると、2022年1月時点で、67.7%が1on1を導入しています。

一方で、1on1で「話すことがない」「やめてほしい」といった声を聞くことがあります。本記事では、1on1の目的や背景に加え、1on1を導入するに際し職場の状況を3つのステージに分け、最適な取り組み方法を解説します。

   

   

   

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目次

1on1とは                             

1on1とは、上司と部下の一対一のミーティングです。上司と部下の面談は、人事評価面談が代表的ですが、1on1とは、目的、方法が異なります。

人事評価面談は、評価結果をフィードバックし、課題を意見交換する場です。私事で恐縮ですが、私は会社員30年間で、60回を超える人事評価面談を受けましたが、いずれもドキドキしながら望む、嫌なミーティングでした。

今でも記憶に残るのは、昇格できなかった時、上司から「お前は性格がなぁー」と言われたことです。私は、上司に対する報連相が苦手で、自分で勝手に仕事を進める可愛げのない部下だったのです(笑)。  

これは特別な例かもしれませんが、多かれ少なかれ似たような思いを持たれている方も、多いのではないでしょうか。

   

本来の1on1の目的は、コミュニケーションを補完し、信頼関係を強固にすること

1on1の目的は、コミュニケーションの補完です。

コミュニケーションの語源は、ラテン語の「communicatio」と言われ、「共有する」という意味です。片方からの伝達ではなく、両者で共に有するという、双方向のやり取りが想定されています。1on1の役割は、共有のサポートです。共有なので、上司から一方的に指示、指摘するのではなく、二人の対話が原則となります。次のように、双方に関係あるテーマ、共有することが必要テーマが対象となります。では、なぜそこまでして、コミュニケーションを補完する必要があるのでしょうか?

  • 会社の方針
  • キャリア
  • 仕事の進め方

それは、変化が早く競争の激しい経営環境において、新しいビジネスを創出し続けることが求められる昨今、成し遂げるには、社員間の強い信頼関係が必須となるためです。1on1は、この信頼関係を強固にするのです。

1on1は、短い時間で、高頻度で実施

1on1は、週一回、月一回など、短いサイクルで実施するのが一般的です。ミーティングの長さは、15~30分と、短い時間が推奨されています。

これは、心理学者ロバート・ザイオンスが1968年に発表した、特定の人物や物事に何度も繰り返し接触することで、好感度や評価が高まっていくという理論が基になっています。親近感を抱くことで、コミュニケーションが活発になることが期待されています。

1on1が注目される背景                       

1on1の発祥は、米国シリコンバレーといわれています。米国では、国土が広いため、かねてより電話会議が多様されていました。現在はオンライン会議が活用されていますが、私がコンサルティング会社に入社した25年前から、頭出しはメールで行い、詳細は電話で会話するといったやり方が、よく行われていました。

デジタルが進展により、さらに直接顔を会わせる機会が減少し、対策として1on1が生まれたと言われます。国内では、ヤフー株式会社が、コミュニケーションの補完を目的に、2012年に始めました。コロナ禍を経て、在宅勤務が拡がり、近年は多くの企業が1on1を取り入れるようになりました。

1on1は、当初コミュニケーションの補完を目的として、取り入れられてきましたが、導入企業が増えるにつれ、部下の悩み相談、キャリア相談、コーチングなどにまで、役割が拡大してきています。

1on1が目指すもの                         

 

1on1の当初目的は、直接顔を合わせる機会が減った、上司部下のコミュニケーションの補完にあったと述べました。では、毎日対面で仕事をしていた時代は、コミュニケーションがスムーズで、上司と部下の信頼関係は構築されていたのでしょうか?

私が社会人になった33年前、上司と机を並べ仕事をし、ランチも一緒というのが一般的でした。メールもネットもないので、分からないことや連絡は、会話か電話でした。このように、30年前は、一日中、顔を突き合わせて、仕事をしていましたが、だからといって、全ての上司と強固な信頼関係が構築されていたかというと疑問です。

そこから言えるのは、信頼関係は、コミュニケーションの回数や方法ではなく、お互いが人として敬意をもって接しているかによるということです。人と人が、相手に愛情をもって接することで、良いコミュニケーションが取れ、信頼関係を築くことにつながるのではないでしょうか。

1on1の目的は、コミュニケーションを補完し、信頼関係を強固にすることです。その前提として必要なことは、相手に、愛情を持って接することです。1on1が目指すものは、まさにこれです。

職場のステージに合わせて取り組む                  

1on1は、上司部下の信頼関係の程度により、取り組み方が変わってきます。部下がすぐ辞める、部下は言われた以上のことはやらない、部下はやる気に満ちている、様々な職場があります。

部下の退職が多い職場で、1on1をやっても、「話すことがない」「やめてほしい」「意味ない」と言われてしまいます。職場の信頼関係の程度に基づき、打ち手を考えることが大切です。

ここでは、職場の信頼関係を3つのステージに分け、それぞれの取り組み方法を考えます。

   

ステージ1:部下は転職活動にいそしむ

部下は上司や職場を全く信頼しておらず、良い職場があればすぐにでも転職したいと考えています。上司から部下に対し強権的(理不尽な異動や評価など含む)な行動がある、または上司が部下を駒のように扱っているような職場です。

    

ステージ2:部下とは問題はないが、相談はされない

部下は上司や職場に大きな期待をしておらず、お金のために仕方なく働いていると考えています。上司は、部下の育成やキャリアに関心が薄く、自分のことで精一杯です。9割の管理職がプレイングマネジャーと言われる中、このような職場は数多く存在します。

   

ステージ3:部下からキャリアのことを相談される

部下は、自分の夢ややりがいを実現すべく、自発的に行動しています。給与も大事だが、仕事そのものに充実感を感じて働いています。上司は、日々部下の動きを意識して見守り、組織と部下の成長を両立できています。  

S1:部下は転職活動にいそしむ                    

目指すは、人を大切にする社風

パワハラと意識していないかもしれませんが、理由が説明されない異動、成績は残しているのに評価が低いなど、部下はこうした出来事を、会社からの理不尽な圧力として、敏感に感じ取っています。

ある方は、役員に口答えしたため、希望していない部署に、突然異動させられました。上司に説明を求めても、人事発令だからの一言ですまされ、転職活動を始めました。「この会社で信頼できる上司はいない」と仰っており、これでは一緒に働いている周りの方にも、悪影響を与えることになります。

また私事で恐縮ですが、私も新入社員の時、役員からの休日の誘いを、家族都合でお断りしたことがあり、評価が下がった経験があります。

転職が当たり前になり、若手が減少している現在、ちょっとした威圧的な対応が、企業にとって大切な人材を失うことになります。こうした職場は、社員が雰囲気を感じ取り、良い会社があれば、いつでも転職しようと、常に転職活動を行っています。

まずは、上司部下が信頼関係を築くための基盤をつくることが大事です。人を大切にする風土を、全社的に浸透させる必要があります。

トップが人を大切にするメッセージを発信する

人を大切にする社風をつくるためには、トップが全社員に向け、「当社にとって社員は宝、当社は人を大切する」というメッセージを発信する必要があります。一度きりではなく、事あるごとに、メッセージを発信し、社内報やポスターなどを使い、広報活動も実施します。

管理職に傾聴の研修を実施し、今までのコミュニケーションとの違いを理解してもらう

役員、管理職を対象とした、コーチングや傾聴の研修を実施します。ロープレも実施し、体感してもらいます。できることを目指すのではなく、これまでのコミュニケーションとの違いを理解してもらいます。違いを理解することで、部下に接する際に、意識するようになります。

会社が社員を大切にしていることを行動で見せる

会社が、本気で人を大切にしようとしていることを、行動で示します。評価制度に人材定着率を追加する、表彰制度を設ける、社内外の研修を増やすなど、具体的な施策を導入します。

このように、社風改革の取り組みを続け、人を大切にする風土が醸成されてきたところで、ステージ2へと進みます。   

S2:問題はないが、相談はされない                  

目指すは、管理職の意識改革

上司、部下の間は、平穏で、一見、なんの問題もないように見える職場です。上司はプレイングマネジャーとして多忙で、部下も一定の仕事をこなしていることから、上司には、職場のコミュニケ―ションはスムーズで、信頼関係が構築できていると感じられるかもしれません。

しかし、部下は、「忙しい上司に相談するのは申し訳ない、相談しても困るだろう」と思っている場合があります。実際に相談したとしても、上司は忙しく、丁寧な対応を取ることができず、対処療法的な回答しかできない可能性があります。

この状況が続くと、静かに退職する人が増えてきます。上司は、何が悪かったのだろうと、戸惑うばかりです。このような職場は、管理職が、部下一人一人に対し、愛情をもって接する機会をつくることが大事です。管理職一人一人の意識改革を実施し、人を育成するマインドセット、育成に必要な行動を理解してもらいます。

人材育成のマインドセットを身に着ける

人は、「認めてもらっている」という感覚を持つことで、自己肯定感が高まり、何事にも積極的に挑戦できるようになります。部下がこの感覚を持つには、上司が、部下に愛情をもって接する必要があります。

とにかく、どんな部下でも、上司は「自分は部下が好きだ」と思い込みます。「自分は部下が好きだ」と思いながら仕事をしていると、たとえ反抗的なところがあっても、「かわいいやつだ」と思えるようになってきます。

部下を意識して見守る

上司は、部下の仕事ぶりを、意識して見守ります。「いや、いつも見ているよ」と思われる方も多いかもしれませんが、意識することが大切です。

例えば、毎日、部下の予定表を見て、各人の行動の特徴や仕事の進め方が把握します。仕事中は、意識して部下の様子を見ます。意識していると、「A君は、眠そうにしているな。プライベートで何かあったかな」「Bさんは、ずっーとけわしい顔しているな。何かに悩んでいるかな」と、相手の気持ちを想像するようになります。

ただ眺めるのではなく、意識して観るです。

否定しない、意見しない、1on1を実施する

ここでようやく1on1の登場です。テーマは、部下に委ねますが、議題は業務中心でもかまいません。無理に、個人のキャリアや悩みの本年トークにこだわる必要はありません。業務の進捗、課題やリスクなどに加え、業務に対する個人的な考えや想いを話してくれれば、満点です。

チームミーテイングでは発言しなくても、一対一になると、疑問や意見を話してくれることがあります。大事なのは、否定せず、意見せず、ただ聴くです。「ほぉー、そうなんだ」「うん、うん」「ふーん、そう考えているんだ」と、いった具合です。

実際やってみると分かりますが、これは、簡単なようでとても難しいものです。沈黙も怖がらず、話し出すまで辛抱強く待ちます。意識して何回も取り組むことで、次第にできるようになります。

1on1、話すことがないと言われたら?

話題がないと言われた時は、部下を観察している中で気付いたことを、上司から投げかけてみましょう。「最近、集中して仕事してるね」といった感じで、部下としては見てくれてるんだと思い、話しやすくなります。

意識して見守っていると、必ず何かしら気づきがあり、そのことを部下に伝えると対話が促進され、信頼関係が強化されていきます。こうしたやり取りを続けていくことで、部下は、認めてもらっているという気持ちになっていきます。

S3:キャリアのことを相談される                  

目指すは、部下の成長の支援

部下が、仕事の悩みやキャリアのことを、抵抗なく上司に相談できている職場です。一人一人が、プロとして自律しながらも、チームワークを大切にしながら動ける組織です。トップ、役員、管理職からの全ての発信に、人を大切にする考えが貫かれています。決して社員を甘やかすのではなく、成長意欲のある人を、全力で応援するスタンスです。

ただ、人は常に順風満帆ではありません。パフォーマンスには波があり、スランプに陥ることもあります。上司には、部下が常に一定の良い状態を維持できるよう、傾聴やコーチングを駆使した1on1が求められます。上司は、コーチングや傾聴のスキルを磨き、1on1において部下の成長を支援します。

1on1では、部下の話を傾聴し、信頼関係をより強固にする

管理職が傾聴をマスターし、1on1で実践します。日常の仕事では、部下の話を聞き、問題の原因を特定し、迅速な解決が求められます。傾聴は、部下の話を聴き、問題など物事を対象とするのではなく、部下を人として理解し受け入れ、内省を促すことが目的となります。

コミュニケーションの対象が、物から人に変わります。「いつも人として対話しているよ」と思われるかもしれませんが、日常の会話では、自然と”話題”に意識が向いていきます。

キャリアの相談であれば、「Aさんは、〇〇の経験をしてきていて、△△が得意だから・・・」など、話題に沿って考え、つい何か解決のヒントをアドバイスしようとなります。業務上のやり取りであればこれで良いのですが、相談や1on1では、部下に内省を促すことができません。

人は、自分で気づいて、はじめて真剣に取り組みます。人に言われたことは、参考にしつつも、本気で取り組む気持ちにはなりにくいものです。自分で気づくには、自分の心を省みる、内省が必要となります。この内省を促すのが、傾聴です。

傾聴は、技法の前に、相手への愛情が必要

傾聴でも大切なのは、相手に愛情をもって接することです。愛情がないまま、技法だけ使用すると、必ず相手に伝わり、逆に信頼関係を壊してしまいます。愛情をもって接しながら、相手の話を否定せず、意見せず、話を折ることなく、聴きます。

相づちと伝え返しにより、相手の内省を促します。例えば、入社したばかりの社員から「職場になかなか慣れず、ちょっと向いてないかなと・・・」と相談されたとします。「そっか、職場になれず、向いていないと思い始めたんだね」と返します。

人は、具体的な経験を語ると、その時の場が頭の中に再現され、感情と思考が蘇ってきます。相手の話が途切れたところで、職場に慣れず向いていないと感じた経験を話してもらい、その時どんな気持ちだったか問いかけます。感情や気持ちを対象に何度か問いかけることで、部下が内省のきっかけを得て、自分の気持ちを話しだします。

1on1では、コーチングにより、部下に内省のきっかけを与える

部下の成長をサポートするコーチングをマスターし、1on1で実践します。傾聴を基本としながら、部下に対する見立てに基づく問いかけを行い、対話から見立てを修正し、また見立てに基づき問いかける、これを繰り返します。

例えば、先ほどの「職場になかなか慣れず、ちょっと向いてないかなと・・・」の方には、具体的な経験を語っていただき、その時の感情と思考を尋ねます。感情に動きがあった時は、必ず「依頼された仕事がうまくいかなかった。こんな仕事もできない自分は、この会社ではやっていけないと思った」など、何らかの思考が隠れています。

この時、思考の論理が飛び過ぎていることに、注意を向けます。一度、仕事がうまくいかない経験が、会社でやっていけないことにはつながりません。何度か問いかけを続けることで、自分が勝手に決めつけていることに、少しづつ気づき始めます。

弊社のじぶんコーチングトレーニングを受講することで、内省が促され、仕事のパフォーマンスが向上します。詳細は、こちらをご参照ください。

1on1では、コーチングにより、部下の成長を支援する

感情が上向きに動いた経験を聴くケースもあります。「自分は何に向いているのか分からない」「やりたいことが分からない」といった相談です。この場合は、「仕事で、最も充実した経験はなんですか、具体的に教えてください」と問いかけます。

具体的に語ることで、その時の感情が蘇り、「みんなで一緒に作業してやり遂げた時が、とても嬉しかった」など、充実感を感じる場面が見えてきます。次第に、自分はチームワークを主体とした仕事が心地いいことに気づき、そうした経験ができる経験を増やすことを考え始めます。

上司と部下の信頼関係がある職場では、傾聴やコーチングを活用した1on1により、部下の成長を支援することが可能となります。  

   

部下へのアドバイスの参考に

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まとめ                             

ここまで述べてきたように、1on1による部下の成長支援は、一朝一夕にはいかず、風土づくりや管理職の意識改革があって、はじめて実現できます。流行っているからと、いきなり1on1を導入する企業がありますが、これは時間とお金の浪費だけでなく、部下の気持ちを萎えさせます。

職場の状況を冷静に観察し、それぞれのステージにあった取り組みを実施されることをお勧めします。多くの企業において、社員同士の信頼関係が強固になり、社員が成長し、組織が発展することを願っています。

   

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ピープルエナジー代表 伊集院正

22年間、⾦融IT・リスクのコンサルティングに従事。ITリスクチームの拡大や金融セクター設立に貢献。この間、優秀な多くのコンサルタント育成に関与。2020年、国家資格キャリアコンサルタントを取得。2021年に⼈材コンサルティングを開始し、企業の従業員や働き手に対し、心理学の理論を活用したコーチングを提供中。
   
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